手前味噌で恐縮ですが、先週火曜日、ちょっと嬉しいことがありました。
順を追って説明します(って、誰もアンタの話になんか興味ないと思うけど ― まあ、そう言わずに。三分だけお時間いただけますか ― それパクリじゃん)。
昨日の記事の話題とも関連があるのですが、実は、今年度つまり2022‐2023年度の留学生として大学内部では選抜されながら、日本の受け入れ大学から「成績不十分」との理由で拒否されてしまった学生が一人いました。昨年四月のことでした。これは私が願書作成サポートに関わるようになってからはじめてのことで、その知らせを受けたときはすぐには事情がよく飲み込めませんでした。
以下、昨日の記事同様、諸方に差し障りがないように、拒否してきた日本の大学の名前も伏せますし、当該の学生の個人的事情も一切伏せます。
この拒否権発動に関して、最終的には日本の受け入れ大学側にその権利があることは規約上認められているので、その点に関しては異論の余地はないのですが、なにか非常に不愉快なものを私は直感したのです。率直に申し上げましょう。「厄介事は御免だ」というのが拒否の本当の理由だと見抜いたのです。
当該学生が失望したのはもちろんのことです。しかも、この話を数ヶ月に亘ってこじらせることになったのは、その学生の両親が非は本学の国際交流課の対応のまずさにあると非難してきて(私に言わせれば、これは言いがかりもいいところです)、大学長に直訴状を送ってしまったことにあります。大学の対応によっては裁判も辞さないという剣幕でした。この点に関して、両親の行動は明らかに行き過ぎだと私はことのはじまりから考えていました。しかし、国際交流課の誠意ある対応にも関わらず、事態は悪化する一方でした。
夏休み明けの九月初旬、大学側の関係者間でこの問題についてオンライン会議が開かれました。結論として、一年間の留学は諦める、今年度後期のみの留学に再度同じ大学に願書を提出する、という方向で話を収めるべく各人動くということになりました。当該学生の世話役の私の役回りは、日本の大学宛に当該学生のためにサポート・レターを書くことでした。
結果を申し上げますと、幸いなことに、当該学生の後期プログラムへの受け入れが一月に正式に承認されました。それ自体ほんとうに嬉しい知らせなのですが、その後、学生本人から面談の申し込みがあり、先週の火曜日にその面談がありました。
その面談で、学生が開口一番、「先生にまず感謝したいことがあります」というのです。どういうことかと聞くと、彼が国際交流課で聞いた話によると、今回の受け入れに関して、私のサポート・レターが決め手になったと、当の日本の大学から本学の国際交流課に連絡があったというのです。
これは嬉しかった。サポート・レターを書いたときには、それがほんとうにサポートになるのか、正直、自信なかったのです。形式的な理由を盾に拒否される可能性は大いにあったからです。
そのサポート・レターは、A4一枚の半分ほどの短い文章に過ぎず、読みようによっては、そっけないとも取られかねない文面でした。しかし、それは熟慮の上の選択でした。いたずらに感情に訴える、情状酌量を求めて低姿勢になる、先方にも非があることを匂わせる、それらの要素を一切排除して、事実として言えることを淡々と綴りました。
以下、固有名詞を一切伏せて、全文掲載します。きっと、なあんだ、こんなんでいいんだ、と思われる方もいらっしゃるでしょう。
〇〇大学関係者各位
私儀、ストラスブール大学言語学部日本学科准教授、日本留学者教育担当の〇〇〇〇は、本学〇〇学部〇〇学科○年生〇〇〇〇を貴学〇〇への候補生として推薦いたします。
今年1月から2月初めにかけて翌年度留学生の内部選考が行われ、〇〇は貴学への年間留学生として選抜されました。ところが、GPAの計算方式によりますと、〇〇の成績は基準値を下回ってしまい、結果として貴学から留学を拒否されてしまいました。
この残念な結果は、フランスの大学の成績評価が大変厳しいことにその主因があります。フランスでは20点満点で成績を計算しますが、総合平均点が12点(100点満点で60点)は良好な成績の部類に入ります。〇〇の成績はそれを下回ってはおりますが、2年から3年に進級できる学生が例年同学年の約半数に過ぎないことからして、〇〇が現在3年に進級できていることは、2年次の成績がけっして不良ではないこと意味しています。
〇〇に関して特筆すべきことは、手書きに関する困難を克服しつつ、1年生のときから弛みなく努力を重ね、総合成績が1年のときよりも2年になって向上していることです。学年が上がるにしたがって総合平均点が低下するのが一般の傾向ですので、総合成績が向上していることは、〇〇が学業全般において着実な進歩を遂げていることを意味しています。
貴学において留学生の選考・受け入れに関わる各位に、これらの点をご考慮いただいた上で最終的にご判断していただければ幸甚に存じます。