ある本を読んでいて、その中に引用されている文章が気になり、その前後も読みたくなり、巻末の文献表の当該書の書誌情報から発注するということがしばしばある。その本が簡単に入手できる場合はいいのだが、学術専門書で非常に高価だったり、絶版で古書に法外な値がつけられていると諦めざるをえない。仏語文献であれば、図書館で閲覧するという手段もあるが、日本語文献だとそれも直ちにはできない。それで歯がゆい思いをすることもときにある。
仏語文献に話を限るとして、長いこと絶版のままで、古書市場にもほとんど出回おらず、でも入手した本がある。例えば、ミッシェル・フーコーが訳したヴァイツゼッカーの『ゲシュタルトクライス』(Le cycle de la structure, 1958年刊)は、長いこと探しているのだが、ずっと入手困難な本の一つである。ときどき出品されるが数万円の値が付いていて、さすがに買う気になれない。最近、Internet Archive でPDF版を無料で入手できたので、参照は簡単にできるようになったのはありがたい。
それほど入手困難ではないが、しばらく探していて、つい先日ネット上で見つけて即購入したのが、Louis Lavelle. Actes du colloque international d’Agen 27-28-29 septembre 1985, avec un extrait du texte inédit La réalité de l’esprit, Société académique d’Agen, 1988, 606 p. である。一部折れがある程度の非常に状態のいい古書であった。しかも、驚いたことに、本体価格わずか 16,8€ で、送料込でも 24,69€ という安値であった。ついでだが、こういう「発見」は、Amazon よりも Rakuten での方が圧倒的に確率が高い。
Louis Lavelle にしても、先日何度か話題にした Maurice Pradines にしても、今日忘れられかけている哲学者である。ラヴェルのほうは、復刊に熱意を持っている研究者グループのおかげで、簡単に入手できるようになった著作もあるが、主著はほとんど古書でしか入手できない。上掲の論文集の安さは、むしろその哲学に対する一般の関心の低さによって説明されるので、嬉しいような悲しいような気分である。
この論文集は、1985年シンポジウムの発表原稿が基になっているが、この種の論文集は玉石混淆であることが多い。しかし、それらの論文は、発表者の単著に再録されないと、入手が困難なことが多く、その中には非常に重要な論文も含まれている。だから、今回の入手は、私にとっては「いい買い物」であった。