著者ジャック・アマノ氏は、1972年ロサンゼルス生まれ日系アメリカ人である。父親はアメリカ人で、母親が日米のハーフ。日本語はまったくできない。知りたくもないと本人から聞いたことがある。マサチューセッツ笑科大学(MIC=Massachusetts Institute of Comics)出身である。
一言で言えば、嫌な奴である。一緒にいたくない奴である。誰にでもところかまわず噛みつく。公共の場であっても大声で相手を罵倒して憚らない。マジ、うざい。
ところが、会ってじっくり話してみると、いかにも人に嫌われそうな彼の言動や行動にはそれなりの理由があり、彼が単なるミザントロープではないことがわかる。犬狼のような彼の態度は彼の思想表明なのである。
十人が足並みを揃えて右に一歩踏み出すのを見ると、彼は左に十歩駆け出さなくはならないと本能的に感じるという。そうしないと、やっとのことで危うい均衡を保っている世界が転倒してしまうという妄想を彼は追い払うことができない。
先日、私が彼にインタビューしたとき、彼自身確かに「妄想」という言葉を使っていたが、それもまた彼一流の韜晦趣味で、実のところは、正気なのは自分だけだと自負している節がある。少なくとも、遠くはない世界の終末を彼が本気で心配していることだけは確かだ。
『反エコロジー宣言』は、天邪鬼な彼にいかにも相応しい会心の一作である。その冒頭の一文はこうである。
「今、世界を徘徊している亡霊がいる。エコロジーという亡霊である。」