経営トップ15訓 ”当たり前”が実行できる |
|||||
|
|||||
経営トップ 15訓 【附章1】 電通鬼十訓 「仕事は自ら作るべき」 |
|||||
「経営トップ 15訓」の最後までお付き合いくださりありがとうございました。 ただ、私は15訓に終わらず、附章1の「電通鬼十訓」と附章2「山岡鉄舟の名言」もまた座右の銘としています。それも是非皆様の参考にしていただきたいと思います。 ■ 電通鬼十訓 私どもの先人達は、私どもにたくさんの諺や名言を残してきてくれています。先人の知恵を拝借することにより、新しいアイディアが湧いたり、問題・課題解決のヒントを得られたり、元気や勇気をもらったりすることができます。 その一つとして、私は「電通鬼十訓」を挙げたいと考え、クライアントにもお勧めしてきました。 1.仕事は自ら作るべきで、与えられるべきではない 2.仕事は先手先手と働きかけていくことで、受け身でやるものではない 3.大きな仕事に取り組め、ちいさな仕事は己を小さくする 4.難しい仕事を狙え、そしてそれを成し遂げるところに進歩がある 5.取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは 6.周囲を引きずり回せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地の開きができる 7.計画を持て、長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして、正しい努力と希望が生まれる 8.自信を持て、自信がないから君の仕事には迫力も粘りもそして厚みすらない 9.頭は常に全回転、八方気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはその様なものだ 10.摩擦を恐れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと、君は卑屈未練となる ■ 電通鬼十訓を活かす 電通鬼十訓は、高等な人生訓と言うよりも、日常の仕事を進める上での訓戒集です。大変身近であり、しばしばその道をはずしがちな、「当たり前のこと」が書かれています。基本ですので、基本を重視し、その上に応用力を発揮すれば、業務の大半がスムーズに行くような気がします。 「仕事は自ら作るべきで、与えられるべきではない」から始まります。「昨今の社員(会員)は言われなければやらない。しかし、やり始めると立派と言えるほどの仕事をすることができる」ということをしばしば聞きます。この言葉が十訓の第一項に来ているのは、その反映でしょうか。 ビジネスパーソンは、先を読み、自分で仕事を創りだし、先手先手を打って取り組む、その仕事も経験を踏むほど、多少背伸びをして自分の実力の上をいく大きな、そして難易度の高いレベルで、かつ背伸びをしすぎないことが重要です。仕事には、障害がつきものです。 一旦取り組んだら、一途に、しかし周囲を見ながら取り組み、途中で諦めず、自信を持って進むと成功・達成に近づくでしょう。 1970年代から経営コンサルタントとしてやってきましたが、いまでもこの十訓は座右の銘から外せません。 |
|||||
電通鬼十訓 ”当たり前”が実行できる |
|||||
|
|||||
電通鬼十訓 【追補2】 戦略十訓 |
|||||
■■【電通鬼十訓プラスアルファ】 戦略十訓 「電通鬼十訓」は、電通4代目社長である吉田秀雄氏によるものです。電通鬼十訓は、10項で全てですが、営業パーソン育成の行動規範的な側面だけでは経営の全てをカバーできません。 電通では「鬼十訓」だけではなく「責任三カ条」「戦略十訓」など、私たちに参考になることも作り上げています。 ここでは後者の「戦略十訓」について考えてみたいと思います。 この「戦略十訓」はヴァンス・パッカード著『浪費をつくり出す人々』(1960年)をもとに、1970年代に電通PRで提唱されたものです。現在では、この十訓は使われていないそうですが、参考になると考えて、ここに御紹介いたします。 ■ 電通「戦略十訓」 「戦略十訓」は下記の10項より成り立っています。「戦略」といえるレベルではないような気がしますが、大きな示唆があります。近年では、これが電通では使われていないと聞いています。その辺に理由があるのかもしれませんし、時代にそぐわない面も窺えます。 1 もっと使わせろ 2 捨てさせろ 3 無駄使いさせろ 4 季節を忘れさせろ 5 贈り物をさせろ 6 組み合わせで買わせろ 7 きっかけを投じろ 8 流行遅れにさせろ 9 気安く買わせろ 10 混乱をつくり出せ ■ ものが溢れている時代の発想も再利用 「1.もっと使わせろ」というのは、ものが溢れた時代のことなのかもしれません。一方で、重点化をして、重点順位の高い事項には「もっと経営資源を使わせろ」ということなのかもしれません。 「2.捨てさせろ」というのもものの溢れた時代にしばしば言われたことです。しかし、情報が溢れている時代、ものが溢れているのも事実です。 有益な情報やツール等を使うためには、不要な情報やものを捨てることが、それらを活かすことになります。5Sは、捨てることを教えてくれています。 「3.無駄使いさせろ」もやはり、右肩上がりの時代に多く見られました。しかし「3ム」といわれる「ムリ・ムダ・ムラ」の一つである「ムダ」は無用なものとは言えません。 自動車のハンドルには「あそび」が必要です。それにより急な方向転換という乗り心地の悪さを防止しています。 経営者もある面では「ムダ」な存在なのかもしれません。しかし、全体を統括したり、トップセールスを行ったりで、金銭に換算できない価値があるので、一見ムダと見える物も必要なのです。 販促という観点で、ユーザーに無駄遣いをさせることを提唱しているかもしれません。 味の素という化学調味料がありますが、「瓶の口に付いている穴を大きくすると味の素をたくさん使ってくれるのでは」という提案が女性社員からあったという伝説があります。これも「無駄使いさせろ」という発想なのかもしれません。 ■ 販売促進の発想切り口 暑い季節に暑さを忘れさせるクーラーは不可欠になっています。「4.季節を忘れさせろ」というのは、商品開発には切っても切れない切り口です。 バレンタインデーにチョコレートを贈る風習は日本独特のものです。これは「5.贈り物をさせろ」という発想から、日本のチョコレートのメーカーが画策した戦略です。 「6.組み合わせで買わせろ」も、組み合わせることにより客単価を上げることができます。ファストフード店ではセットにして割安感を出した商品作りをしています。またお客様に対してレジで「○○もいかがでしょうか」と、別の商品も追加して勧められることばも良くかけられます。 組み合わせるというのは、オズボーンのチェックリストにもあり、新商品の発送の時などに使われる考え方です。 ■ 営業タイミング 商店の店頭で入ろうか入るまいか迷っているお客様を見つけたら声をかける、というのは常道です。これは「7.きっかけを投じろ」に通じます。声をかけられるとついその気になってしまいます。 お客様の尻をたたいて買う気にさせる手法の一つが「8.流行遅れにさせろ」です。「今年の流行色はこれです」ということで、今着ている服はもう流行遅れになっていることを気づかせるのです。 テレビ通販が流行っていますが、「9.気安く買わせろ」という鉄則に基づいています。高価な商品も割賦販売により気軽に買わせる効果があり、「9.気安く買わせろ」に該当します。 温泉地の駅に行くと、呼び込みをされます。「7.きっかけを投じろ」に通じることですが、声をかけることにより親近感を覚えさせる効果があり、ます。 ■ 経営コンサルタントの営業 「マッチポンプ」という言葉があります。マッチで火を付けて、自分で「火事だ」と大声を上げる愉快犯のことです。「10.混乱をつくり出せ」という原則を利用して、自分の満足を得ているのです。 経営コンサルタントもクライアント・顧問先を獲得するために、営業活動を行います。その時に、相手の企業の問題点を指摘して、すぐに改善しないとライバル企業に負けてしまうというような脅しのようなことを強調する経営コンサルタントがいます。 決して好ましいことではないのですが、経営者に、ある種の問題意識を持たせるために「10.混乱をつくり出せ」という原則が適用される例です。 最後は自虐的な、あまり良い例ではありませんでしたが、電通「戦略十訓」の中にも、応用できそうなことが含まれていると思います。 皆様のお立場で、一つ一つを見直してみて下さい。電通の「戦略十訓」の中に何らかの示唆を見つけられたら幸いです。 長い連載に最後までお付き合い下さりありがとうございました。これで電通「戦略十訓」の連載を終わりにします。 多少でも皆様のお役に立てましたら幸甚です。 <【電通鬼十訓プラスアルファ】 戦略十訓 完> |
|||||
↑TOP | |||||