日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。
今週は、NHK土曜ドラマ「太陽の罠」について書きました。
企業、恋愛、 サスペンス。
3要素の盛り込み方が実に緻密
3要素の盛り込み方が実に緻密
NHK土曜ドラマ「太陽の罠」は3つの側面をもつ。まず太陽光発電とその特許をめぐる企業ドラマであること。次に1人の女をはさんで2人の男が対峙する恋愛ドラマ。そして全体の仕立てはサスペンスドラマだ。
太陽光パネルの開発に社運を賭けるメイオウ電機が、パテント・トロールと呼ばれるアメリカの特許マフィアから訴訟を起こされる。社内の情報漏えいが指摘され、ある若手社員(AAAの西島隆弘、熱演)が疑われる。しかも彼は開発部長(伊武雅刀)に対する殺人未遂の罪まで背負わされてしまうのだ。
事件の背後には西島の上司(尾美としのり)や年上の妻(伊藤歩)、謎の企業コンサルタント(塚本高史)などがいる。彼らもそれぞれ秘密を抱えているところがミソだ。そうそう、刑事役の吉田栄作も中年男のいい味を出している。
脚本は大島里美(「恋するハエ女」で市川森一賞)のオリジナル。企業、恋愛、 サスペンスの3要素を盛り込みながら、視聴者にどのタイミングで何をどこまで教えるのか、その計算が実に緻密だ。おかげで、見る側も幻惑されながら推理を楽しむことができる。
現在、全4回のうち前半が終わったところだ。特許戦争の行方。尾美の精神状態。伊藤の真意。塚本の狙い。そして西島の決着。まさにここからが佳境だろう。
(日刊ゲンダイ 2013.12.10)