今日は、M先生ご夫妻のお車で、沖縄本島最北端のその名も「奥」という名の集落に棲まうあるご夫婦のお宅をお訪ねした。ご主人は沖縄出身、陶芸を主たる活動としながら、竹籠・和紙・染め物などの工芸も手掛けられつつ、日々哲学書を読み思索に耽りつつ、手作業・農作業を実践されている。お住まいも自らの手ですべて建てられた。奥様は関東圏のご出身だが、沖縄に移住されて三十年以上。ご主人の「哲人」的生活の良きパートナーである。
もともとは住む人もなかった原生林の一角をご主人自らが切り開くことからそこへの定住生活は始まった。電気・ガスその他、生活のすべてのインフラストラクチャーをご夫婦自身で整え、四年半掛けて自宅を完成された。
ご主人は、物づくりの中で突き当たる問題をとことん突き詰めずにはいられない性分。そのために参照されたありとあらゆる本が家の各所に設えられた本棚にぎっしりと並べられている。別室には、ご自身の陶芸その他の作品が所狭しとならべられている。しかし、それらは売り物ではないという。いったいどうやって生計を立てられているのか、皆目検討もつかない。
そのお宅で、M先生ご夫妻と昼前から昼食を挟んで夕方まで様々な話題について話が尽きなかった。初対面の私の拙い話も真剣に聴いてくださった。
到着してまずご主人が案内してくださったのが沖縄本島最北端の海の光景である。リビングの窓前を覆う原生林を掻い潜るようにして抜け出たところに見えた断崖からの海の景色に私は息を呑んだ。今日の記事に貼った写真はそのときの写真である。
こんな生き方がありうるのだということに、私は、衝撃にも近い感動を覚えた。