碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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異なる脚本家と演出家による競作「ユーミンストーリーズ」

2024年03月13日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

夜ドラ「ユーミンストーリーズ」NHK

異なる脚本家と演出家による

競作としても楽しめる

 

興味を引く企画だ。ユーミンこと松任谷由実の楽曲に触発されて書かれた短編小説をベースに、3本のオムニバスドラマが作られた。夜ドラ「ユーミンストーリーズ」(NHK)である。

先週放送された1本目は、綿矢りさが原作小説を書いた「青春のリグレット」だ。

結婚して4年の菓子(かこ、夏帆)は夫・浩介(中島歩)の浮気を知り、2人の関係を修復しようと旅行に誘う。行き先は八ヶ岳のコテージ。だが、そこで浩介から離婚を切り出され……。

菓子が八ヶ岳に来たのは2度目だ。以前つき合っていた陸(金子大地)と一緒だった。陸を物足りない相手と思っていた菓子は、旅行の後で別れてしまう。

これからどうするのかと陸に訊かれ、「次につき合う人と結婚するかな?」と菓子。陸はたったひと言、「無理だよ」と突き放す。

岨手(そで)由貴子の脚本は原作を大胆にアレンジしている。過去と現在、2つの旅が交差する構成が見事だ。

かつて誰かを傷つけ、惨めな思いをさせてきた自分。そして今、深く傷つき、惨めな思いをしている自分。

しかし、そこにあるのは「リグレット(後悔)」だけではない。人生の岐路に立つ30代女性を、夏帆が繊細に演じていく。

今週放送されているのは柚木麻子原作の「冬の終り」。来週は川上弘美の「春よ、来い」だ。異なる脚本家と演出家による競作としても楽しめる。

(日刊ゲンダイ「TV見るべきものは!!」2024.03.12)