碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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Eテレ「植物に学ぶ生存戦略」は、テレビならではの知的遊戯

2021年04月01日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

山田孝之のNHK・Eテレが攻める

「植物に学ぶ生存戦略」は知的遊戯



NHK・Eテレには「いつ放送されるか分からないシリーズもの」という不思議な番組が存在する。

この不定期レギュラーにおいて、「香川照之の昆虫すごいぜ!」と並ぶ傑作と呼べるのが「植物に学ぶ生存戦略」だ。俳優の山田孝之が、植物の生態を「擬人化」して語るマニアックな内容は、一度見たら病みつきになる。聞き手は林田理沙アナウンサー。

先週25日、昨年の夏以来となる待望の第5弾が放送された。3つの植物が登場したが、ツバキと西麻布が同じ「生存戦略」だという説明に笑った。キーワードは「一見さんお断り」だ。

ツバキは冬にだけ花を咲かせ、しかも虫ではなく鳥だけに花粉を提供する。それが最寄り駅もなく、客をセレブに限定した西麻布と共通しているというのだ。「(女性の)お持ち帰りはタクシーです」と真顔で話す山田。真面目な顔で聞く林田。微妙な間がおかしい。

さらに西麻布では、客に「特別感」を与えるために、店の扉を暗証番号で開けさせたりする。それは横向きに花を咲かせ、長いクチバシを持つ鳥だけを受け入れるツバキに通じるそうだ。山田が「私は西麻布の王です」と林田を誘う。それを聞き流して、「ありがとうございました」と締めくくる林田がいい。

民放の深夜枠でも真似できない、テレビならではの知的遊戯。“攻めのEテレ”に拍手だ。

(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2021.03.31)