碓井広義ブログ

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放送開始70年のテレビ

2023年01月16日 | 「しんぶん赤旗」連載中のテレビ評

 

 

放送開始70年のテレビ

 

1953年(昭和28年)2月1日にNHK東京テレビジョンが、8月28日に日本テレビ放送網が放送を開始した。今年は「テレビ放送開始70年」という記念の年にあたる。

当時、VTRという映像記録装置はまだなかったため、ドラマも含むほとんどの番組が生放送だった。

とはいえ現在のように深夜も含めてほぼ一日中放送があったわけではない。当初は昼頃と夕方から夜9時までという短時間の放送だった。

この年、NHKの受信契約数は866件。当時日本に存在した受像機の台数とほぼ同数といわれている。ほとんどがアメリカからの輸入品で価格は約25万円。大卒の初任給が1万5千円前後の時代であり、現在に換算すれば300万円を超す高額商品だった。

放送開始時点で最も注目すべきは、最初からNHKが視聴者から受信料を受け取る「有料放送」で、日本テレビがスポンサーのCMを入れての「広告放送=無料放送」だったことだ。

つまり現在に至るまで、基本的な「ビジネスモデル」は変わっていないのだ。特に民放の場合、テレビは新たな「広告媒体」に他ならなかったことは再認識すべきだろう。

70年が過ぎて、テレビの状況は激変した。今や完全にインフラ化したインターネットの影響が大きい。かつてのテレビ放送のシステムは、コンテンツ=番組、受信装置=テレビ、そして流通経路=電波だった。

だが現在は、コンテンツ=番組、受信装置=テレビ・携帯電話・パソコン、流通経路=電波・ケーブルテレビ・インターネットという具合だ。

受信装置の多様化によって、テレビの広告媒体としての価値を支えてきた「視聴率」も、以前と同じ尺度ではなくなった。

しかし受信装置や流通経路がどれだけ変わっても、番組の重要性に変わりはない。

たとえば昨年放送されたドラマ「エルピス―希望、あるいは災い―」(カンテレ制作・フジテレビ系)は、ドラマ自体の既成概念を超える意欲作だった。そこには1人の制作者の強い思いがあった。たとえ使用する装置や経路が異なっていようと、見る側は敏感に反応したのだ。

どんな番組を作るのか。70年を経たテレビの生命線は今もそこにある。

(しんぶん赤旗「波動」2023.01.12)

 

 


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