碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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堅物エリート裁判官・黒木華が光る「イチケイのカラス」

2021年04月29日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

「イチケイのカラス」は

堅物エリート裁判官・黒木華の存在が光る



月9「イチケイのカラス」(フジテレビ系)は刑事裁判官を主人公とする、初の民放連ドラだ。

第1の魅力は型破りな裁判官、入間みちお(竹野内豊)にある。ヒゲを生やし、黒い法衣のままで外を歩き、法廷の法壇から降りて被告や証人に語りかける。組織のルールからは逸脱だ。

しかも公判中に気になること、納得できないことがあると、迷わず「職権を発動します!」と宣言。自ら現場検証を行うのだ。確かに、こんな裁判官、見たことがない。

しかし、その型破りのおかげで裁判官が最も警戒すべき、冤罪を避けることができる。我が子を虐待して「乳幼児揺さぶられ症候群」を発症させたと疑われた母親(前田敦子)の名誉を回復したり、愛する者を守るために殺人の罪をかぶろうとしていた男(岡田義徳)を救ったりしていくのだ。

真実が明らかになるラストまでの過程がよく練られており、事件の当事者だけでなく、裁判官たちの人間模様も丁寧に描かれている。

中でも入間の暴走にやきもきする、堅物エリート裁判官の坂間千鶴(黒木華)の存在が光る。本来は否定すべきだが、つい「入間劇場」に巻き込まれてしまう、千鶴の心境の変化も見どころのひとつだ。

飄々としていながら強い信念を持つ入間を演じる竹野内。同じ月9の「ビーチボーイズ」から約25年が過ぎ、何ともいい味の中年俳優になった。

(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2021.04.28)