麒麟がきた!
3カ月のブランクも絶妙に活用、
期待高まる「本能寺の変」
“麒麟(きりん)がきた!”とでもいうところだろうか。
新型コロナウイルスの感染拡大による影響で4月1日に収録をやめ、放送も6月7日で休止していたNHK大河ドラマ「麒麟がくる」第22回「京よりの使者」の放送が8月30日に再開され、14.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)の視聴率を記録した。
「冒頭に、『桶狭間から4年』と持ってきたところ、うまい! と感じました」
メディア文化評論家の碓井広義さんは語る。
「我々視聴者が待ち続けていた3カ月の間に、ドラマの中でも時間が、しかも4年もの時間が過ぎていたわけですね。もしかしたら当初の予定ではこの期間のエピソードをもう少し描くつもりだったかもしれませんが、この演出で、うまく3カ月の空白を埋め、視聴者は明智光秀と一緒に時間軸をジャンプした感覚がありました」
再開されたドラマは桶狭間の戦いから4年後。今川義元が討たれ、実権を握った三好長慶。その傀儡(かいらい)となり、別人のようになってしまった将軍・足利義輝のもとに光秀が呼ばれ、義輝のために信長上洛の約束をした。
ドラマ評論家の田幸和歌子さんは、初登場した本郷奏多演じる近衛前久を、「政治に積極的に関与する異端の関白、待ちに待った登場です」と、今後のドラマ展開のキーマンの1人として期待する。
「高貴な雰囲気を見せたかと思えば、尾野真千子さん演じる架空の人物・伊呂波太夫といる時には少年のような表情を見せるなど、相手によって全然違う立体的な人物像が今後、光秀や信長と、どう絡んでくるのか気になりますね」
田幸さんは、義輝はじめ、足利家の将軍たちも注目ポイントだとする。
「あれだけ颯爽(さっそう)としていたのに、すっかり元気を失ってしまった向井理さん演じる義輝が、最終的にどんな散り際を見せてくれるか。病のため一度も上洛することなく病死した14代の義栄を演じる一ノ瀬颯さんは、春まで戦隊ヒーローのレッドをつとめていて、そのフレッシュさも気になります。滝藤賢一さん演じる室町幕府最後の将軍・足利義昭も、現在演じている僧の演技からどう変化していくか、その対比も見どころ。スポットが当たる機会が少なかった末期の足利将軍たちを、豪華な顔ぶれで見せてくれるのは、これまでにない部分を掘り下げたいというねらいもあるのではないでしょうか」
前出の碓井さんも滝藤さんの義昭に着目。
「あのお坊さんが、この先の光秀・信長の2人との関わり合いを、どう見せてくれるのか楽しみです」。
さらに今後の出演となる、大河初出演の坂東玉三郎演じる正親町天皇にも期待する。「正親町天皇という、あまり知られていない人物に玉三郎さんをキャスティングしたことで、これは重要な描き方をすると予想できますよね。どんな役になるのか楽しみです」
放送再開により、最後の「本能寺の変」まで目が離せなそうだ。
「歴史の上では、ここからあと18年。いよいよ光秀は表舞台に顔を出し始めます。この先数カ月の間に展開される波乱の物語は、信長との関係を軸に、これまでよりもますます濃厚な密度になるのではないでしょうか」(碓井さん)
長谷川博己と染谷将太が、どんな本能寺の変を見せてくれるだろうか。
【本誌・太田サトル】)
(週刊朝日オンライン 2020.09.07)