内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

炎天下、滔々と流れる二つの河川の合流点に立つ ― リヨン出張余録

2018-07-02 21:11:44 | 雑感

 昨日日曜日、午後六時過ぎにパリからストラスブールの自宅に帰り着き、その十二時間後の今日の午前六時三四分発のTGVでリヨンに向かいました(なんかまるでフランス中を駆け巡る超多忙なビジネスマンみたいじゃないですか!)。
 何のためかというと、ENS de Lyon の入学試験の日本語口頭試問の試験官を務めるためでした。受験者はたった一人。そのためにやはりストラスブール在住で高校で日本語を教えているフランス人の先生と二人でリヨンまで出張したというわけです。
 この受験生、同校開校以来初の日本語口頭試問受験者なのです。その意味で同校の歴史に残る(?)試問でした。私たちにとっても Grandes ecoles の入試で実際に口頭試問を行うのはこれが初めて。もう一人の先生が主査で私は副査でした。
 試問時間は全部で三〇分。受験生は口頭試問開始一時間前に三つのテキストの中から一つ籤のように引き、そのテキストについて一時間発表の準備を別室でします。試問そのものは三〇分。二〇分間の発表、八分間の質疑応答、二分間の教員間での採点協議。これが基本的な時間配分です。ただ、これは多数受験者がいる場合で、今回のように一人しかいなければ、多少時間超過しても問題ありません。
 大変面白かったのは、この口頭試問、公開制なのです。つまり、試問に臨席したい人にも入室が認められるのです。実際、受験者の友だちでしょうか、一人臨席者がありました。
 試問は滞りなく終了し、直後に事務室の端末で成績入力。これで任務完了です。実質の拘束時間は、一時間余り。もちろん報酬は支払われます。
 リヨン到着が午前十時で、試問開始前に四時間ほど余裕があったので、ミニ観光をするつもりでいたのですが、澄んだ青空から灼熱の太陽が照りつけ、気温は日中三十五度くらいまで上昇したので、とても歩き回る気にはなれませんでした。
 それでも、会場の学校の最寄り駅から路面電車で三駅手前にある Musée des Confluences を見学するつもりでいました。ところが、昨日のギメ美術館のように話はうまく行かず、月曜日は休館日でした。それでもその斬新な現代建築を写真に収めるべく、炎天下とぼとぼと歩いていってきました。今日の記事に貼り付けた一連の写真はそのときの写真です。
 Confluences という言葉からもわかるように、この博物館はソーヌ川とローヌ川の合流地点にあります(地理的な意味と文化的な意味が込められています)。ドイツのモーゼル川とライン川との合流点ドイチェス・エックのような渦巻きは見られず、滔々と流れる両河川が悠然と流れていくのが博物館の高みから見渡せます。
 試験後は、午後六時四分発の帰りのTGVに乗るまでの時間、フランス人の先生と二人で旧市街地区にあるバジリックやカテドラルなどを散歩しながらおしゃべりして楽しみました。
 炎暑にはちょっとまいりましたが、全体として愉快な日帰り出張でした。かつて鬼門と忌避していたリヨンは、パリ滞在をご一緒した先生のお言葉をお借りすれば、ストラスブールからリヨンに行くのにパリ行きという「方違え」をしたおかげで、厄払いができたようです。
 この記事は帰りのTGVの中で書き、即投稿しました。