碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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ドラマ 「さよならの向こう側」 貴重な24時間をどう使うか

2022年10月07日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

4週連続ドラマ

「さよならの向こう側」

貴重な24時間をどう使うか

 

木曜深夜に放送中の4週連続ドラマ「さよならの向う側」(読売テレビ制作・日本テレビ系)は、現世とあの世の境界が舞台だ。

そこには「案内人」なる男(上川隆也)がいて、死者に「24時間だけ。会いたい人に、会うことが可能」だと教える。ただし、「死亡したことを知らない人に限る」という条件付きだ。

第1話の主人公は不慮の交通事故で亡くなった、中学教師の彩子(貫地谷しほり)。一番会いたいのは、残してきた息子・優太だ。寝顔を見るだけなら大丈夫だろうと深夜の自宅に忍び込む。

突然、優太が目を覚ましたので驚くが、幼くて「死」を理解できていないため、ルールに抵触しなかった。

「お母さんは僕のヒーローだ」と言う優太に、「姿が見えなくなっても、いつも思っているから」と伝える彩子。短過ぎたとはいえ、幸せな人生だったと実感することが出来た。

理不尽な死が納得できない状態から始まり、貴重な24時間をどう使うかに悩み、息子との再会を喜ぶ彩子の感情の流れを、貫地谷が丁寧に演じて見事だ。

また、俳優志望で挫折した中年男(眞島秀和)と、認知症の父親(柄本明)の和解を描いた第2話も見応えがあった。

原作は清水晴木の連作小説だ。1話が30分で完結するこのドラマには、脚本の水橋文美江(朝ドラ「スカーレット」など)らが巧みなアレンジを施している。

(日刊ゲンダイ「テレビ 見るべきものは!!」2022.10.05)


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2022年10月07日 | 気まぐれ写真館