碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

9月4日の合掌

2020年09月04日 | 日々雑感

多摩川 2020夏

 

 

2020年9月4日。

 

今日は、

松本深志高校と

テレビマンユニオン、

両方における大先輩、

萩元晴彦さんの命日です。

 

亡くなったのは

2001年。

71歳でした。

 

萩元さん、

テレビマンユニオンは

今年の2月に

見事

創立50周年を

迎えました。

 

残念ながら、

お祝いの催しは

新型コロナの影響で

延期のままです。

 

久しぶりで

先輩や同期や後輩に

会えるのを

楽しみにしていたのですが。

 

6月には

創立メンバーの一人である

大原れいこさんが、

萩元さんのいる世界へと

旅立ってしまいました。

 

村木さんも

吉川さんも

森さんも

鶴野さんも

すでに

そちら側にいて・・・

 

いえ、

今野勉さんは

相変らず

すごく元気です(笑)。

 

萩元さん、

気がつけば

自分自身が

萩元さんの享年に

近づいていることに

びっくりです。

 

萩元さん、

下界の話ですが

今年の9月4日は

まだまだ暑いですよ。

 

合掌。

 

 


中日新聞・東京新聞で語った「テレビドラマの現在地」

2020年09月04日 | メディアでのコメント・論評

 

 

テレビドラマの現在地

家族そろって茶の間のテレビでドラマを楽しむ。そんな時代があった。高い視聴率を記録した人気ドラマもあった。しかし、最近のドラマはつまらないという声もある。面白いドラマとは?

 

自由な発想で実験を 

メディア文化評論家・碓井広義さん

面白いドラマは、見ている人の気持ちを動かします。一つのせりふ、一つの動きにでも人間の真実があれば、人の気持ちは揺さぶられます。

人間のいいところも悪いところも丸ごと描く。それがドラマです。だから、作り手には自分たちが作り出す人物や物語に対する「熱狂」が必要になります。誰か一人だけでもいい。作り手の熱狂は、画面を通して必ず伝わります。

話題のドラマ「半沢直樹」の場合、まず池井戸潤さんの原作がそうです。若い頃に勤めた銀行に対する愛着、その裏返しとしての、ある種の怒り。それが底流にあるような気がします。めりはりの利いた演出には、ディレクターの福沢克雄さんの強い思い入れが表れています。顔のアップで攻め、引いた画面で緩める。緩急自在です。

そして、堺雅人さんをはじめとする出演者。普通、役者は役に入り込みます。ところが、このドラマでは、役が役者に憑依(ひょうい)し、入り込んでいるように見えます。熱狂が重なり、響き合ってエネルギーが生まれます。

映画が「非日常」の体験であるのに対し、テレビは「日常」のメディアです。テレビドラマは、われわれと地続きの世界です。人は自分の人生しか生きられません。しかし、ドラマを見ることで、こんな生き方もあるのかと発見する、もしくは忘れていたものを再発見することもあります。

若者のテレビ離れが指摘されますが、彼らが会員制交流サイト(SNS)で話題にしていることの多くはテレビだったり、中でもドラマだったりします。彼らの意識にネットとテレビの区別はありません。いいドラマを作れば受け止めてくれます。

コロナ禍でドラマの制作現場は苦労しています。普段と同じことができない。ならば、それをポジティブに捉えたらどうでしょうか。定型やスタイルを崩し、普段ならできないことを試してみる。リモート制作ドラマで、離婚した元夫婦が電話で話すだけの作品がありました。二人芝居の舞台を見ているようで面白い作品でした。

ドラマは箱ではなく、風呂敷です。何でも包み込める。少しでこぼこして見てくれが悪かろうと、それもドラマです。コロナをてこにして、自由な発想でドラマの可能性を広げてほしい。そう思っています。【聞き手・越智俊至】

(中日新聞・東京新聞 2020.08.31)