内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

地図としてヴィジュアル化されたアジア的世界観

2018-07-01 23:59:59 | 雑感

 パリのギメ美術館で現在公開中の特別展 Le monde vu d’Asie を午前中に見に行ってきた。大変興味深い展示であった。それに、たまたまだったが、月の第一日曜日だったので入館無料。これは今回のパリ滞在のご褒美ということにする。
 現代の地図は、現実の地形・区画・交通網などを一定の図法に忠実に従って縮小して再現した「客観的な」ものが一般的である。ところが、近代以前には、そのような厳密な図法そのものがなかったからという消極的な理由からだけではなく、地図には、実用的使用目的に応じた現実の世界の再現とは別のより重要な機能があった。それは、当時の世界に生きる人々の世界観・世界像を視覚的に表現することである。
 世界の中心はどこにあり、その周囲に世界の諸事物はどのように位置づけられているのかということを、言葉ではなく、図像を使って表現している実に多様な地図は、それが作成された国と時代それぞれにおける宗教的価値観・歴史認識・文化的特異性・社会的構造等を視覚的表現する手段であったことが展示を見ていてよくわかった。
 ただ、各地図について図像学的解説を加えたパネルが乏しかったのが惜しまれる。それがあったならば、それぞれの地図の細部からもっと多くの情報を読み取ることができたであろうに。
 しかし、全体として、知的関心を唆る好企画だと言えると思う。