碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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片桐はいり主演 「東京放置食堂」 一度味わうとクセになる

2021年09月29日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

テレ東系水ドラ25

「東京放置食堂」

一度味わうとクセになる面白さ!



そうか、その手があったか。緊急事態宣言で「都道府県をまたぐ移動」はままならない。でも、「大島」は東京都だ。堂々の都内ロケじゃん!

制作陣がそう考えたのかどうかはともかく、水ドラ25「東京放置食堂」(テレビ東京系)の舞台は伊豆大島だ。都心から120キロの距離。高速ジェット船に乗れば最短1時間45分で着く。

島にある居酒屋「風待屋」の店主は、祖父から引き継いだ小宮山渚(工藤綾乃、好演)。旅人としてやって来た真野日出子(片桐はいり)が手伝っている。彼女は元裁判官らしいが、事情が判明するのはこれからだろう。

とはいえ、劇的な物語が展開されるわけではない。島の外から来た、それぞれに悩みを抱えた客。日出子は彼らの話を聞き、名物の「くさや」を焼いて食べさせ、アドバイスの言葉を添えるだけだ。

先週、店のカウンターに座ったのは、アイドルの小松原美織(桜井玲香)だった。酒もたばこも好きでヤンキー気質な素の自分。常に笑顔で夢と希望を振りまくアイドルの自分。そのギャップが苦しくて、サイン会から逃げ出したというのだ。

「期待に応え過ぎないほうがいいよ。あんたは、あんたでしかないんだから」と日出子。美織は仕事に戻ることを決意する。

そこに立っているだけで見る側の気持ちをザワつかせる片桐は、これが連続ドラマ初主演。くさやと同様、一度味わうとクセになる深夜ドラマだ。

(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2021.09.29)