メディア・リテラシーの前期の授業は、佐藤卓己『現代メディア史 新版』をメインテキストとして、メディアに対する理論的アプローチを重視する。同著者の『メディア論の名著30』(ちくま新書 2020年)によって広く文献を紹介しつつ、理論的な骨格を強化するために石田英敬の『大人のためのメディア論講義』(ちくま新書 2016年)も参照する。この授業は、フランス語で行われるが、日本語上級レベルのテキストを読ませるという目的もある。量は読めないが、参照箇所を絞って丁寧に読み、そこから問題を展開させていきたい。その展開の起点をしっかり構築するために、『大人のためメディア論講義』の「はじめに」で言及されている洞窟先史学者マルク・アゼマ(Marc Azéma, 1967 -)の La Préhistoire du cinéma. Origine paléolithique de la narration graphique et du cinématographique, Éditions Errance, 2011 を授業の導入に使う。
前期後半には、「うわさ・風評・フェイク・ニュース」というテーマを導入する。松田美佐『うわさとは何か ネットで変容する「最も古いメディア」』(中公新書 2014年)と佐藤卓己『流言のメディア史』(岩波新書 2019年)からの抜粋を授業で読む。テーマそのものの展開のためには、この二書でも言及されている次の二つの仏語文献 Edgar Morin, La rumeur d’Orléans, Éditions du Seuil, 1969 と Jean-Noël Kapferer, Rumeurs. Le plus vieux média du monde, Éditions du Seuil, « Points Essais », 2009, (1re édition, 1987) も参照する(両書とも邦訳がある。『オルレアンのうわさ』みすず書房、第二版新版 1997年。『うわさ もっとも古いメディア』法政大学出版局、1988年)。