内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

路上で拾ったK先生の古ぼけた黒革手帳から ①

2018-07-08 23:59:59 | 雑感

 日曜日の今日、先週末から事実上夏休みモードに入った大学のキャンパス沿いの歩道には人影もまばらで、雲一つない夏の青空の下、学期中は日中いつも多数の乗降客を見かける大学脇の路面電車の停車場にも爽快な暑さを孕んだ微風が虚しく静かに吹き抜けているばかりでした。
 毎年のことですが、この季節が来ると、仮にまだ個人的には仕事が残っていても、安堵の吐息が漏れます。これから八月下旬までの一ヶ月あまり、人口の二割強が学生及び大学関係者によって占められているこのヨーロッパの首都を謳う街はその全体がお休みモードに切り替わります。
 そんな寛やか気分を味わいながら、普段は通勤路として自転車で通り過ぎるだけの歩道をぶらりと歩いていると、前方路上になにか黒い小さなものが落ちているのに気が付きました。近づいてみると、ポケットサイズの黒革手帳です。随分使い込んでいるようで、背表紙が手擦れでかなり傷んでいます。
 いったい誰が落としたのだろう、持ち主はなくして困っているかも知れないと、表紙を開けてみると、その裏にS大学G学部N学科A.K.と記され、その下に職場の住所・電話番号・メールアドレスが判読に苦しむような下手くそな字で記されています。パラパラとめくってみると、何やらそのときどきの思いつきを書き留めるための手帳のようです。
 本人でなければなんのことやら訳のわからない悪筆のメモが大半ですが、最近記したと思われる後ろの方の頁には、「今後の研究テーマ」と下線が引かれた一行の後に、「ここ数週間脳裏に去来する研究テーマ。まだいずれもとりとめがなく展開の方向も見えていない。関連書籍を集めること」と殴り書きしてあります。そして、その頁以降にテーマらしき言葉と横文字の書名が並んでいます。
 道義的にいけないことだとわかってはいますが、明日の記事からそれらのテーマと関連書籍をこっそり皆さんにご紹介していきますね。
 K先生、どうかお許しください。