碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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本邦初の超高齢妊娠出産ドラマ「70才、初めて産みますセブンティウイザン。」

2021年04月15日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

本邦初の「超高齢妊娠出産ドラマ」

NHKドラマ10

「70才、初めて産みます

  セブンティウイザン。」

 

妻から「私、妊娠しました」と告げられた時、夫はどう答えるべきか。正解はもちろん、即座に「おめでとう!」だ。

しかし夫が65歳で妻が70歳だったら、どうだろう。「70才、初めて産みますセブンティウイザン。」(NHK)である。

定年退職したばかりの 江月朝一(小日向文世)も戸惑った。妻の夕子(竹下景子)と結婚して40年。まさかの「おめでた」だが、夕子に産むことへの迷いはない。朝一も胎児のエコー画像を見て父親になろうと決意する。

とはいえ周囲の反応はほとんど否定的。夕子はパート仲間に「生まれてくる子に無責任」となじられ、兄(竜雷太)から は縁を切ると脅される。

これは本邦初の「超高齢妊娠出産ドラマ」だ。すべてが初体験の熟年夫婦には、喜びだけでなく不安もある。ママパパ教室で赤ちゃん人形の手に触れて、「この小さな手を私は守れるのか?」と自問する朝一。

だが、暗くなったりはしない。いつまで子供を育てられるかなど心配は尽きないが、「子供には子供の未来がある」と腹をくくる。

飄々とした生き方の奥に強さを秘めた朝一に、小日向がピッタリだ。また命懸けの出産に挑む超高齢妊婦をたんたんと、ごく自然に演じている竹下もいい。シーンによっては、2人の舞台劇を見るような充実感がある。

今週金曜が全3話のラスト。「奇跡の赤ちゃん」にも会えそうだ。

(日刊ゲンダイ「TV見るべきものは!!」2021.04.14)