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いま注目の1冊!
「人生到るところ浮気あり」「女は死ぬ覚悟で恋をしたのよ」「私の勝負服は地味である」……
こんな言葉を目にしただけでも、続きを読みたくなりませんか。
「阿修羅のごとく」「あ・うん」「寺内貫太郎一家」など数々の傑作ドラマの脚本家であり名エッセイスト、直木賞受賞作家でもあった向田邦子さん。
取材先の台湾で飛行機の墜落事故に巻き込まれて今年で40年が経ちます。
40年といえば高校生が定年間近に、子が親になってもおかしくない歳月。
それでも新聞、雑誌、テレビが取り上げ、特別展には若い人が多く訪れました。
向田さんの全活字作品から名言、名ゼリフを精選して収録した本書も発売5ヶ月で6刷に達し、目立つのは読者に20代、30代の女性が多いこと。
思えば向田さんはキャリアウーマンの先駆けであり、同時にファッションセンス抜群、旅行と猫と食を愛してやまぬ方でした。
時を経た今だからこそ、「言葉の達人」であると同時に「生き方の達人」でもあった向田さんの作品に触れたくなるのかもしれません。
(新潮社『波』2021年10月号「いま話題の本」より)