「週刊新潮」に、以下の書評を寄稿しました。
テリー伊藤 『オレとテレビと片腕少女』
角川書店 1620円
著者がテレビという天職にたどり着くまでの自伝的ノンフィクションだ。月光仮面と長嶋茂雄に憧れた少年は、いかにして「テリー伊藤」となったのか。その秘密は生まれ育った築地と出会った女性たちにあった。中でも片腕の天使、マリンちゃんに圧倒される。
山下裕二、井浦 新
『日本美術応援団~今度は日本美術全集だ!』
小学館 1728円
完結した『日本美術全集』全20巻を基礎資料として、日本美術3万年の歴史を一気に振り返る。豊富な図版と簡潔な文章。伊藤若冲も岡本太郎も、その位置づけと意味が分かってくる。新たな応援団員はNHK『日曜美術館』の司会を務める異能の俳優・井浦新だ。
森下 達
『怪獣から読む戦後ポピュラー・カルチャー
~特撮映画・SFジャンル形成史』
青弓社 3240円
『君の名は。』と並んで今年の映画界を席巻した『シン・ゴジラ』。62年前の『ゴジラ』公開から現在まで、「特撮映画」とその解釈はいかに変遷してきたのか。気鋭の研究者である著者は、SFという文化と交差させながら、「非政治性」をキーワードに解読していく。
古書山たかし 『怪書探訪』
東洋経済新報社 1944円
古書、それも奇書・珍書・怪書をめぐるエッセイ集である。トーマス・マンの署名本との奇縁。日本SF史上最大の怪作、栗田信『醗酵人間』への偏愛。ツチノコ本や雪男本の奥深さ。上質なユーモアは、著者を上場企業の役員にしておくのがモッタイナイと思わせる。
(週刊新潮 2016年12月15日号)