碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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【気まぐれ写真館】 「似てる」って言われた(笑)

2022年01月21日 | 気まぐれ写真館

 


新・直木賞作家、米澤穂信さん原作のミステリードラマ『満願』が、すごい!

2022年01月21日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

 

 

新・直木賞作家、

米澤穂信さん原作の

ミステリードラマ『満願』が、すごい!

 
 
19日に発表された、第166回の「芥川賞」と「直木賞」。
 
作家の米澤穂信(よねざわ ほのぶ)さんが、長編小説『黒牢城(こくろうじょう)』で直木賞を受賞しました。
 
おめでとうございます!
 
米澤作品の映像化
 
米澤さん原作の「映像作品」で、多くの人が思い浮かべるのが、2001年のデビュー作『氷菓(ひょうか)』ではないでしょうか。
 
高校の「古典部」という、部活の設定がユニークでした。
 
この「<古典部>シリーズ」が、『氷菓』としてTVアニメ化されたのが2012年です。制作は、京都アニメーション!
 
17年には、山崎賢人さんや広瀬アリスさんの出演で、映画化もされました。
 
また、ドラマは2本あって、というか、これまで2本しか、ドラマ化されていません。どちらもNHKです。
 
11年に、『探偵Xからの挑戦状!』の中の1本としてドラマ化されたのが、米澤さんの「怪盗Xからの挑戦状」でした。キャストは竹中直人さんや長澤まさみさん。
 
そしてもう1本、秀逸なドラマだったのが、『満願(まんがん)』です。
 
14年刊行の短編小説集『満願』は、この年の「このミステリーがすごい!」(宝島社)、「週刊文春ミステリーベスト10」(文藝春秋)、そして「ミステリが読みたい!」(早川書房)で、いずれも国内部門の第1位。
 
つまり「ミステリーランキング3冠」に輝いた、史上初の作品でした。
 
ちなみに、直木賞を受けた『黒牢城』も、堂々の「3冠」です。
 
ミステリースペシャル『満願』
 
ミステリースペシャル『満願』が放送されたのは、2018年8月14日からの3夜連続。
 
本に収められた6編の中から、3編を選んでドラマ化しています。
 
第1夜「万灯」の主人公は、商社マンの伊丹(西島秀俊)。
 
単身赴任先は東南アジアの某国で、天然ガス開発が使命だったのですが、頓挫していました。打開策は、村を牛耳る人物の殺害です。
 
伊丹はライバル企業の社員と共に犯行に及ぶのですが、その後、思わぬ事態が待っていました。
 
仕事のためなら何でもする男を、あくまでも淡々と演じた西島さん。観る側が感じる怖さが倍化しました。
 
また、交番勤務の警官・柳岡(安田顕)が、部下である川藤(馬場徹)の“名誉の殉職”に疑問を抱くのが、第2夜の「夜警」です。
 
刃傷沙汰の夫婦ゲンカを止めようとした柳岡たちですが、突然、川藤が夫に向かって発砲します。
 
川藤は倒れる寸前の夫に首を切りつけられ、絶命しました。
 
柳岡は、葬儀で会った川藤の兄から「あいつは警官になるような男ではなかった」という話を聞き、川藤が死ぬ直前「うまくいったのに」という言葉を残したことを思い出します。
 
安田さんが見せた「鬱屈を抱えた警官」はまさに絶品で、3作中で最も強い印象を残しました。
 
そして最終夜の「満願」は、弁護士の藤井(高良健吾)が手がける殺人事件を軸に、過去と現在が交差する物語でした。
 
藤井が学生時代に下宿していた畳屋のおかみさんが、被告の妙子(市川実日子)です。
 
夫がつくった借金の取り立てにやって来た、金貸しの男を刺殺したのです。
 
一本気な藤井と、奥底の見えない妙子。2人の絶妙な距離感がドラマに陰影を与えていました。
 
3本の連打で、「人間」というものの怖さと面白さが、じわじわと浸透してくるミステリードラマでした。
 
受賞記念の再放送を!
 
制作は、NHKと日テレアックスオン。
 
萩生田宏治(第1夜)、榊英雄(第2夜)、熊切和嘉(最終夜)といった演出陣がそれぞれに力量を発揮し、オムニバス映画3本分の見応えがありました。
 
このドラマ、現在もNHKオンデマンドで視聴可能です。
 
とはいえ、いいものはたくさんの人に観てもらいたいので、NHKには、直木賞受賞記念として再放送することを提案したいと思います。