碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

2013年 こんな本を読んできた (4月編)

2013年12月30日 | 書評した本 2010年~14年
ハワイ島 2013


「週刊新潮」に書いてきた書評で、2013年に読んだ本を振り返っています。

その4月編。


2013年 こんな本を読んできた (4月編)

伊坂幸太郎 『ガソリン生活』 
朝日新聞出版 1680円

本書はミステリーの佳作であり、クルマ小説の異色作である。何しろクルマ自体が語り手なのだから。

主人子はマツダのデミオ、色は鮮やかな緑だ。仙台に暮らす大学生・望月良夫と“灰色の脳細胞”を持つ小学生の弟・享が乗ったデミオに、有名女優の翠が勝手に乗り込んできたことから事件は始まる。翠は不倫疑惑でマスコミに追われていたのだ。しかも良夫たちと別れてから数時間後、彼女は不倫相手と共に事故死してしまう。やがて兄弟の前に、この事故を目撃したという芸能記者が現れて・・。

クルマ同士が人間には聞こえない言葉で話をしているという設定が秀逸だ。さらに言語体系が違うのか、ハイブリッドのプリウスも電気自動車のリーフも登場しない。愛すべきアナログであるガソリン車たちのウイットに富んだ会話と、意外な物語展開が楽しめる。

(2013.03.30発行)


増谷和子 『カコちゃんが語る植田正治の写真と生活』 
平凡社 1890円

著者は今年生誕百年を迎える前衛写真家・植田正治の長女。植田の代表作に数えられる「カコ」「パパとママとコドモたち」などで被写体となった。本書は自身の少女時代と植田の晩年を軸にした回想記である。

何より著者が体験した撮影現場が興味深い。独特の構図は事前に用意されたものではなく、「カメラを構えると、自然に構図ができちゃう」ものだった。ふだんは冗談ばかり言っている植田が撮影となると真剣で容赦がなくなる。それでいて撮り終わると子どもたちと楽しそうに遊ぶのだ。

またメンズビギの依頼で撮った「砂丘モード」が、妻を亡くして気力を失っていた植田の復活劇だったことも明かされる。実はそこにも“写真する”父を支える家族の姿があった。本書にはこうした一連の代表作だけでなく、貴重な未発表写真も多数掲載されている。

(2013.03.01発行)


福井雄三 
『世界最強の日本陸軍~スターリンを震え上がらせた軍隊』
 
PHP研究所 1575円

本書の目指すところは流布された「陸軍悪玉・海軍善玉」論を覆すこと。日本陸軍の名誉回復である。著者は新たな視点でノモンハンの激闘やシンガポール陥落の意義を探り、返す刀で海軍上層部の戦略と作戦指導を批判する。この国の現在にも繋がる果敢な論考だ。

(2013.03.08発行)


川上未映子 『安心毛布』 
中央公論新社 1365円

『発光地帯』『魔法飛行』に続く非日常的な日常エッセイの第3弾。食にまつわるあれこれをはじめ、鋭い五感でキャッチした「ふと気になるもの」を豊かな表現で伝えている。「ふつうに人生を生きてゆくことがすべての人にとっては相も変わらぬ椿事」に納得。

(2013.03.10発行)


高橋源一郎 『国民のコトバ』 
毎日新聞社 1680円

若者の活字離れがうんぬんされるが、彼らがネット上で送受信しているほとんどは活字だ。しかし日本語の「とびきり面白く楽しい、不思議な魅力」は知らないかもしれない。「萌えな」ことば、「官能小説な」ことばなど、本書には活字中毒者の愉悦の声が響く。

(2013.03.05発行)


みうらじゅん 『セックス・ドリンク・ロックンロール!』 
光文社 1575円

2浪してムサビ(武蔵野美術大学)に入った著者の半自伝的小説だ。主人公の純は京都出身。横尾忠則のような芸術家になりたくて上京してきた。

入学と同時に“ロックな生活”が始まるはずが、入学式に遅刻。女子学生に声をかけられ、アパートまでついて行く。酒に弱いくせに、「ロックといえば酒とタバコ」と信じる純はビールで酩酊。その上、ノーブラにTシャツの彼女が言うのだ。「男と女がいたらセックスしかないだろ」。

また、教室の誰もが「自分は普通の人とは違う」と思い込んでいる中で、断トツの変人が玉手だった。彼と2人で「猫部」なるサークルを創立。クイズ番組への出演からゴジラの着ぐるみ強奪作戦まで、学内外で珍騒動を巻き起こす。

著者の半身ともいえる玉手のキャラクターが秀逸な80年代青春グラフィティだ。

(2013.03.20発行)


今野 浩 『工学部ヒラノ教授と七人の天才』 
青土社 1575円

大学の「工学部」とその住人を内側から活写する、実録秘話の最新作である。我が国の工学部の総本山、日本のMITともいわれる東京工業大学に赴任してきたヒラノ教授。そこで見たのは天才という名の奇人、変人たちの生態だった。

登場する7人の天才はもちろん、周辺の人たちも含めて登場人物はほぼ実名だ。数学、ファイナンス、会計学、そして情報システムでもプロ級の知識を持つスーパー・エンジニア、白川浩博士。数学の超難問に挑み続けた後、なぜか良寛研究者になった冨田信夫博士。正義論研究の第一人者だった藤川吉美助手は、転出後数年で大学学長に就任する。

そして東工大の大スターだった江藤淳教授の、大学人としての常人離れした行動の数々が明かされているのも本書の特色だ。天才たちへの敬愛と哀惜に満ちた人間図鑑というべき一冊。

(2013.04.01発行)


片山 修 『「スマート革命」で成長する日本経済』 
PHP研究所 1785円

震災後、エネルギーの有効活用は焦眉の課題となった。そこで注目されているのがスマートグリッド。情報通信技術で電力の需要と供給のバランスをとる、次世代型エネルギーシステムだ。本書は、自動車から住宅まで豊富な事例を紹介する新産業ドキュメントである。

(2013.04.04発行)


中野 翠 『この世は落語』 
筑摩書房 1575円

いつも落語のCDを聴きながら眠りにつくという著者。本書は名作落語の世界を題材にしたエッセイ集だ。酒呑みの気持ちと「芝浜」、懐かしの居候と「湯屋番」、圓生の計算が冴える「死神」などが語られる。巻末には、朝日名人会プロデューサー京須偕充との対談も。

(2013.03.20発行)


大竹 聡 『ギャンブル酒放浪記』 
本の雑誌社 1680円

競馬、競輪、競艇、オートの開催場を訪ねて投票する。当たってもハズれても近くの酒場で飲むという、実に罰当たりな鉄火場紀行だ。著者は「酒とつまみ」初代編集長。多摩川にはじまり、船橋、松戸、前橋と、予想と結果を公開しながら「飲む打つ飲む」旅が続く。

(2013.03.20発行)


石田 千 『役たたず、』 
光文社新書 819円

著者はここ数年の小説「あめりかむら」と「きなりの雲」が連続して芥川賞候補となった注目の作家だ。日常の中の発見や驚きを、ユーモアを交えて綴った連載エッセイが一冊になった。原節子の『めし』、ヘプバーンの『いつも二人で』などを例に挙げ、「ほんとの恋は、マンネリ峠を越えてから」と名言を吐く。

また、ふられた若い人ともつ焼きを食べに行けば、「しっかりしなさんな」と励ます。独力で乗り切れる安泰はすでになく、他人に任せることのできない人は信頼されないからだ。これまた見事な卓見である。

(2013.03.20発行)


江上 剛 『慟哭の家』 
ポプラ社 1680円

千葉県北西部の団地で起きた殺人事件。57歳の押川透が妻と息子を刺殺し自分も死のうとしたが果たせず、警察に通報してきたのだ。しかし、それは単なる無理心中ではなかった。

国選弁護人を引き受けた長嶋駿斗は、拘置所で面会した押川から意外なことを言われる。「弁護士を必要としていません。すぐ死刑にして欲しいのです」

押川が殺した28歳の息子はダウン症だった。その世話は大変だったが、同じような子供のいる家庭は多い。では、なぜ押川は凶行に及んだのか。いとこで新聞記者である七海の協力を得ながら真相を探っていく駿斗。やがて裁判が始まった。

本書はもちろんフィクションだが、知的障害者を取り巻く環境や家族の問題は辛くなるほどリアルで切実感がある。愛情や博愛主義など精神論だけでは乗り越えられない現実に、鋭いメスを入れた問題作だ。

(2013.02.13発行)


浅野温子 
『わたしの古事記~「浅野温子 よみ語り」に秘めた想い』
 
PHPエディターズ・グループ

女優である著者は國學院大学客員教授としても活躍している。さらに日本の古典にオリジナル解釈を加え、現代語で脚色した物語を読み語る活動を10年にわたって続けてきた。本書では、一人語りの舞台「浅野温子よみ語り」を再現しつつ、読者を「古事記」の世界へと案内してくれる。

たとえばイザナギとイザナミを通じて語られるのは夫婦の絆だ。現世と黄泉の国の境界で別れる神たちから、互いに「やりきった」男女が次のステップへ向かう覚悟を学ぶ。またアマテラスと企業の第一線で働くキャリアウーマンを重ねて、葛藤や失敗にもひるまない生き方を探っている。

物語の原点としての「古事記」が、いかに現代人の日常と深く関連するテーマを内包しているのかを知り、驚かされる。行間から著者の“よみ語る”声が聞こえてくる、癒しの一冊だ。

(2013.03.18発行)


島 朗 『島研ノート 心の鍛え方』 
講談社 1470円

著者は棋士九段で、将棋研究会「島研」の主宰者。羽生善治、森内俊之、佐藤康光の卓越した技術と精神を熟知する男でもある。羽生の強さは「弱点だけでなく長所をつかませないこと」。また「局面の可能性を常に探す習性」にも注目する。将棋ファン必読の一冊だ。

(2013.03.28発行)


下重暁子 『この一句~108人の俳人たち』 
大和書房 1680円

江戸時代から現代まで、著者が選んだ俳人108人が並ぶ。見開きの右ページに3句、左には達意の解説。芭蕉、一茶はもちろん、岸田今日子、小沢昭一、和田誠の作も味わえる。俳句が形やテーマにも縛られない自由な表現の場であることがよく分かる。

(2013.03.30発行)


石山智恵 『女子才彩 わたし色の生き方』
PHP研究所 1575円

著者がキャスターを務める番組『女子才彩』は、各界で活躍中の女性に密着取材とインタビューで迫るドキュメンタリーだ。本書には江戸指物師から町工場社長まで、著者が出会った多彩な12人が紹介されている。共通するのは、自分だけの何かを大切にする意志だ。

(2013.04.19発行)


大人にオススメの映画「鑑定士と顔のない依頼人」

2013年12月29日 | 映画・ビデオ・映像

ジュゼッペ・トルナトーレ監督作品「鑑定士と顔のない依頼人」。

今年観た映画の中で、ベスト3に入るかもしれません。


天才的な審美眼を誇る美術鑑定士ヴァージル・オールドマン(ジェフリー・ラッシュ)は、資産家の両親が遺した美術品を査定してほしいという依頼を受ける。屋敷を訪ねるも依頼人の女性クレア(シルヴィア・フークス)は決して姿を現さず不信感を抱くヴァージルだったが、歴史的価値を持つ美術品の一部を見つける。その調査と共に依頼人の身辺を探る彼は……。


トルナトーレ監督といえば、「ニュー・シネマ・パラダイス」「海の上のピアニスト」「マレーナ」などが思い浮かびます。

いや、それらの作品にも負けないくらい、「鑑定士・・・」は見事な語り口なのです。

堂々のキャリアと、それなりの年齢と、偏屈さがウリの鑑定士が、謎の女性に揺さぶられていくプロセスが何ともいいんだなあ。

男と女の心理の綾。

美術品をめぐる薀蓄。

全体は、しっとりしたミステリー。

音楽は巨匠エンニオ・モリコーネ。

観終わった時、「これって、映画だよなあ~」と、当たり前のことを口にしそうになりました(笑)。

大人にオススメの1本です。


【気まぐれ写真館】 横浜 2013.12.28

2013年12月29日 | 気まぐれ写真館

【気まぐれ写真館】 新千歳空港 2013.12.28

2013年12月29日 | 気まぐれ写真館

【気まぐれ写真館】 札幌 2013.12.28

2013年12月29日 | 気まぐれ写真館

HTB「イチオシ!」で仕事納め

2013年12月28日 | テレビ・ラジオ・メディア

玄関に角松!



今年もお世話になりました!





美人ディレクター!





今週の「国井美佐アナ」



スタッフの皆さん、おつかれさまでした!



ヒロさん、国井さん、また来年!

【気まぐれ写真館】 北海道・新千歳空港 2013年暮れ

2013年12月28日 | 気まぐれ写真館

27日(金)深夜、TBS「テレビこすられたGP」で解説

2013年12月27日 | テレビ・ラジオ・メディア

27日(金)の深夜、TBSで「テレビこすられたGP」という年末らしい深夜特番があり、この中の「こすられたドラマの名脇役」というブロックで、解説をしています。

インタビュー取材を受けてのVTR出演になります。

とはいえ、番組全体は、私もオンエアで初めて見るのですが(笑)。


極バラ
「テレビこすられたGP」 
~2013年最もTVに出た○○は何だ!?SP~

12月27日(金)深夜0:10から


テレビに取り上げられた回数で
あらゆるモノをランキング!
面白情報満載で1年を振り返る!

年末年始に発表される「テレビ番組出演本数ランキング」(※ニホンモニター調べ)。

人気芸能人は誰なのかが一目瞭然のデータであり、それは国民の大きな関心事のひとつだ。しかし、テレビ番組で出演回数を重ねているのは「芸能人」だけではなく、「モノ」「場所」「事」などあらゆるジャンルでも起きていることである。

「テレビに多く放送されたモノ」=「こすられたモノ」を知ることで2013年のリアルな実態が見えてくる・・・ということで、2013年に「テレビでこすられた」人・モノ・事を「ベスト3」にして発表し、勝手に表彰する。さらに、それらが何故テレビに何度も取り上げられたかという理由を解き明かしながら、面白情報満載で紹介していく。

MC:
加藤浩次

進行:
吉田明世(TBSアナウンサー)

ゲスト:
キンタロー。
坂上 忍
ピース
眞鍋かをり
吉田 豪

2013年にテレビで紹介された「事象」を「こすられた回数」でランク付けし、ジャンルごとに「ベスト3」にして発表する。世の中のあらゆる物事にスポットを当て、1年間を振り返りながらエピソードトークとともに展開していく。
 

■こすられたドラマの名脇役
■こすられた家電
■こすられた商店街
■こすられたトーク番組のゲスト
■カラオケ番組で唄われたこすられ曲
■自宅公開ロケをこすられた芸能人


27日(金)の「金曜オトナイト」は、豪華年末スペシャル!

2013年12月27日 | 金曜オトナイト

12月27日(金)夜10時54分
BSジャパン 「大竹まことの金曜オトナイト」



今夜の「金曜オトナイト」は年末スペシャル!です。

ゲストが次々と登場。

あれやこれやの話題が、わんさと展開されます。














今週の「繁田美貴アナウンサー」と・・・・


27日(金)、札幌で今年最後のHTB「イチオシ!」生出演

2013年12月27日 | テレビ・ラジオ・メディア

27日(金)のHTB北海道テレビ「イチオシ!」は、今年最後の放送です。

これまで年末に出演する機会はあったのですが、本当の「年末ラストの日」というのは初めてになります。

しかも、この「イチオシ!年末スペシャル」の放送は、いつもより約1時間早い、14時50分から19時までのロングバージョン。

お楽しみに!


日経MJの「2013年 テレビCMトップ10」に回答

2013年12月26日 | メディアでのコメント・論評

25日の日経MJ(マーケティング・ジャーナル)こと日経流通新聞。

「2013年 テレビCMトップ10 広告効果を識者に聞く」
掲載されました。

年末恒例のアンケートに、今年もまた回答を寄せています。

まずは、その結果。



<2013年 テレビCMトップ10>

1位 SoftBank(ソフトバンクモバイル)
2位 TOYOTOWN編、ReBORN編(トヨタ自動車)
3位 ムーヴ(ダイハツ工業)
4位 ベトナムにも編など(大和ハウス工業)
5位 東進ハイスクール(ナガセ)
6位 ギャツビー(マンダム)
7位 NTTDOCOMO(NTTドコモ)
8位 au(KDDI)
9位 ロト7(全国都道府県、全政令都市)
10位 カップヌードル(日清食品)





・・・・この記事の中で、トヨタについてコメントしています。

2位のトヨタ「ReBORN」編はアニメ「ドラえもん」の実写版を継続した。運転免許を取ろうとのメッセージを託したCMについて、大学教授である碓井広義氏から「『クルマの免許、取りたくなりました』という学生も出てきた。若者の車離れの中で、効果あり」と称賛の声。

次に、ダイハツのムーヴ、法廷編。

「トホホな笑いなのに、このクルマの売りはしっかり伝わる」(碓井氏)


そして以下は、私が日経MJのアンケートに回答した、今年の「CM マイベスト10」です。参考までに。

「2013年のCM マイべスト10」

1位…日清カップヌードル(戦国時代) 
 今の日本も「グローバル化」という名の戦国時代かもしれない、
 という共感。
2位…ギャツビー ヘアジャム(松田翔太)
 「ヘアジャムじゃない」かどうか、見ればわかるのに、つい笑って
 見てしまう。
3位…ROOTSそれでも前を(竹野内豊) 
 竹野内の2枚目半ぶり、プチ情けなさぶりが、カワイイ。
4位…鏡月(石原さとみ) 
 石原を起用したCMの中で、最も魅力的に見える。
 「間接キスしてみ」にドキッ!
5位…ダイハツムーブ(法廷編シリーズ) 
 トホホな笑いなのに、このクルマのウリはしっかり伝わる。
6位…カロリーメイト(満島ひかり)
 元々は歌の人だった女優・満島。
 血の通った名曲「ファイト!」に胸が熱くなる。
7位…ゼクシィ(芸人プロポーズ)
 見ている側がテレるかと思いきや、芸人たちが「いい男」に見えて
 くるから不思議。
8位…トヨタ (ドラえもん)
 「クルマの免許、取りたくなりました」という学生も出てきた。
 若者の車離れの中で、効果あり。
9位…スニッカーズ(問題タレント起用)
 「いたなあ、タトゥー」と当時の自分も思い出しつつ、苦笑いして
 見てしまう。
10位…ユニクロ デニム(バレリーナ)
 シンプルな表現で商品の機能と美しさの両方を訴求。


また、記事には「今後、売り上げ増やイメージアップに貢献しそうなタレント・有名人」のアンケート結果も載っています。

<売り上げに貢献しそうなタレント・有名人>

女性  
 1位 有村架純     
 2位 きゃりーぱみゅぱみゅ    
 3位 能年玲奈      
 4位 杏   
 5位 武井 咲     
 6位 綾瀬はるか     
 7位 浅田真央      
 8位 米倉涼子     
 8位 剛力彩芽     
10位 小泉今日子     
10位 北川景子    

男性             
 1位 堺 雅人  
 2位 田中将大  
 3位 本田圭佑   
 4位 片岡愛之助  
 5位 嵐     
 6位 岡田准一 
 7位 役所広司   
 8位 西島秀俊     
 9位 東出昌大   
10位 松田龍平      
10位 福士蒼汰      


・・・・そして以下は、先ほどの「CM マイベスト10」と同様、日経MJのアンケートに回答した際の「貢献しそうなタレント・有名人」です。

「貢献しそうなタレント・有名人 マイベスト10」

女性
1位 夏目三久   
 単なる女子アナでも、単なる女性タレントでもない、ヌエ的な魅力。
 いわば「夏目三久」という一つのジャンルを生み出した。
2位 ももクロ    
 「AKB48」のライバルではなく、アナザーウエイとしての地位確立?
3位 有村架純     
 新鮮なのに、どこか懐かしいその笑顔には、ナンビトたりとも誰も
 逆らえない。
4位 きゃりーぱみゅぱみゅ   
 派手なファッションやダンスと、素の彼女がもつ「真面目さ」「普通
 感覚」の共存。
5位 大久保佳代子     
 世の女子たちが、大久保さんの「セルフ・プロモート力」から学べる
 ことは多い。
6位 綾瀬はるか    
 美女なのにほんわか。美女なのにホッとさせる。
 「天女系女優」と呼びたい。
7位 能年玲奈     
 トーク番組などで明らかになった「天然系女優」。
 役柄であれば何にでも変身する。
8位 菅野美穂     
 いい人にも、悪女にもなれる。一途な女から、複雑怪奇女まで
 演じられる。
9位 水原希子     
 韓国人とアメリカ人のハーフとして日本で大活躍。
 いわば「芸能界の一人リムパック(環太平洋合同演習)」ですね。
10位 しずくちゃん      
 大人の計算など吹き飛ばす「ジス・イズ・子ども」ぶりに、大人も
 降参しそう。

男性              
1位 堺 雅人 
 「大奥」「半沢直樹」「リーガルハイ」、カメレオン俳優の力量は
 まだまだアップする。
2位 バナナマン 
 ホットな笑いとクールな視点の両方を持っていることで、飽きられ
 ない存在に。    
3位 タモリ    
 「笑っていいとも!」終了により、「自由人・タモリ」のイメージを
 生かすことが可能になった。
4位 田中将大投手
 今や「世界のマー君」であり、どんな商品でもOKな汎用性をもつ。
5位 嵐    
 全盛期のSMAPを超える安定感。人気者だが、押しつけがましく
 ない点がいい。
6位 東出昌大
 「あまちゃん」「ごちそうさん」の朝ドラ連続起用で好感度アップ。
 夫に良し、息子に良し。   
7位 松田龍平
 そこにいるだけで、他の誰でもない、ある「空気」を作れる貴重な
 俳優さん。 
8位 有吉弘行    
 最盛期に入ったにもかかわらず、守りの姿勢を見せない潔さ。
9位 香川照之 
 「日本のラッセル・クロウ」と呼びたいほどの圧倒的な存在感。  
10位 片岡愛之助      
 歌舞伎という魔界に生息する異才を、「半沢直樹」だけでは
 語れない。


・・・・さて、来年はどんなCMが、どんな出演者とキャラクターが登場してくるのでしょうか。

【気まぐれ写真館】 沖縄から、サンタビール (ヘリオス酒造)

2013年12月25日 | 気まぐれ写真館

「TV見るべきものは!!」年末拡大SP

2013年12月25日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。

24日掲載分で、今年はラストです。

ということで、「今年のテレビ界を総括する」内容の年末拡大SPとなりました。


視聴者に
「しょせんテレビはこんなもの」と
思わせていないか

日本でテレビ放送が開始されてから60周年を迎えた2013年。将来編まれる放送史には、「あまちゃん」(NHK)と「半沢直樹」(TBS)の年だったと記されるはずだ。近年その凋落ぶりばかりが話題となっていたテレビだが、中身によっては見る人たちの気持ちを動かせることを再認識させた意義は大きい。

しかし、その一方でテレビが自らの首を絞めるような不祥事も多かった。まず、ガチンコ対決を標榜してきた「ほこ×たて」(フジテレビ)のヤラセ問題だ。「どんな物でも捕えるスナイパー軍団vs.絶対に捕らえられないラジコン軍団」で、対決の順番を入れ替えるなど偽造を施していたのだ。また、猿とラジコンカーの勝負では、猿の首に釣り糸を巻いてラジコンカーで引っ張り、猿が追いかけているように見せていたという。特に後者は動物虐待でもある悪質な演出だ。

さらに問題なのは、過去の真剣勝負まで疑いの目で見られたことだろう。町工場の職人技など、「モノづくり日本」の底力をバラエティーの形で見せてきた功績も、視聴者を裏切る形で損なわれてしまった。一連の背後には、かつての「発掘!あるある大事典Ⅱ」(関西テレビ)のデータねつ造事件と同様、テレビ局と制作会社の関係における構造的な問題も存在する。BPO(放送倫理検証機構)はこの件の審議入りを決めたが、ぜひ深層にまでメスを入れて欲しい。

次に、テレビ朝日のプロデューサーによる1億4千万円の横領事件。制作会社に架空の代金を請求するという、あまりに古典的かつ不用意な手口と金額の大きさに呆れるばかりだ。新2強時代といわれ、視聴率で日本テレビとトップ争いをするまでになったテレビ朝日のイメージダウンだけでなく、テレビ業界全体の体質とモラルが疑われる事件だった。

また、今年はみのもんたの番組降板騒動もあった。本人は降板の理由を、次男が窃盗未遂容疑で逮捕されたことによる「親の責任」に限定していたが、それだけではないことを視聴者は知っている。社長を務める水道メーター会社が関わった談合問題、取材対象でもある政治家たちとの近い距離、度重なるセクハラ疑惑など不信感の蓄積があったのだ。

同時に、視聴率を稼ぐタレントであること、局の上層部と関係が深いことなどから、毅然たる判断を保留し続けたTBSに対しても視聴者は冷ややかな目を向けた。前述のヤラセ問題や横領事件などと併せて、「しょせんテレビはこんなもの」と思わせてしまったことは、身から出たサビとはいえ残念でならない。

最後に特定秘密保護法である。正面切ってこの悪法に反対したテレビ局があっただろうか。いや、百歩譲って、この悪法の問題点をどこまで本気で伝えただろうか。報道機関として自身も多くの制約を受けることよりも、政権や監督官庁の顔色を気にして鳴りを潜めていたとしか言いようがない。こうした態度もまたテレビへの不信感を助長させるものだ。

「あまちゃん」と「半沢直樹」で、一時的とはいえ輝きを見せたテレビ。来年の盛り上がりが、ソチオリンピックとワールドカップ・ブラジル大会だけでないことを祈りたい。

(日刊ゲンダイ 2013.12.24)


映画『そして父になる』の現実喚起力

2013年12月25日 | 映画・ビデオ・映像

今年観た映画の中で、強く印象に残った作品の一つが、是枝裕和
監督の『そして父になる』です。

学歴、仕事、家庭といった自分の望むものを自分の手で掴み取ってきたエリート会社員・良多(福山雅治)。自分は成功者だと思っていた彼のもとに、病院から連絡が入る。それは、良多とみどり(尾野真千子)との間の子が取り違えられていたというものだった。6年間愛情を注いできた息子が他人の子だったと知り、愕然とする良多とみどり。取り違えられた先の雄大(リリー・フランキー)とゆかり(真木よう子)ら一家と会うようになる。血のつながりか、愛情をかけ一緒に過ごしてきた時間か。良多らの心は揺らぐ……。


赤ちゃんの取り違え。

あり得ることですが、あってはならないし、でも起きた時には、どうしたらいいのか。

平穏に暮らしていた2組の夫婦が、それぞれの家庭が崩壊するような状況に、突然直面する。

子どもたちのために、という思いが深いからこそ、迷うし、悩む。

観る側もまた、家族や家庭って何だろう、と考えながらスクリーンを見つめる。

“正解”はあるのか、ないのか。

登場人物、特に主人公が、じわじわと成長していく姿が描かれていたことが良かった。

だからこそ、最後に彼らが出した結論に、その選択に、納得する自分がいた。

きっと、それでいいんだ、と。


今年、まるでこの映画と同じような出来事がありました。

ある60歳の男性が、60年前の昭和28年、生まれた病院で別の赤ちゃんと取り違えられたとして、病院を開設した東京・墨田区の社会福祉法人「賛育会」を訴えていたのだ。

11月になって、東京地方裁判所は、DNA鑑定の結果から取り違えがあったことを認め、合わせて3800万円を支払うよう命じたことが報じられた。

現実の出来事というだけでなく、「全く別の人生(経済的にも苦しい生活)を余儀なくされた」ことを理由に訴訟が起きていたことに驚いた。

この判決についてうんぬんはしないが、ただ、「男性が事実関係を知ったとき、実の両親はすでに亡くなっていた」と聞いて、どこかほっとしたのも事実だ。

もし取り違えがなかったとしたら、あり得たかもしれない、もう一つの別の人生。

確かにそうかもしれない。

でも、それを思うことが、60年生きてきた自分を否定することになるのか、ならないのか。

映画『そして父になる』が、あたかも現実を呼び寄せたようで、これもまた是枝監督のチカラかもしれない、と思ったりした出来事でした。


<このブログ内での関連記事>

2013年05月30日
日刊ゲンダイで、「そして父になる」是枝監督についてコメント
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2013年 こんな本を読んできた (3月編)

2013年12月25日 | 書評した本 2010年~14年
ハワイ島 2013


毎週、「週刊新潮」に書いてきた書評で、今年読んできた本を振り返っています。

以下は、3月分です。

(文末の日付は本の発行日)


2013年 こんな本を読んできた (2月編)

真保裕一 『ローカル線で行こう!』 
講談社 1575円

地方鉄道の再生物語とミステリーが融合した長編小説である。舞台は廃線寸前の赤字ローカル線「もりはら鉄道」。県庁から出向して副社長を務める鵜沢哲夫と、新幹線の車内販売員から社長に抜擢された篠宮亜佐美が主人公だ。

利用者の気持ちを熟知する亜佐美は次々と集客イベントを仕掛けると同時に、社内の淀んだ空気も変えていく。タイミングを見て、もり鉄に引導を渡す役割を帯びていた鵜沢だけでなく、株主である銀行や県庁側もその成果に驚かされる。 

一方、自力再生の努力に水を差すような、運行妨害や駅舎の火災など不審な出来事が多発する。明らかにもり鉄を潰すことが狙いだ。誰が、何を目的に仕掛けているのか。存続を賭けた最後のイベント「もり鉄祭り」が刻々と迫る。それは鵜沢と亜佐美、それぞれの人生の勝負所でもあった。

(2013.02.12発行)


沢木耕太郎 『キャパの十字架』 
文藝春秋 1575円

写真の歴史の中に燦然と輝く一枚。ロバート・キャパという戦場カメラマンの名を世界的なものにした記念碑的作品。それがスペイン戦争時に撮影された「崩れ落ちる兵士」だ。共和国軍兵士が反乱軍の銃弾に当たって倒れる決定的瞬間を捉えて、この戦争を象徴するビジュアルとなった。

しかし、あまりに奇跡的なタイミングでシャッターが切られていることで、この写真をめぐる真贋論争が長く続いてきた。フェイクかポーズか。本当に撃たれた瞬間なのか。もしくは、キャパがとんでもない僥倖にめぐまれたのか。

著者はその真実を探るべく、スペインをはじめ各地を取材して歩く。現地、そして現場に立ってこそ見えてくるものがあるからだ。やがて仮説が確信に変わる瞬間が訪れる。キャパという神話に新たな光を当てる、驚きの結論とは・・・。

(2013.02.15発行)


平松洋子 『小鳥来る日』 
毎日新聞社 1575円

第28回講談社エッセイ賞、受賞第1作である。いつもの喫茶店で耳にした若いカップルの会話。レースのすきまの意味。グレン・グールドの椅子。「せっかくだから」という言葉の魔法。日常の中の小さな気づきや再発見が人生のスパイスとなることを教えてくれる。

(2013.01.30発行)


東浩紀 『東浩紀対談集 震災ニッポンはどこへいく』 
ゲンロン 1890円

本書のベースは生放送のWEB対談番組「ニコ生思想地図」。鼎談を含む12の対談を再録している。ゲストは猪瀬直樹、高橋源一郎、津田大介などだ。テーマは震災復興から文学、さらに憲法改正まで。東日本大震災がこの国の言論や文化に与えた影響を概観できる。

(2013.02.01発行)


ナンシー関 『ナンシー関の名言・予言』 
世界文化社 1260円

没後10年を過ぎても、こうして“新刊”が出続ける。ナンシー関がいかにオリジナルな存在だったのかが分かる。「10年後、ヤワラちゃんは選挙に出ている」。著名人の本質を描いた消しゴム版画と寸鉄人を刺すコラムは、まるで悪魔の予言のように今を映している。

(2013.02.01発行)


奥田英朗 『沈黙の町で』 
朝日新聞出版 1890円

朝日新聞に連載当時から話題を呼んだ問題作である。舞台は地方都市。ある夏の夜、中学校で2年生の名倉祐一の遺体が発見される。裕福な呉服店の一人息子で、そのことをどこか鼻にかける癖があり、クラスでもテニス部でも浮いた存在だった名倉。部室の屋上からの転落死だった。

人間関係が都会とは比較にならないほど緊密な小さな町。学校はまさに社会の縮図であり、誰も逃げ場がない。やがていじめ問題が明らかになり、同級生4人が逮捕・補導される。親も教師も激しく動揺するが、警察に対して彼らは多くを語ろうとしない。大人との距離感。自我の葛藤。14歳は微妙な年代である。

名倉の死は本当に他殺なのか、それとも自殺だったのか。物語は少年たちとその親、教師や警察など複数の視点を交錯させながら、驚きの結末へと進んでいく。

(2013.02.28発行)


大谷昭宏 『事件記者という生き方』 
平凡社 1680円

元読売新聞記者で現在はテレビを中心に活躍する著者。本書は半世紀近いジャーナリストとしての軌跡を振り返る自伝的エッセイだ。

「私は生まれたときから新聞記者になろうとしていた」という著者にとって、徳島支局を経て着任した大阪本社社会部は理想の舞台だった。黒田清が率いる、いわゆる「黒田軍団」のメンバーとして数々の事件に遭遇する。総力戦となった三菱銀行人質事件。報道協定に関する課題を残したグリコ・森永事件。現場で事件記者は何を考え、どう動くのかが明かされるだけでなく、警察や報道のあり方も検証されている。

本書で一貫しているのは、多くの人にメディアやジャーナリズムに興味を持ってもらいたいという熱い思いと、取材のプロとしての矜持だ。「悩んだら、なぜその職業を選んだのかを考えろ」の言葉が印象に残る。

(2013.02.25発行)


藤田宜永 『探偵・竹花 孤独の絆』 
文藝春秋 1575円

私立探偵・竹花シリーズの最新連作集だ。還暦を迎えてもクールな竹花だが、「サンライズ・サンセット」ではある男から10年前に家を出た娘を探すよう頼まれる。だが途中で彼が本物の父親ではないことがわかり・・。他の3篇も他者との繋がりをめぐるほろ苦い物語だ。

(2013.02.25発行)


一橋文哉 
『マネーの闇~巨悪が操る利権とアングラマネーの行方』
 
角川oneテーマ新書 1575円

『人間の闇』『国家の闇』に続く闇シリーズ最新作。犯罪の陰で動くカネとそこに群がる人間の欲望にスポットを当てる。旧満州に始まるカネと権力の流れ。やくざ社会の近代化。さらに国際的錬金術からサイバー犯罪まで。戦後日本が歩んだ暗黒の歴史が解明される。

(2013.01.10発行)


北海道新聞社:編 倉本聰:監修 『聞き書き 倉本聰ドラマ人生』 
北海道新聞社 1680円

名作ドラマ『北の国から』の放送開始から30年。1年半に及ぶインタビューを基にまとめられた本書では、その生い立ちから創作の裏側、北海道での生活や環境問題までを語り尽している。また勝新太郎、石原裕次郎などをめぐる、倉本聰ならではの俳優論も貴重だ。

(2013.02.20発行)


福田和也 『二十世紀論』 
文春新書 788円

見えづらい「これから」を考えるために20世紀を総括する。極めて野心的な一冊だ。戦争と人間性の意味を変えた第一次世界大戦。西洋列強による植民地体制を解体した第二次世界大戦。そして究極の総力戦としての米ソ冷戦。まさに戦争の世紀だったことがわかる。

著者は、これからの日本が進むべき道として、世界情勢の客体ではなく主体となり、自ら「治者としての気概と構想」を持たねばならないと説く。アメリカが頼れる存在ではなくなった今、「保護してもらえない被治者」ほど惨めなものはないからだ。

(2013.02.20発行)


葉真中 顕 『ロスト・ケア』 
光文社 1575円

第16回日本ミステリー文学大賞新人賞に輝いたのが本作だ。ベースとなっているのは介護問題である。

物語は43人もの人間を殺害した犯人<彼>に、死刑判決が下される場面から始まる。そこから時間を遡り、複数の語り手が登場する。検事、介護センターの従業員、介護企業の営業部長、母親の介護に疲れたシングルマザー、そして<彼>。やがて殺人事件が起きる。

この小説の主な時代設定は2006年から翌年にかけてだ。それは介護サービスのコムスンが介護報酬の不正請求問題を起こして、厚生労働省から処分を受けた時期と重なる。事件としては人々の記憶から遠くなったが、露呈した介護問題は現在も進行形のままだ。

家族という小さな単位に重い負担がのしかかる介護。本書は現実の事件も取り込みながら、生きることの意味を問う作品となっている。 

(2013.02.20発行)


内田樹・岡田斗司夫 『評価と贈与の経済学』 
徳間書店 1000円

現在多くの支持を集める論客の一人で、思想家にして武術家の内田。サブカルチャーに精通し、オタキング(おたくの王様)と呼ばれる岡田。異色の組み合わせで、社会や経済の新たな見方を提示する対談集だ。

表向きは岡田が敬愛する内田の胸を借りる形をとりながら、実は岡田による鋭い分析が連打される。群れをなしているはずが、何かあれば一瞬で散らばる「イワシ化する社会」。若者たちの仕事や恋愛に対するスタンスを象徴する「自分の気持ち至上主義」などだ。

一方の内田は、人の世話をするのは、かつて自分が贈与された贈り物を時間差で返すことだという「贈与と反対給付」の経済論を展開。岡田の「評価経済」という考え方と相まって、本書の読みどころの一つになっている。その延長上にある「拡張型家族」の提唱もまた刺激的だ。

(2013.02.28発行)


曽野綾子 『不幸は人生の財産』 
小学館 1575円

『週刊ポスト』に連載中のエッセイ「昼寝するお化け」、その2年半分が一気に読める。「国家に頼るな」「人生は収支のバランス」などのメッセージに背筋を伸ばし、「最善ではなく次善を選ぶ」ことの大切さをあらためて知る。ブレない人は物事の本質を突く。

(2013.02.26発行)


中村好文 『建築家のすまいぶり』
エクスナレッジ 2520円

著者は「住宅の名手」といわれる建築家だ。注目すべき同業者たちが自らのために作った家とはどんなものなのか。全国各地の24軒を巡った訪問記である。共通するのは家にテーマがあること、自然体で暮らせること、そして美しさ。それは著者の文章にも通じる。

(2013.02.28発行)


南波克行:編 『スティーブン・スピルバーグ論』 
フィルムアート社 2730円

スピルバーグは40年にわたり映画界をリードしてきた。その作品世界を子供、歴史、戦争、コミュニケーションなど複数の視点から分析した初の総論集。『バック・トウ・ザ・フューチャー』シリーズについて、ゼメキス監督を交えた鼎談で語られる製作秘話も貴重だ。

(2013.02.25発行)


いとうせいこう 『想像ラジオ』 
河出書房新社 1470円

東日本大震災から2年が過ぎた。地震や津波を取り込んだ形の文芸作品がいくつも生まれたが、これほどのインパクトを持つものはなかったのではないか。

主人公はラジオパーソナリティのDJアーク。被災地から不眠不休で放送を続けている。しかし、そのおしゃべりや音楽を聴こうとラジオのスイッチを入れても無理だ。彼自身が言うように、「あなたの想像力が電波であり、マイクであり、スタジオであり、電波塔であり、つまり僕の声そのもの」なのだ。

想像ラジオにはリスナーからのメールも届く。「みんなで聴いてんだ。山肌さ腰ばおろして膝を抱えて、ある者は大の字になって星を見て。黙り込んで。だからもっとしゃべってけろ」。

DJアークは話し続ける。遠くにいる妻や息子を思い、聴いている無数の人たちの姿を想像しながら。

(2013.03.11発行)


立花 隆 『立花隆の書棚』 
中央公論新社 3150円

「本の本」としては突出した一冊である。厚さは5センチ。小さなダンベル級の重さ。全ページの3分の1近くを占めるカラーグラビア、それも本棚ばかりの写真だ。膨大な本が置かれた自宅兼仕事場(通称ネコビル)をはじめ、所蔵する本が並ぶ“知の拠点”が一挙公開されている。

読者は写真を見ながら内部を想像しつつ、この館の主の話に耳を傾ける。まず驚くのは、医学、宗教、宇宙、哲学、政治など関心領域の広さだ。各ジャンルのポイントとなる書名を挙げながらの解説がすこぶる興味深い。

だがそれ以上に、時折り挿入される「本の未来」や「大人の学び」についての言葉が示唆に富む。「現実について、普段の生活とは違う時間の幅と角度で見る。そういう営為が常に必要なんです」。それを促してくれるのが紙の本なのだ。

(2013.03.10発行)


森 功 『大阪府警暴力団担当刑事~「祝井十吾」の事件簿』 
講談社 1500円

祝井十吾とは大阪府警の暴力団捜査を担うベテラン刑事たちの総称で、著者が名づけた。ここには彼らが追い続けた注目の案件が並ぶ。島田紳助の引退、ボクシング界の闇、梁山泊事件等々。その背後にある暴力団の狙いと動きが著者の徹底取材で白日の下にさらされる。
(2013.03.10発行)


山田健太 
『3.11とメディア~徹底検証 新聞・テレビ・WEBは何をどう伝えたか』 

トランスビュー 2100円

「ジャーナリズムの基本は、誰のために何を伝えるかである」と専修大教授の著者。では、あの地震、津波、原発事故を、当時この国のメディアはどう伝えたのか。そして何が伝わらなかったのか。それはなぜなのか。冷静な分析と秘めたる怒りが印象的な労作評論である。

(2013.03.05発行)


貝瀬千里 『岡本太郎の仮面』 
藤原書店 3780円

巨匠にして永遠の異端児、岡本太郎。晩年の彼は仮面や顔を描き続けた。しかしその評価は決して高くない。では、なぜそれにこだわったのか。著者は作品と思想に浮かび上がる仮面・顔と、その思想形成の軌跡を追う。行き詰った現代を鼓舞する太郎の意志とは?

(2013.03.10発行)


宇野常寛 『日本文化の論点』 
ちくま新書 756円

気鋭の評論家による現代文化論。現在、戦後的なものの呪縛から解かれた、もう一つの日本が立ち現われつつあると言う著者が挙げるキーワードが、「日本的想像力」と「情報社会」である。登場するのはAKB48、ニコニコ動画、ボーカロイドなど、ポップカルチャーの様々なシーンだ。

そこにはコンテンツを受け取るだけでなく、「打ち返す」「参加する」快楽がある。注目すべきは、コンテンツを媒介とするコミュニケーションの価値なのだ。ネットが発見した「あたらしい人間像」が、これからの社会をどう動かすのか。

(2013.03.10発行)