碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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進化した“小さな大女優”毎田暖乃が「妻、小学生になる。」の特異な設定を成立させている

2022年01月27日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

進化した“小さな大女優”毎田暖乃が

「妻、小学生になる。」の

特異な設定を成立させている

 

これは、「設定」を楽しむドラマだ。堤真一主演「妻、小学生になる。」(TBS系)である。

10年前、新島圭介(堤)は、妻の貴恵(石田ゆり子)を事故で失った。それからは娘の麻衣(蒔田彩珠)と2人暮らしだ。ある日、見知らぬ小学生、白石万理華(毎田暖乃)が現れる。しかも、自分は「新島貴恵」だと主張するのだ。

ただし、昨年の日曜劇場「天国と地獄」とは異なる。誰かと「魂」が入れ替わったわけではない。小学生が語る推測によれば、事故で死んだ自分は他の夫婦に宿った命となった。彼らの娘として人生をやり直していたが、つい最近、前世の記憶が戻ったというのだ。

何だか、すごいなあ。三島由紀夫が「豊饒の海」で挑んだ、「輪廻転生(りんねてんしょう)」の物語ではないか。その上、本人に「転生」の自覚があることにも驚く。

この特異な設定を成立させているのが、“小さな大女優”毎田だ。朝ドラ「おちょやん」で披露した達者な演技が、さらに進化している。初回の終盤では毎田の中に石田が入っているかのようだった。って、イタコか!

原作は村田椰融(むらた やゆう)の漫画だが、脚本の大島里美が巧みなアレンジを施している。朝ドラ「おかえりモネ」でヒロインの妹役だった蒔田に、「おかえりママ」のセリフを言わせる遊び心もいい。妻であり母である小学生が、どう家族を再生していくのか、注目だ。

(日刊ゲンダイ 2022.01.26)