碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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ドラマ「舟を編む」原作をより深めた脚本、後半も期待

2024年03月20日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

「舟を編む~私、辞書つくります~」

NHKBS

原作をより深めた脚本、後半も期待だ

 

ドラマ「舟を編む~私、辞書つくります~」(NHKBS)の主人公は、出版社に勤務する岸辺みどり(池田エライザ)だ。

ファッション雑誌の編集者だった彼女は、突然、辞書編集部への異動を命じられる。そこでは作業開始から13年という辞書「大渡海」の編纂が行われていた。

当初は戸惑っていたが、変わり者の主任・馬締光也(まじめみつや、野田洋次郎)に影響され、辞書作りにハマっていく。

原作は2012年に本屋大賞を受賞した、三浦しをん「舟を編む」だ。この小説では、営業部から引き抜かれてきた馬締の歩みが軸となっていた。また2013年に松田龍平主演で映画化された際も、ほぼ原作通りだった。

一方、このドラマでは原作の後半に登場する、みどりをヒロインに据えた。彼女は馬締のような言葉の天才ではない。ごく普通の女性だ。

いや、だからこそ見る側は、彼女を通じて言葉の面白さや奥深さ、辞書を編む作業やその意味を身近に感じることができる。

たとえば、「恋愛」の「語釈(語句の意味の説明)」を任されたみどりは、既存の辞書が「男女」や「異性」に限定していること気づく。感情論ではない根拠と、異性を外しても成立する語釈を探っていくのだ。

原作をより深めた、蛭田直美の脚本。それぞれの個性を生かした、池田や野田の演技。全10話の半ばまで来たが、後半も大いに期待できそうだ。

(日刊ゲンダイ「TV見るべきものは!!」2024.03.19)