経営コンサルタントへの道

コンサルタントのためのコンサルタントが、半世紀にわたる経験に基づき、経営やコンサルティングに関し毎日複数のブログを発信

■【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】  レーザーでインフラ点検を自動化 3301-4905

2024-09-01 12:03:00 | 【経営】 成功企業・元気な会社

■【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】  レーザーでインフラ点検を自動化 3301-4905

 経営コンサルタントを半世紀にわたってやってきた経験から、すこしでも皆様のご参考になればとお届けしています。

 成功企業・元気な会社・頑張っている社長】は、皆様から寄せられたり、私が支援したり、見聞したりした企業の事例を紹介していますが、お陰様で、毎回拍手をいただいています。

 また、あなたのクライアント・顧問先やお知り合いの会社で、ここで紹介したい企業・団体等がありましたら、是非ご連絡ください。

■   レーザーでインフラ点検を自動化 3301-4905
 2012年12月に中央自動車道で発生した笹子トンネル崩落事故。トンネルの天井コンクリート板が138メートルにわたって落下し、複数の車が巻き込まれて9人が亡くなった。こうしたインフラ事故を繰り返さないために、理化学研究所や量子科学技術研究開発機構(QST)などで構成する研究チームは、レーザー技術を用いてトンネルの老朽化を点検する技術を開発。この成果を事業化するために17年に設立されたのが、理研発ベンチャーでQST認定ベンチャーでもあるF社(埼玉県和光市)である。

 道路トンネルの老朽化点検方法はこれまで、高所作業車に乗った検査員がトンネル天井を目視して危険箇所を推定し、ハンマーでコンクリート表面をたたいて、音の違いで判断していた。コンクリートの剥離や浮きなどの異常と判断すれば、除去・補修する。ただこの方法だと、点検作業そのものに時間がかかるほか、検査員の経験と勘に頼るため、判定結果に個人差が出る。高所作業に伴う墜落の危険性があるという弱点もあった。

 これに対し、理研などが開発した「レーザー打音検査装置」は、コンクリート表面に毎秒10~50回のパルスレーザーを照射し、欠陥箇所を画面上にマッピング表示する。「ハンマー」に相当する振動励起レーザーと、「耳」に相当する振動計測レーザーの2種類を用いてトンネル表面の振動を解析し、内部欠陥による「共振」が起これば、打音異常と判定する仕組みだ。これにより、検査員の技量差を解消できるほか、劣化の進行度を予測することも期待できる。遠隔・非接触で点検するため危険性は低く、作業時間は4分の1、コストは3分の2に短縮される見通しだ。

 「従来のハンマーによる打音検査は、どのような音なら異常なのかという定量的な基準がなかった」。こう振り返るのは、F社のK社長。異常かどうかの判断は、検査員の勘と経験に委ねられる "暗黙知"の世界だった。そこで研究チームは、人による打音検査作業を撮影し、人がどうやって判断しているかをデジタル化。人の判定基準と同等以上の能力を持つAI(人工知能)を組み込んだ判定ソフトの開発に成功した。

 日本の道路トンネルや橋梁などのインフラは、高度経済成長期の1960年代から70年代に建設されたものが多い。完成後50~60年は経過しており、老朽化対策は待ったなしだ。半面で、点検の担い手となる検査員の高齢化と人手不足は急速に進んでいる。検査員の勘と経験をデジタル化し、人と同等以上の診断技術を確立してインフラ点検を自動化しなければ、全国に総延長約5000キロメートルもある道路トンネルの点検は進まない。

 K社長はF社の設立前は、機械メーカーでの勤務や技術系コンサル会社などの経営を経験しており、「BtoB(企業向けビジネス)やBtoC(消費者向けビジネス)の世界ではある程度の成果を挙げた」と自負する。「今度は理研・量研という国家プロジェクトの世界では最高のブランドとコラボレーションして、BtoG(政府)toP(国民)というまったく新しいビジネスモデルに挑戦する」と意気込んでいる。

【 コメント 】
 成功企業・元気な会社・頑張る社長で、共通していることのひとつが、「時代に敏感である」ということです。
 F社の場合には、笹子トンネル崩落事故という、その時の話題が沸騰したニュースに敏感に反応しました。
 「これが、ビジネスに繋がらないか」という思考起点を重考高盛しています。
 それに関する情報を収集しているときに、理化学研究所や量子科学技術研究開発機構(QST)などで構成する研究チームの情報にたどり着きました。
 普通の人なら、そのニュースは、自分には無関係なニュースとして聞き流してしまいます。
 ところがK氏は、重考高盛とこの情報を結び付け、行動を起こしたのです。「フットワークの良さ」が成功者にしばしば見られます。
 普通なら、理化学研究所や量子科学技術研究開発機構(QST)などという国の機関に小さな会社がビジネスチャンスを求めてコンタクトをしません。
 それを行動に移せることがまた、成功への道を拓くことに繋がるのです。
 私も新商品開発ということで、クライアントさんを成長させてきましたので、その典型的な事例として、コンサルタント・士業の皆さんに、この場を通じましてご紹介させていただきました。

  出典: e-中小企業ネットマガジン

 
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【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】  仕事は同じでも志が異なる「3人のレンガ職人」 3222-4827

2024-08-26 12:03:00 | 【経営】 成功企業・元気な会社

■【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】  仕事は同じでも志が異なる「3人のレンガ職人」 3222-4827

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■   仕事は同じでも志が異なる「3人のレンガ職人」 3222-4827
 「3人のレンガ職人」という物語がある。中世のヨーロッパで旅人が3人のレンガ職人に出会った。旅人が「何をしているのか」と尋ねると、1人目は「親方の命令でレンガを積んでいる」と答え、2人目は「大変だが、賃金がいいからやっている」と答えた。これに対して3人目は目を輝かせながら「完成まで100年以上かかる教会の大聖堂を造っている。こんな仕事に就けて光栄だ」と答えた、というものだ。
 多少異なるバージョンもあるが、自己啓発本など多くのビジネス関連書籍で紹介されており、かの有名な経営学者、P・F・ドラッカー氏の著書でも「3人の石工」として似たような物語が登場している。最近の取材で、この話を引き合いに出したのが、仮設の水処理プラントのレンタルを手掛けるS社(千葉市)のI社長だった。
 1974年設立の同社は泥水や下水といった水処理を得意とし、2000年には、土木工事で発生する大量の泥水を高速・連続的に処理する土木泥水再利用システムを開発し、費用削減と工期短縮を実現した。また大規模災害の復旧事業でも活躍し、2011年の東日本大震災や19年の台風19号では、被災地に短期間で水処理プラントを設置し、インフラ施設が復旧するまでの間、被災地の下水処理を担った。
 同社の技術はSDGsの目標「安全な水とトイレを世界中に」の達成に貢献できると海外でも高く評価。アラブ首長国連邦(UAE)が主催し、持続可能な課題解決に取り組む世界各国の中小企業などを表彰する2022年度の「ザーイド・サステナビリティ賞」で水資源部門のファイナリストに選出された。受賞は逃したものの、注目度はいっそう高まった。
 国内外で話題を集める同社は「日本一の仮設水処理技術で世界に存在する社会課題解決に貢献する」との目標を掲げている。ところが、「『日本一の~』という目標を口にすると、従業員は引き気味になる」(I社長)というのだ。そこで登場したのが「3人のレンガ職人」の物語。「同じ仕事をしていても志が違う。当社のビジネスモデルは世のため人のために大いに役立つものだ。従業員には高い志を持ってほしい」とI社長は従業員の意識変革に期待している。
 「3人のレンガ職人」には続きがあった。あれから10年後、1人目は相変わらず言われたままにレンガを積んでいて、成長は見られない。2人目は、それなりに技術を磨き、危険を伴う仕事もして高い賃金を得ていた。そして3人目は、現場監督に登用され、完成した大聖堂に自分の名前が刻まれたという。志の違いによって生じた差は歴然だった、という結末である。

【 コメント 】
 「3人のレンガ職人(石工職人)」という物語は、社員研修等の教材としてしばしば使われます。
 S社は、社員研修にも力を入れている企業で、この物語をトップが実務に用いているという経営者の姿勢が評価されます。
 最近では、社員研修やOJTを軽視する企業が多いだけに、あまり研修費を投じなくても社員研修を実現できるという好例と言えます。

  出典: e-中小企業ネットマガジン掲載承認規定に基づき作成

 
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【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】  「認め合う」企業風土が会社を伸ばす 3215-4819

2024-08-19 12:03:00 | 【経営】 成功企業・元気な会社

■【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】  「認め合う」企業風土が会社を伸ばす 3215-4819 

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■   「認め合う」企業風土が会社を伸ばす 3215-4819
 「〇〇さん、いつもありがとう」「〇〇さんはこんなところがすごい」ー。横浜市を拠点に物流業務の請負や出荷代行などの事業を手掛けるT社では、ふだん社員がお互いに「いいね」と思っていることを紙に書いて渡す「AIS(アイス)カード」という取り組みを行っている。
 社員同士がカードをやり取りすることで、お互いを認め合う。続けているうちに社員同士のコミュニケーションや連携、思いやりの気持ちが深まるようになったそうだ。その効果は取引先にも波及。「取引先から、T社さんに任せてから、うちの会社の雰囲気もよくなった、と言っていただけることが増えた」と代表取締役のS氏は目を細めた。
 父が創業した会社に大学を卒業してすぐに入社し、1999年に経営を引き継いだS氏。手間と人手がかかる取引先の物流部門を、丸ごと請け負う事業を拡大させ、会社を成長させた。「人財育成」に特に力を入れ、風通しのいい組織風土づくりをいつも意識して経営にあたってきたという。取引先の物流拠点などに営業所を置き、その懐に入って仕事をする。社内外とのコミュニケーション、連携をしっかりととらないと成り立たない。それだけに「人財こそが当社の強み」と胸を張っている。
 中小企業大学校経営後継者研修の一期生。社員のスキルアップに同校を積極的に活用し、社内でも積極的に勉強会を開催している。「AISカード」の取り組みは、入社5~10年の若手・中堅社員が組織するプロジェクトチーム「拓未会(たくみかい)」の提案から始まったそうだ。人財育成に積極的なS氏の経営姿勢が社員たちにも浸透している表れでもある。
 社員が「認め合う」企業風土づくりはここ数年、関心が高まっており、大手企業もさまざまな形で取り組んでいる。社員同士が互いに認め合うことで、社員間の連帯感を強め、社員一人ひとりのモチベーションがアップする。ひいては、社員の会社に対する満足度の向上や顧客満足度を高めることにつながる。T社の取り組みからもその効果がみてとれる。

【 コメント 】

 社員とのコミュニケーションに課題を感じていたり、社内の雰囲気に問題を感じていたりしている経営者は少なくないでしょう。

 日本人は「ストレートな感情表現が苦手」と言われることが多いですが、まずは「互いを認め合う」企業風土づくりにチャレンジしてみてはどうでしょいうか。

 ぎこちなかった会社の歯車が突然、スムーズに回るようになるかもしれませんね。

  出典: e-中小企業ネットマガジン掲載承認規定に基づき作成

 
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【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】 「捨てる」「やらない」で業績拡大 3208-4814

2024-08-14 12:03:00 | 【経営】 成功企業・元気な会社

■【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】  「捨てる」「やらない」で業績拡大 3208-4814

 経営コンサルタントを半世紀にわたってやってきた経験から、すこしでも皆様のご参考になればとお届けしています。

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■   「捨てる」「やらない」で業績拡大 3208-4814
 コールセンターと、石鹸の製造・販売という全く異なる二つの事業を手がけ、コロナ禍にもかかわらず業績を伸ばしている企業が沖縄にある。K社(那覇市)がそれで、コロナ禍前の2020年3月期に7億3000万円だった売上高は、コロナ禍後も伸長し、売上高が倍増しています。

 創業は2011年4月。4人の仲間によりアパートの一室で起業した。社長のOさんは「東日本大震災の発生直後であり、リスク分散の観点から沖縄へのコールセンター開設意欲は高かった」と振り返る。ユニークなのは、事業開始に当たって「捨てる」を経営方針の一つに据えたことである。

 コールセンター業では通常、かかってきた電話に対してオペレーターが対応した割合である「応答率」で評価する。ところがK社では、顧客からの「ありがとう率」で評価する。一般的なコールセンターの通話時間は3分程度だが、敢えて5~10分以上の長電話を目指す。その代わりに、効率性や24時間対応などは捨てた。この結果、1年半後に「ありがとう率」は25%から70%に向上した。

 また友人経営者の会社の取り組みをヒントに、社員同士がウェブ上でほめ合うツールを独自に開発・導入した。「ありがとう率の高い人を分析したら、実は『ありがとう』を数多く言っている人だった」とOさん。コールセンターは一般的に、インカムを付けた社員が顧客対応に専念し、隣同士でもまったく会話がないというイメージが付きまとう。こうした施策を進めることで、離職率を下げることを狙った。2016年には新本社屋建設と同時に社員食堂を併設させ、18年には保育園も開設。この結果、実際に離職率は大きく下がった。

 16年には石鹸に独自ブランドをつけて物販事業に進出。当初はコールセンター業務を担当していた産休明けや介護をしながら働く女性社員向けの職場を作り出すことが目的だった。子育て中の女性が販売するのにふさわしいものとして、石鹸が浮かび、石鹸職人を探して共同で開発した。熱を加えず時間をかけてゆっくり冷やし固める「枠練り」という手法を採用し、肌に優しく、家族で使える、沖縄らしい石鹸が出来上がった。

 その際、「やらない」ことを決めた。適正な価格で石鹸職人や社員に対価を支払うため「安売りはしない」、作り手の思いや商品の良さを直接伝えるため「卸売りはしない」、そして「広告は打たない」「品質に妥協しない」である。結果として石鹸1個が2000円(税抜き)と高額な設定になったものの、その価値は評価され、現在の店舗数は沖縄県内に12拠点、県外は大阪が3拠点、名古屋・東京は各1拠点の計5拠点まで拡大した。

 K社は今後2年間で、さらに10店舗程度の出店を計画している。「このうち2店舗は台湾と米ニューヨークに出店したい」としており、将来的には欧州やアフリカへの進出も狙う。Oさんは「沖縄の中小企業が世界で活躍するきっかけになれたら最高だ」と力を込める。

【 コメント 】

 東京一極集中の昨今、ICTの時代、業種・業界によっては、企業の所在地の価値はあまり重要ではありません。
 Oさんは、全国区的に、特別に強い産業があるわけではない沖縄という地で、時代の現状を認識し、コールセンター業務という分野に着目しました。企業の成功例として、どの分野にドメインを置くかが大きな要因であることが多いです。
 Oさんは、沖縄の実状を見て、起業をし、コールセンターという分野に進出しました。
 この業界では一般的には応答率で評価されますが、K社では「ありがとう率」という、これまでの常識ではない指標でビジネスモデルを展開しました。これが功を奏したのです。
 そのビジネスを継続するにあたり、産休明けや介護をしながら働く女性社員向けの職場を作り出すという、社員重視の考えから、新たな商品ラインを構築しました。これまでのサービス業とは異なる、石鹸という商品で、製造・物販業の業界参入をしたのです。ここでも、前者のビジネスで培ってきた「ありがとう」重視の姿勢を貫き、コミュニケーションを重視して成功しています。
 異業種参入は失敗することが多いですが、経営理念をもとに、新規ビジネスでも成功した例と言えます。

  出典: e-中小企業ネットマガジン掲載承認規定に基づき作成

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【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】  真の原因を探り出す「コミュニケーション力」 3201-4807

2024-08-07 12:03:00 | 【経営】 成功企業・元気な会社

■【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】  真の原因を探り出す「コミュニケーション力」 3201-4807

 経営コンサルタントを半世紀にわたってやってきた経験から、すこしでも皆様のご参考になればとお届けしています。

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■   真の原因を探り出す「コミュニケーション力」 3201-4807
 家族4人で経営する釣具店での出来事だった。かつて息子がルアーや工具でオリジナルブランドを開発し、売り上げ拡大を果たしたものの、その後は新しい商品開発がままならず、息子は連日、深夜までパソコンの前でキーボードをカタカタ。その様子をうかがう父親は「夜遅くまでパソコンをのぞき込んで何をやっているんだ」と思いつつも、声をかけることはなかった。親子間の意思疎通がないまま、時間だけが過ぎていき、オリジナルブランドの開発・販売というビジネスモデルは崩壊しつつあった…。

 そこに登場したのが商工会議所の経営指導員として長年の経験を有するK氏。K氏は、父親と息子、別々にヒアリングを行った。その結果、過去に経営手法を巡って親子間に溝が生じ、それ以来、意思疎通が図れていないことがわかった。その一方で、両者とも心の中ではお互いを理解していることも把握できた。同店の本質的な経営課題が親子間のコミュニケーション不足だと認識したK氏は、意思疎通の機会として食事会の提案を行った。

 また、息子の深夜の行動はネット注文について入金確認や発送開始メールなどを行っていたもので、そうした対応に忙殺されたために新商品の開発に手が回らなくなっていたのが実情だった。そこで商品の開発強化に専念できる時間を確保できるよう、デジタル対応力のあるアルバイトを採用し、ネット注文の対応を任せた。こうした課題解決策により同店の年商は1.8倍になったという。

 K氏の提案は、周囲がアッと驚くような離れ業ではなく、食事会とアルバイトの採用という、ごく普通のものだった。そうしたありふれた、かつ効果的な解決策を導き出したのはK氏の「コミュニケーション力」だった。コミュニケーション力とは「事業者のことを理解し、どんな情報が必要なのか、本質的な課題を引き出すために経営者とどう関わればいいのかを見極めるスキル」とK氏は言う。表面的な問題だけ見て補助金など一時しのぎの支援を提案するのではなく、コミュケーション力により問題の真の原因を探り出し、その課題を解決していくことが重要だというのだ。

 こうした手法は課題設定型の伴走支援と呼ばれ、中小企業庁が幅広い実施を呼び掛けている。K氏も2021年に埼玉県商工会議所連合会の初代広域指導員に就任し、商工会議所・商工会の経営指導員のスキル向上に取り組んでいる。K氏や先進事例となる商工会議所・商工会の取り組みは関東経産局と中小機構運営サイト「J-Net21」とが連携して同サイトで順次紹介している。

【 コメント 】

 経営者・管理職の多くは、コンサルタント・士業の利用ということに意外と関心が薄いようです。と、いうよりも、コンサルタント・士業が、どのような問題・課題に、どの様に支援してくれるのかをご存知ないことから、積極的に、コンサルタント・士業活用に取り組んでいないのが現状ではないでしょうか。

 ここでご紹介した企業では、業績が伸びない原因がコミュニケーション不足という、単純な問題でした。しかし、それに気がつかないでいるのです。複雑な問題であっても、その渦中にいますと、寺社の問題点に気がつかないことが多いのですし。
 第三者の眼というのは、「岡目八目」と言われるように、意外と核心を突いていることが多いのです。
 この事例をもとに、経営者・管理職だけではなく、コンサルタント・士業の先生方も自分達のあり方を考えてみては如何でしょうか。

  出典: e-中小企業ネットマガジン

 

 
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■■ 成功企業・元気な会社の紹介 2リットルの水で洗車~Quick Wash~

2023-11-03 07:26:54 | 【経営】 成功企業・元気な会社

■■ 成功企業・元気な会社の紹介 2リットルの水で洗車

【元気な企業紹介・成功企業の紹介】は、毎回拍手をいただいています。

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 2リットルの水で洗車 ~Quick Wash

 

マイカー保有者にとって “洗車”は面倒な仕事だ。が、きれい好きな日本人は、汚れた自家用車に乗ることには抵抗がある。このようなドライバーのニーズを確実にキャッチしたのが、クイックウォッシュ(株)(福岡市:高武純一社長)の洗車サービス「Quick Wash」だ。ユーザーがショッピングを楽しんでいる間に駐車場で洗車作業が完了。「時間」と「手間」をQuick Washが完全に代行する。

 

高武社長は、元々、建設業会社(水道工事)の2代目だった。厳しい状況の中で、このままではヴィジョンが持てないと、28歳で単身渡米。生活に密着した事業をやりたいと、一般家庭に寄宿しながらビジネスリサーチを行い、そこで、ショッピングセンターでの洗車サービスに出会った。

 

帰国後、洗車業界に勤務しながら200か所のガソリンスタンドをリサーチ。平成208月には洗車サービス業のクイックウォッシュ(株)を立ち上げた。かつての海外視察で、『水』の確保に追われる子供たちを目の当たりにした経験から、水を使わないで洗車ができないか?と、洗剤の開発も手がけ、化粧品からヒントを得た浸透性の良い高品質の洗剤(特許出願中)を開発した。

 

洗車で使用する水の量はおよそ200リットルという。Quick Washは、この洗剤により1台わずか2リットルの水で洗車を完了。水の消費量を100分の1に抑えただけでなく、100%天然素材由来の洗浄溶剤であることから、環境にも優しい洗車を実現させた。

 

平成22年からフランチャイズ事業を開始し、現在、11のFC店舗で洗車サービスを展開中である。平成236月には、「平成23年度九州アントレプレナー(起業家)大賞」も受賞した。環境に優しく、水資源の節約にも貢献することから、海外からのオファーも多いという。

 

高武社長の企業ビジョンは、「世界的企業となって、世界的貢献を行い、世界的歴史に残る企業となること」と壮大である。Quick Washは現在、洗車1台につき10円を、水環境事業基金への協力金として拠出しているという。企業規模の拡大は、利益を増やすための「目的」ではなく、新しい水の文化を創るための「手段」と高武社長は言い切る。

 

  資料出典: J-NET21

 

 

 

 

 


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■■【成功企業・元気な会社】 雨の日でもバイクやスクータに濡れずに乗れる

2023-10-30 07:17:49 | 【経営】 成功企業・元気な会社

■■【成功企業・元気な会社】 雨の日でもバイクやスクータに濡れずに乗れる 17929

 ちょっとした情報が、私達の智慧となることは多々あります。その情報が知恵の源泉であることに気づかないで機会損失を起こしていることは、それ以上に多いのかもしれません。

 成功している企業や元気な会社、ユニークな企業等々を、独断と偏見でもって選んで紹介しています。

 

■ 雨の日でもバイクに乗れる

 私は、若い頃、バイクに乗って処々を旅行していました。バイクといいましても50 cc、しかも中古のバイクで、今やそのメーカーもとっくの昔に消滅してしまっています。

 関東一円、地図に掲載されているお寺や観光地などを、気が向けば訪れる貧乏旅行でした。高校を卒業した年の春休み、思い切って能登半島まで行ってみようと決意し、約一週間の大まかなスケジュールを決めて出かけました。

 途中、強い雨に何度か遭っているうちに、エンジンに雨水が染みこみ、力が出ません。今では、考えられないことです。

 その度に、エンジンをクリーニングし、また走り出すと言うことの繰り返しでした。その時、つくづく思ったのが、バイクに雨よけがあれば助かるのにと言うことです。フードくらいは当時もありましたが、今日のように運転者の前面から頭上まで覆うようなフードはありませんでした。

 その経験がありますので、株式会社トリーテクノとの出会いは、「これはいける!」と確信しました。バイクやスクータにカスタムメイドの屋根がつくのです。

 

 もちろんバイクに雨よけ屋根をオプションで付けられることは私も知っています。しかし、どのメーカーのものも結構な価格です。しかも、どの車種にも取り付けられるというわけではありません。

 同社の商品は、カスタムメイドでありながら、市販品よりやすいだけではなく、例えばイルミネーションを付けることもできます。イルミネーションを付けたバイクが街中を走り回れば、話題になるでしょう。想定外の宣伝効果を引き出すことができます。

 2014年9月30日には、国の「平成25年度補正 中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業」において、「カスタマイズした屋根付きスクータへの変身化プロジェクト」が採択され、その成果をもとにスクータ用屋根装置の開発に拍車がかかりました。

 同社の鳥海社長は、公立大学の修士課程を修了後、某大手総合電機メーカーに入社し、研究畑や関連企業などの道を歩んできました。ロンドン大学に留学したり、台湾などでの海外経験も豊富であったりします。

 その経験が、現在のビジネスでも滲み出ています。「ローテク商品なのでまねされやすい」ということで、海外に意匠登録をするなど、地道な経営姿勢が、カスタムメイドの商品にも活かされているように感じます。

 本社は横浜ですが、なぜか工場や倉庫は東京の西部福生(ふっさ)市にあります。その理由を問うたときに、人間としての魅力を感じました。

 若い頃お父さんを亡くされ、今は福生のお母さんがいらっしゃいます。そばにいてあげたいという気持ちからのようです。今は、横浜と福生の間を行き来しているそうです。

 私が「なぜ、工場を本社から離れたところに置いているのですか?」と訊いたときのことです。「工場と言えるようなところではなく、”作業場”です」とまず答えてくれました。

「ドラえもんの“ひみつ道具”のように、身の回りにある道具や器具へ“こんなこといいな”と思われる機能の追加が“できたらいいな”と思っています」とニコニコしながら話していました。

 経営者としての真面目な姿勢、謙虚さを持った人と好感できました。

 まだまだミニチュアのベンチャー企業ですが、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営するウェブ展示会「新価値創造(WEB展示会)」に出展されています。2017年12月には、東京ビッグサイトの展示会に出展しますし、できれば今後もいろいろな展示会に出展したいと、前向きな言葉も出てきました。人なつこさと真面目な姿勢が非常に印象的でした。

  同社ウェブサイト

  http://www.tory.co.jp/

 

■■【追加情報】

 鳥海社長より、出品予定の展示会情報を戴きましたので、挿入しておきます。

◇ ビックサイトの展示会

 「中小企業新ものづくり・新サービス展」

  主催 全国中小企業団体中央会

  日程  12月6日(水)~12月8日(金)

  場所  ビックサイト 東7ホール  I13ブース

 

◇ 横浜展示会

 「テクニカルショウヨコハマ2018」 

  主催 神奈川県、横浜市

  日程 2018年2月7日(水)~9日(金)

  場所 パシフィコ横浜展示ホールA・B・C

 

■■【成功企業・元気な会社】バックナンバー

  http://blog.goo.ne.jp/keieishi17/c/31ee9b6d58d5a28e5007f0f350ef1a8a

 

 
 コンサルタントへの依頼、講師捜しに関する情報

 弊著、経営者・管理職のための「発展し続ける企業の“秘密”の道」(グロマコン出版、A5サイズ約60ページ)は1,000円(税/送料込み)でおわけしています。  ご購入案内 ←クリック


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■■ 成功企業・元気な会社の紹介 特殊用途を狙う 17a19

2023-10-14 12:03:00 | 【経営】 成功企業・元気な会社

■■ 成功企業・元気な会社の紹介 特殊用途を狙う 17a19

【元気な企業紹介・成功企業の紹介】は、毎回拍手をいただいています。

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■ 特殊用途を狙う

 

 日昭工業(株)(東京・青梅市)がトランス製造を始めたのは昭和42年。いわゆる「ガチャ万」と呼ばれる、機織り屋がガチャンと一織りするたびに万円単位の額が儲かると例えられるような、繊維の好景気が終わりを告げた時代だ。先代社長は織物からトランスへの転身を決断した。高度成長期で電化が進み、電源回路に必ず使われるトランスの需要が拡大していたのを見越した判断だった。

 

 久保寛一社長は今、鉄道車両向けの特殊トランス製造を主力に、産業機械や電気設備など多品種少量のトランスに特化している。リーマンショック後の平成21年度は売り上げが半減したもののその後2年間は、新興国の交通インフラ整備の波に乗り順調に業績を伸ばす。

 

 トランスは装置の電力品質を決める重要部品。高電圧や高品質ニーズなど特殊用途は多い。だが機械でコイルを巻く汎用品と違って多品種少量品の生産自動化には手間がかかるため、大手企業は外注先を求めている。同社はここに的を絞った。「トランスを作れるのなら電源ユニットも、電源装置全体もできるだろう」と任される範囲は次第に広がった。

 

 「必要な技術が増えるたびに、とにかく必死で勉強した」。配線、電気設計を学び、現在ではトランス製造と電源装置の組み立てが2本柱に。少量品をほぼすべて請け負うようになったころ、主要取引先のトランスメーカーが倒産、電機メーカーと直接取引するようになる。自ら営業し、市場調査するようになり、高い技術力が求められる鉄道車両のトランスに注力することになる。

 

 同社製品の製造はほぼすべて、技術者が手作業で行う。だから「うちの資産は人材がすべて」とも。毎年社員一人当たり40万円を教育費として投資するほか、約60人の社員のうち12人を工場長候補として2週間おきに交代で工場長を経験させる。従業員全員の多能工化も進め部門間交流と頻繁なOJTを繰り返す。好調な経営を支える要因にこうした「人を育てる環境」も挙げられる。

 

  資料出典: J-NET21


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■【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】 安定感のある「三」と女性目線の「彩り」で発展を期待 1c08-3908

2023-09-05 12:03:00 | 【経営】 成功企業・元気な会社

■【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】 安定感のある「三」と女性目線の「彩り」で発展を期待 1c08-3908

 経営コンサルタントを半世紀にわたってやってきた経験から、すこしでも皆様のご参考になればとお届けしています。

 成功企業・元気な会社・頑張っている社長は、皆様から寄せられたり、私が支援したり、見聞したりした企業の事例を紹介していますが、お陰様で、毎回拍手をいただいています。

 また、あなたのクライアント・顧問先やお知り合いの会社で、ここで紹介したい企業・団体等がありましたら、是非ご連絡ください。

■ 安定感のある「三」と女性目線の「彩り」で発展を期待 1c08-3908

 清流・仁淀川(によどがわ)の水の恵みを受けて栄えた1000年の紙の町・高知県土佐市に本社を置くS社は、土佐和紙の生産技術を活用した不織布を用いて、美容や調理、生活関連の商品の企画開発・販売を行っている。同社の商品は、「高知家のいい物・おいしい物発見コンクール」非食品部門の大賞や高知県地場産業大賞の奨励賞を受賞するなど、その品質の高さには定評がある。最近では、浅尾沈下橋(あそおちんかばし)など仁淀川流域が舞台として数多く登場するアニメ映画「竜とそばかすの姫」とのタイアップ商品を販売し、話題となった。

 同社は、不織布の製造・開発を手掛ける三和製紙を中心とした企業グループの一員である。他のグループ企業には、不織布を使用した化粧品や台所用品、介護用品などを製造・販売する三昭紙業や不織布の原料となる楮(こうぞ)を栽培するクリーンアグリなどがある。いずれも土佐市を拠点とし、土佐和紙の伝統を受け継いで活用しているのだが、社名を並べてみると、ひとつ気づいたことがある。「三」の付く社名が多いのだ。

 三彩の代表取締役である鈴木佐知代氏によると、「数字の3は安定感のある数字として、グループ企業の社名でよく用いている」という。そう言われてみると、「三」を使った語句には、三種の神器や徳川御三家、三位一体など、安定した感じを与えるものが多い。さらに、日本三景(松島、天橋立、宮島)や世界三大美女(クレオパトラ、楊貴妃、小野小町)、日本三大祭り(神田祭、祇園祭、天神祭)など、他にも候補がありそうだが、3つでまとめるとなぜかおさまりがいい。一説によると、「三」の代表格ともいえる三角形が安定した構造で、橋や建物の梁の部分によく使われており、こうしたことから安定感のある数字とのイメージが定着したという。

 話を三彩に戻すと、同社は「三」に、女性だけの会社で彩りを添えるという意味で「彩」を付けて社名にしたという。2012年の創業時は鈴木氏を含めて女性2人、現在も女性4人で仕事をしている。その社名のとおり、土佐和紙の安定した技術と品質に、女性ならではの目線で新しい工夫を施して商品を開発している。販路の拡大や情報発信力の強化、ブランドコンセプトの明確化など多くの課題を抱えているが、安定感と彩りで今後のいっそうの発展を期待したい。

  出典: e-中小企業ネットマガジン掲載承認規定に基づき作成

 

 
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■【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】 32歳のリーダーが率いる子供用品チェーン 1c01

2023-08-27 12:03:00 | 【経営】 成功企業・元気な会社

■【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】 32歳のリーダーが率いる子供用品チェーン 1c01

 経営コンサルタントを半世紀にわたってやってきた経験から、すこしでも皆様のご参考になればとお届けしています。

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■ 32歳のリーダーが率いる子供用品チェーン 1c01 

 全国に1020店舗を展開し、乳幼児の衣服から紙オムツ、粉ミルクまで子供用品の豊富な品ぞろえと低価格が売り物の西松屋チェーン(兵庫県姫路市)。小さい子供を持つ家の人が、車など何らかの交通手段で、長くても20分か30分で買い物に行ける場所に店舗を構えているので、白ウサギの「ミミちゃん」の看板を見知っている人は多いかもしれない。

 同社チェーン店の通路は広い。通路が広ければ買い物客同士がベビーカーですれ違ってもスムーズに移動できるし、客がいても商品搬入の邪魔にならない。3密回避が求められるコロナ感染対策にも役立つ。衣類はハンガーで吊り下げてあり、サイズやデザインが一目でわかる。ハンガー吊り下げ式の衣類なら、たたみ直して整理する必要がない。従業員は2、3人しかいない。低コストで運営が可能だからだ。

 代表取締役社長COO(最高執行責任者)は2021年8月21日付けで専務執行役員社長補佐室長から昇格した大村浩一さん。前社長の長男で1987年生まれの32歳だ。1956年、乳幼児の衣類などを販売する「赤ちゃんの西松屋」を創業した祖父、大手鉄鋼メーカーから転身し製造業のノウハウで効率性を追求し業容を拡大した父の跡を継いだ3代目は、東大法を卒業後、みずほ銀行に入行したが、父に請われて2014年に入社した。

 同社の20年2月期決算は25期連続増収を実現したものの減益だった。利益が出なかった原因は同業他社との競争激化、売れ残り衣料品の「値下げロス」、過剰仕入れによる在庫増だ。新社長はそれまで一部の担当者が判断していた仕入れ量を会社全体で一元管理し、在庫状況を現場から経営陣まで共有する仕組みを導入した。ボトムアップだった仕入れをトップダウンに180度転換したことで、売れ残り処分による損失は4割以上縮小した。

 次の目標は、11月11日正午にオープンした自社EC「西松屋公式オンラインストア」の拡充だ。コロナ禍でオンラインショッピング市場は伸びている。プライベートブランド「エルフィンドール(ELFINDOLL) 」や「スマートエンジェル(SmartAngel)」をはじめとするベビーグッズを中心に揃え、チラシ掲載のセール商品なども取り扱い、売り上げ増を図る。

 近い将来は店舗を1500店に増やし、コロナ収束後は海外出店も視野に入れている。「私より若い社長はITベンチャー企業などにもたくさんいる。デジタル化が進んで世の中の変化がどんどん激しくなるなか、若い世代がけん引していくことが大事。ものおじせずにチャレンジしていきたい」と話す。若きリーダーのかじ取りに注目だ。

 

  出典: e-中小企業ネットマガジン掲載承認規定に基づき作成

 

 
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■【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】 かき氷に続け、ウイルス不活性化に有効な柿の葉関連商品 1428

2023-06-23 12:03:00 | 【経営】 成功企業・元気な会社

■【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】 かき氷に続け、ウイルス不活性化に有効な柿の葉関連商品 1428

 経営コンサルタントを半世紀にわたってやってきた経験から、すこしでも皆様のご参考になればとお届けしています。

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■ かき氷に続け、ウイルス不活性化に有効な柿の葉関連商品 1428

 2015年2月に合同会社として創業した奈良市内のカフェ「kakigoriほうせき箱」の売り物は「エスプーマ(ESPUMA)かき氷」だ。エスプーマは炭酸ガスや亜酸化窒素で食材をムースのような泡状にするスペイン生まれの調理法で、フワフワに削ったかき氷の上に搾りたてのミルクや大和茶など地元産の食材で調理した泡をトッピングする。クリーム系と異なる軽い食感で、インパクトある見た目とやさしい味が両立できる。

 バレンタインやクリスマスなど年間イベントに合わせ、季節の食材を豊富に盛り込んだメニューを開発し、1000円から1300円で提供。行列ができる人気で、開店前の午前7時から入店整理券300枚を配布し、コロナ前は年間7万食、約7900万円を売り上げていた。かき氷の他にも奈良県内の耕作放棄地を借りて柿葉を生産し、お茶や入浴剤など関連商品の開発販売する事業に着手。20年6月に柿の葉専門店「sousuke」という屋号で新規出店も予定していた。

 ところがコロナ緊急事態宣言で20年4月の売り上げは前年比8割減。宣言解除後の5月、6月も同3割減、ハイシーズンの7月8月も1割減となった。柿の葉専門店は今後の状況が読めず出店を断念。36席ある店舗の席数を30に減らし、昨年4月後半から営業時間を短縮した。あわせて自社のネットショップを拡充し、シロップや柿の葉商品、かき氷グッズなどの販売を強化。さらに人との接触や密回避のため、昨年5月から開店前の整理券配布を止め、ネットでの予約制にした。

 すると、並ばないと食べられないと思っていた客がネット予約で来店。時間指定のため密を作ることなくスムーズに入店できると集客は上々。売上が上向いた。柿の葉専門店出店のために準備していた新商品やメニューを活かし、午後6時から8時の2時間だけ、柿の葉を使ったかき氷を週替わりで提供することも始めた。新しいコンセプトと夕方以降の営業で新規客を獲得、ほぼ満席状態で売上アップに貢献している。

 今後は物販やネット販売を強化する。複数の大学が柿渋(カキタンニン)がコロナウイルスの不活性化に有効だという研究結果を発表しており、柿渋や柿の葉を使った商品開発に力を入れる。第1弾として柿の葉と柿渋を使った飴を開発、昨年12月末に医薬品卸グループと契約し、店舗とオンラインで全国販売も始まった。21年4月にはウイルス対策につながるマウススプレーの販売にも着手している。いずれは柿の葉を地元奈良の特産物に育てたいそうだ。

  出典: e-中小企業ネットマガジン掲載承認規定に基づき作成

 
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■【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】 レンタルバイクのマイクロツーリズムをアピール 1414

2023-06-16 12:03:00 | 【経営】 成功企業・元気な会社

■【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】 レンタルバイクのマイクロツーリズムをアピール 1414

 経営コンサルタントを半世紀にわたってやってきた経験から、すこしでも皆様のご参考になればとお届けしています。

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■ レンタルバイクのマイクロツーリズムをアピール 1414

 株式会社Full Throttle(フルスロットル、香川県観音寺市)は二輪車の販売・整備や四輪車の車検整備を行う従業員4人の企業だ。2014年に友枝正千(まさち)氏が先代社長で実父の茂弘氏から事業承継した。

 同社の近隣には、潮だまりの水面が鏡状になり、ボリビアのウユニ塩湖のような写真が撮れる三豊市の「父母ヶ浜(ちちぶがはま)」や、山頂に位置する本宮から瀬戸内海が一望できる高屋神社の「天空の鳥居」など近年インスタグラムなどで話題を集める絶景の場所がある。県内外から観光客が急増していたが、空港や鉄道の最寄り駅から目的地への便が悪いのが難点だった。

 そこで友枝社長は3年前から観光客向けレンタルバイク事業に着手。排気量50ccの原動機付き自転車を中心に10台弱のバイクを高松空港や高松丸亀町商店街などに配備、ヘルメットや保険付きでレンタル料金は1時間500円から、別料金で県内の乗り捨てやバイクデリバリーも可能にした。

 レンタルバイク事業は毎月平均20万円の売り上げを計上し、順調な出足をみせていたが、2020年4月の新型コロナ感染症による緊急事態宣言の発令にともなう移動自粛で国外はもとより県外からの観光客が激減。レンタルバイクの顧客が地域内で回遊することによる地域住民への感染不安もあり、積極的なPRも控えなければならない状況になってしまった。
 友枝社長は思い切ってレンタルバイクのターゲットを県内客に変更した。かつて通勤や通学、さらには余暇時間にもツーリングなどでバイクを利用したことがある40~50歳代の県内のリターンライダーに、地元や近隣での宿泊観光、日帰り観光などのマイクロツーリズムをアピールしようという作戦だ。コロナ禍の巣ごもりで溜まったストレスを発散するためのアウトドア需要もあるだろうと判断した。

 国の持続化給付金などを使って、排気量650cc、900cc級の大型二輪の新型モデルをレンタル車両に投入、レンタル台数を約20台に拡充した。2020年10月から11月に実施された国の「Go Toトラベル」キャンペーンで回復した観光需要もあり、「リターンライダー」中心のレンタルバイク事業は2020年8月から2021年2月までに約180万円の売上を計上。新規で二輪車購入を検討する客が練習用にレンタルを利用するなど将来の見込み顧客も発生した。

 二輪車販売は、若年齢層の二輪車離れやメーカーの販売網見直しなどで売り上げが減少している。友枝社長は今後もレンタルバイク事業を拡大。地域内の電車やバス会社、観光協会・主要観光地などとの連携を強化して体制の整備を図り、コロナ収束後に備えるつもりだ。

  出典: e-中小企業ネットマガジン掲載承認規定に基づき作成

 
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■【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】110 巣ごもり需要でユニークなトレーニング器具が好調 1331-Bc19

2021-12-19 14:48:02 | 【経営】 成功企業・元気な会社

■【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】110 巣ごもり需要でユニークなトレーニング器具が好調 1331-Bc19

 経営コンサルタントを40年余やってきた経験から、すこしでも皆様のご参考になればとお届けしています。

 成功企業・元気な会社・頑張っている社長】は、皆様から寄せられたり、私が支援したり、見聞したりした企業の事例を紹介していますが、お陰様で、毎回拍手をいただいています。

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■ 巣ごもり需要でユニークなトレーニング器具が好調 1331-Bc19

 江戸時代の鉄砲製造を起源とする鋳物のまち三重県桑名市で、ユニークな鋳物製品を手掛けているのは、1950年に創業した有限会社伊藤鉉鋳工所だ。キューポラという煙突のような溶鉱炉で鉄を溶かし、手作業で砂型を作る「手込み造型」で、小ロット多品種・短納期の注文に対応している。

 鋳物業界には、1キロいくらという重さで取引する慣行がある。一般的な工業用鋳物製品の収益性は低いままだ。同社は、小ロット多品種・短納期への対応力を強みとして取引先と粘り強く交渉。契約などの諸条件を適正化してきた。こうした地道な経営努力を積み重ねている最中、新型コロナウイルスに見舞われた。主力としている工業部品が大きなダメージを受け、売り上げは前年比で半減するまでに落ち込んだ。

 だが、同社は未知のウイルスにも負けない商材を持っていた。契約条件の適正化をステップに、さらに成長するため、トレーニング用のウエイト器具「ケトルベル」を2016年から製造・販売していた。鋳物の短所とされる「重さ」を活かした、高収益が期待できる商品だ。

 この「ワンハンドジム」と呼ばれるほど在宅トレーニングに適しているケトルベルの売り上げが、新型コロナによる巣ごもり需要で急増した。19年の1年間で285個だった通販サイトの売り上げは、20年4月の1カ月だけで200個以上に跳ね上がった。年間では、前年実績の3倍以上となる900個を販売した。

 ケトルベルは、4kgから48kgの間に4kg刻みで12種類のラインナップを展開している。当初の10種類から、36キロと44キロの2種を追加し、さらに売れ筋の16kgと24kgの鋳型を増やした。競合製品より重量タイプを豊富に取り揃え、幅広いニーズに対応している。ラインナップ拡充に伴う増産体制整備には、三重県よろず支援拠点くわなサテライトと桑名商工会議所の支援を受け、コロナ対応の持続化補助金と三重県の補助金を活用した。

 同社の代表取締役は、11年に3代目を継いだ伊藤允一氏。トレーニングとは無縁だったが、ケトルベルの商品化と同時に、自らケトルベルを使ったトレーニングで肉体を改造した。海外に出向いてインストラクター研修を受け、資格も取得した。トレーニング方法は、以前に別の補助金を活用して車庫を改装したトレーニングジムで指導している。並行して、効果的な全身運動が気軽にできるケトルベルのトレーニング方法をSNSで発信し、普及に努めている。

 「ケトルベルを売るだけでなく、トレーニングで健康な体をつくるという文化を根付かせ、社会に本当に必要とされる会社にする」とビジョンを熱く語る伊藤社長。「ケトルベル事業を通じてファンを増やし、県の伝統産業の一つである『くわな鋳物』の知名度向上につなげたい」と、地域経済社会への貢献にも余念がない。

  出典: e-中小企業ネットマガジン掲載承認規定に基づき作成

 

 
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■【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】110 巣ごもり需要でユニークなトレーニング器具が好調 1331-Bc19

2021-12-19 12:03:00 | 【経営】 成功企業・元気な会社

■【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】110 巣ごもり需要でユニークなトレーニング器具が好調 1331-Bc19

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■ 巣ごもり需要でユニークなトレーニング器具が好調 1331-Bc19

 江戸時代の鉄砲製造を起源とする鋳物のまち三重県桑名市で、ユニークな鋳物製品を手掛けているのは、1950年に創業した有限会社伊藤鉉鋳工所だ。キューポラという煙突のような溶鉱炉で鉄を溶かし、手作業で砂型を作る「手込み造型」で、小ロット多品種・短納期の注文に対応している。

 鋳物業界には、1キロいくらという重さで取引する慣行がある。一般的な工業用鋳物製品の収益性は低いままだ。同社は、小ロット多品種・短納期への対応力を強みとして取引先と粘り強く交渉。契約などの諸条件を適正化してきた。こうした地道な経営努力を積み重ねている最中、新型コロナウイルスに見舞われた。主力としている工業部品が大きなダメージを受け、売り上げは前年比で半減するまでに落ち込んだ。

 だが、同社は未知のウイルスにも負けない商材を持っていた。契約条件の適正化をステップに、さらに成長するため、トレーニング用のウエイト器具「ケトルベル」を2016年から製造・販売していた。鋳物の短所とされる「重さ」を活かした、高収益が期待できる商品だ。

 この「ワンハンドジム」と呼ばれるほど在宅トレーニングに適しているケトルベルの売り上げが、新型コロナによる巣ごもり需要で急増した。19年の1年間で285個だった通販サイトの売り上げは、20年4月の1カ月だけで200個以上に跳ね上がった。年間では、前年実績の3倍以上となる900個を販売した。

 ケトルベルは、4kgから48kgの間に4kg刻みで12種類のラインナップを展開している。当初の10種類から、36キロと44キロの2種を追加し、さらに売れ筋の16kgと24kgの鋳型を増やした。競合製品より重量タイプを豊富に取り揃え、幅広いニーズに対応している。ラインナップ拡充に伴う増産体制整備には、三重県よろず支援拠点くわなサテライトと桑名商工会議所の支援を受け、コロナ対応の持続化補助金と三重県の補助金を活用した。

 同社の代表取締役は、11年に3代目を継いだ伊藤允一氏。トレーニングとは無縁だったが、ケトルベルの商品化と同時に、自らケトルベルを使ったトレーニングで肉体を改造した。海外に出向いてインストラクター研修を受け、資格も取得した。トレーニング方法は、以前に別の補助金を活用して車庫を改装したトレーニングジムで指導している。並行して、効果的な全身運動が気軽にできるケトルベルのトレーニング方法をSNSで発信し、普及に努めている。

 「ケトルベルを売るだけでなく、トレーニングで健康な体をつくるという文化を根付かせ、社会に本当に必要とされる会社にする」とビジョンを熱く語る伊藤社長。「ケトルベル事業を通じてファンを増やし、県の伝統産業の一つである『くわな鋳物』の知名度向上につなげたい」と、地域経済社会への貢献にも余念がない。

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■【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】109 西陣織の美しさを世界に広めたい 1324

2021-12-18 10:31:22 | 【経営】 成功企業・元気な会社

■【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】109 西陣織の美しさを世界に広めたい 1324

 経営コンサルタントを40年余やってきた経験から、すこしでも皆様のご参考になればとお届けしています。

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■ 西陣織の美しさを世界に広めたい 1324


 岡本織物(京都府)は西陣織の正絹金襴の製造・販売会社だ。8人の従業員全員が親族で職人の家内制手工業で、明治期に現社長の曽祖父が職人として西陣織を始め、1988(昭和63)年に株式会社にした。製品の西陣織金襴は寺社仏閣で宝物を飾る布やお坊さんの袈裟などに使われているが、自社オンラインショップで西陣織のマスクや布地、小物も販売している。

 新型コロナ感染症の影響は同社でも大きかった。2020年春以降、得意先で予定されていた法要が無くなるなど注文が大幅に変更となってしまったのだ。ピンチだったが、政府が「アベノマスク」を配るというニュースを見て、マスクの供給が少ない今がチャンスだと考え、同年年4月1日から西陣織マスクを製作した。自社のオンラインショップで販売したら月100万円ほどの売り上げになった。11月には大阪府の百貨店・大丸梅田店の催事にも初出店し、定価14,800円の最高級マスクを40枚近く売った。状況に応じて自在に製品を織れる職人の技術があったし、マスク製造から販売まで、社内の意思決定が迅速にできたからだ。

 「もちろん課題も少なくない」と同社の岡本圭司社長の妻で専務の岡本絵麻さんは話す。同社の職人は70代後半から40代、高齢化は否めない。後継者をどう育てるか。織機・道具の老朽化もある。社内で使っているパソコンも最新型ではないから、模様デザインソフトがパソコンのOSに対応できないなどの問題が発生する。商品の撮影はレンタルスタジオで行っているが、借料が高価すぎるのも悩みだ。商品は絹製品で水分や湿気に弱いから、台風や洪水など近年相次いでいる自然災害も脅威だ。こうした課題に対応が追い付いていないのが現状だ。

 それでも職人たちが何日もかけて織り出す文様は、吉祥文様あり雪の結晶ありと多種多様で、金糸銀糸を織り込んだ布は美しい色合いだ。岡本専務は「いまはコロナ禍もあり、西陣織のような質の高い良いモノづくりは地盤沈下しているようにみえるが、需要は確実にある」と見る。「インスタグラムなどSNS上で発信するなど上手くPRして、Web上で綺麗な画像をアップすれば注文数を増やすことができるだろう」と意気軒高だ。そのうえで「いまは国内市場だけだが、いずれは自社製品を世界の市場で販売したい」とも話す。日本が誇る伝統工芸品である西陣織金襴の美しさを、新しいデザインと商品群で世界に広めたいという夢があるからだ。その第一歩としてオンライン展示会の開催を準備中という。

 

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