日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。
今週は、テレビ朝日のスペシャルドラマ「オリンピックの身代金」を
取り上げました。
「オリンピックの身代金」
テレビ朝日の勢いを象徴する大作ドラマだった
テレビ朝日の勢いを象徴する大作ドラマだった
先週末、テレビ朝日が2夜連続で「オリンピックの身代金」を放送した。1964年の夏、東京五輪をめぐって繰り広げられる緊迫のサスペンスだ。
東大院生・島崎(松山ケンイチ)の兄が五輪施設の工事現場で急死する。出稼ぎとして無理を重ねた結果だった。日本の経済成長を支えながらその犠牲となる人々と、置き去りにされる地方の現実に憤った島崎は、国家を相手の犯行計画を練る。
事件を追うのは捜査一課の落合(竹野内豊)。自身の戦争体験、妹・有美(黒木メイサ)と島崎の関わりなど、その心中は複雑だ。藤田明二監督は正攻法で男たちの心情と行動を描いていく。50年前の東京や群衆シーンにも手抜きはない。全体として大人の鑑賞に耐える堂々の大作となった。
それにしてもこの豪華なキャストはどうだ。メインはもちろん、天海祐希、江角マキコ、唐沢寿明、沢村一樹、柄本明などが出演時間の長短に関わらず脇を固めていた。
20年ほど前、売れっ子俳優や人気タレントの中には「2ケタの局には出ない」とうそぶく人たちもいたのだ。2ケタとは当時のテレビ朝日が10チャンネル、テレビ東京が12チャンネルだったことを指す。思えば隔世の感だ。
この企画は7年後の東京五輪開催の決定前から進んでいた。いわば賭けであり、それに勝つのもまた現在のテレ朝らしい。
(日刊ゲンダイ 2013.12.03)