今日も一日、様々な発表を聞く。日本の同一性の問題、沖縄と台湾から見た日本、被害者意識のポリティックス、中国における日本像、古代日本の国際交流、石橋湛山の政治姿勢等、内容は多岐に渡り、それぞれに面白く聴くことができた。発表言語は英語と日本語。
発表前の朝食時に、明日がご発表の川田順造先生とお話する機会があり、いろいろと貴重なお話を伺うことができた。特に先生が長年に渡って親しくされていたレヴィ・ストロースの日本滞在時のエピソードを面白く聴くことができた。先生からは思いがけなく最近著『〈運ぶヒト〉の人類学』(岩波新書)をご恵与いただく。
発表後の夕食会は、アルザスワイン街道沿いのレストランで、日本語・英語・フランス語・ドイツ語・ロシア語が飛び交い、多いに盛り上がる。その様子を点描すると次のようになる。明日早朝発たれるロシア人の先生が見事な日本語で皆にお別れの言葉を述べる。私はと言えば、隣り合わせたやはり明日発たれるもう一人のロシア人の先生と、フランス語と日本語のちゃんぽんで、多少分かり合えないところはそれとして、楽しく話し、反対隣のオーストリア人の先生とは、日本語で、新しい研究テーマとそのためにどうやってどこから予算を取るかなど面白く話し合う。フランス人の研究者たちとは日本語やフランス語で冗談を言い合っては笑う。日本人の日本古代史の先生がドイツ語でオーストリア人の先生とビール談義に花を咲かせるのに隣で耳を傾ける。
このように、何とも面白い多言語空間が、友好的なムードの中で、多少騒々しく、繰り広げられた。周りの客たちが、この人たちはいったいどういう集まりなのだという驚き顔でこちらを見ていたのも無理からぬことであった。