碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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テレ朝「殴り愛、炎」 脚本・鈴木おさむの3原則が炸裂!

2021年04月09日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

テレ朝「殴り愛、炎」

脚本・鈴木おさむの3原則が炸裂!

 

2日に前編が放送された「殴り愛、炎」(テレビ朝日系)。結婚を控えた1組のカップルがいる。病院長の息子で、心臓外科医の明田光男(山崎育三郎)。肉体労働者を父に持つ、看護師の豊田秀実(瀧本美織)だ。

2人が働く病院に、秀実が高校時代に憧れた先輩で、現在は陶芸家の緒川信彦(市原隼人)が担ぎ込まれた。この偶然の再会から、殴り殴られる「愛の闘争」が始まる。3人を揺さぶる仕掛け人は、光男との結婚を夢見ていた社長令嬢、徳重家子(酒井若菜)だ。

このドラマ、いわば「絵にかいたような」ドロドロ愛憎劇の設定と展開を楽しむ一本と言える。格差恋愛、邪魔する者の存在、誤解の連続、疑心暗鬼、憎しみの醸成、そして暴発!

ドラマ「奪い愛、冬」などを手掛けてきた脚本の鈴木おさむは、今回も「照れない・ブレない・ためらわない」を3原則に、光男を狂気へと追い込んでいく。出張と偽り、秀実と信彦が会っている工房に乗り込んで、「(僕は)ここにいるよ~!」と目を見開いて笑う光男。

人の命を救うための手であり、一度も人を殴ったことがないと叫びながら、信彦に鉄拳を振るう姿が尋常ではない。後編では光男が抱える「心の闇」も解明されるはずだ。

笑ったのは、映画「ゴースト」ばりの、ろくろラブシーン。まさに泥(ドロ)キュンである。

(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2021.04.07)