暦の上では、すでに立秋を過ぎ、時候の挨拶も「立秋過ぎてなお暑い日が続いておりますが」などと残暑見舞いの冒頭に置くのが習わしですが、それがいかにも空々しく聞こえるほどの猛暑が九月に入っても続くのが当然のことになってしまって何年になるでしょうか。
関東近県や中部関西地方の暑さよりは若干ましとはいえ、東京もまた連日熱暑に見舞われ、せっかくの一時帰国中でありながら、日中出歩くのは躊躇われる日が続いています。家の中で冷房を効かせた部屋でじっとしていれば外の暑さとは一応無縁ではありますが、気持まで涼やかとはなかなかまいりません。
帰国後丸二週間休んでいた水泳を八日に再開しました。自転車で五分ほどのところにある目黒区立五本木小学校内の屋内プールに朝通っています。九時の開場とともに入り、毎日五十分で二キロ泳いでいます。水温が高めなので、上がると汗がしばらく止まりません。冷水シャワーを浴びて体を冷やしてから帰ります。その帰り道は、太陽が照りつける暑さを肌に感じつつも、全身に心地よい疲れを感じながら、ゆっくりとペダルと漕ぎます。
午後は気ままな読書タイムです。ここ数日あちこち頁をめくっているのが『定家八代抄』(上下二巻)です。先月の岩波文庫「夏の一括重版」三十六点中の一点です。夏を詠んだ歌を通覧してみました。『八代抄』に限りませんが、一般に、夏を詠んだ和歌は、春秋に比べて明らかに少なく、冬に比べても少ないですね。当然、夏の名歌となると希少です。それに、夏の到来、秋の訪れ、夏の短夜、夏の夜の月、五月雨、時鳥、花橘、涼しさを喚起する風物などが歌題で、暑さそのものを詠んだ歌は『八代抄』には皆無です。
明日の記事では、涼しげな夏の歌を一つ選んで鑑賞してみます。