碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

漫画や小説の「原作」を超えて、「ドラマならではのリアル」なヒロインを生んだ佳作

2023年07月11日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

 

漫画や小説の「原作」を超えて、

「ドラマならではのリアル」

ヒロイン生んだ佳作

 

間もなく、夏ドラマがスタートラッシュを迎えることになります。

あらためて春クールを振り返ってみると、漫画や小説を原作とした「女性ドラマ」が目立ちました。

波瑠主演『わたしのお嫁くん』(フジテレビ系)、奈緒主演『あなたがしてくれなくても』(同)などです。

その中に、原作を超える魅力を持つヒロインたちがいました。

芳根京子『それってパクリじゃないですか?』

1本目は芳根京子主演『それってパクリじゃないですか?』(日本テレビ系)。

芳根さんには、なぜか「お仕事ドラマ」がよく似合います。

出世作のNHK朝ドラ『べっぴんさん』も、実在のアパレルメーカー創業者をモデルにした、一種のお仕事ものでした。

その後、『チャンネルはそのまま!』(テレビ朝日系、北海道テレビ放送制作)ではテレビ局の報道記者。

『半径5メートル』(NHK)では雑誌編集者を演じていました。

本作の舞台は飲料メーカーで、主人公の藤崎亜季(芳根)は新設の知的財産(知財)部の所属です。

たとえば「商標権の侵害」が発生します。

パクリとパロディーの違いは? 

オマージュやインスパイアは許される? 

親会社から出向してきた、弁理士の北脇雅美(重岡大毅)は知財のプロです。素人同然の亜季は彼を通じて学び、成長していきます。

それは仕事だけでなく、一人の女性として、人間としての成長でもありました。

また見る側も、知財が開発に関わった人たちの汗と涙の結晶であり、「商標」は努力の証明であることが分かっていきます。

小芝風花『波よ聞いてくれ』

2本目は、小芝風花主演『波よ聞いてくれ』(テレビ朝日系)です。

舞台は千葉県の架空の街。

スープカレー屋で働いていた鼓田ミナレ(小芝)は地元ラジオ局の麻藤兼嗣(北村一輝)にスカウトされ、ラジオパーソナリティーとなります。

このドラマ、何よりミナレのキャラクターが際立っていました。

気合で生きているような金髪のヤンキー系。がさつで無神経なところはありますが、裏表がなくサッパリした性格です。

仕事も私生活も失敗続きなのに全くめげないのがいい。

ミナレは高速回転の口調ですが、話す内容は面白い上に聞き取りやすい。

毎回、リスナーや周囲の人たちを救っていきますが、彼女が状況を動かすというより、状況自体をぶっ壊していくタイプです。

そんなヒロインを、小芝さんが全力で体現していました。

最終回では、放送エリアで地震が発生し、大停電となります。

麻藤は、ミナレの深夜番組『波よ聞いてくれ』を朝まで続けさせます。

「おまえがいつものように、一人じゃない、大丈夫だって声を届けることに意味があるんだ」と激励する麻藤。

極めてパーソナルなメディアであるラジオの力が、ミナレを通じて発揮されていきました。

肩の力を抜いて役柄に溶け込む芳根さん。

過剰なほどの熱量で役を引き寄せる小芝さん。

それぞれの手法を駆使して、「ドラマならではのリアル」な女性像を生み出していた2人に拍手です。

 


この記事についてブログを書く
« 『らんまん』妻・寿恵子(浜... | トップ | 【気まぐれ写真館】 本日、40... »
最新の画像もっと見る

「ヤフー!ニュース」連載中のコラム」カテゴリの最新記事