一昨日月曜日から、来年度の修士論文の指導依頼や今年度の学部卒業小論文の指導依頼があったり、来年度からの新しいカリキュラムで担当する日本思想史で取り上げるテーマをぼんやり考えたり、やはり来年度の日仏合同ゼミのテーマと課題図書の候補をあれこれ考えたりしていて、それだけで三日間が経ってしまった。そのことを後悔しているのではない。それどころか、指導依頼をむしろ喜んでおり、他のことで煩わされることもなく考えたいことを考えていられることをとても幸いなことだと思っている。
修士論文指導依頼は、他大学の学部学生からで、日本語の論理を哲学の問題として考えたいというまだ漠然とした話だが、修士でストラスブールに来るのはかまわないけれど、哲学的な刺激をいろいろ受けたいならばパリのほうがいいから、イナルコの先生にも相談しなさいとアドヴァイスする。
学部小論文の指導依頼は、前期私の二つの授業に出ていた学部三年生からで、三宅一生のデザインに見られる服飾の哲学をテーマにしたいという。何を考えているのか、まだちょっとよくわからないが、まずは研究計画書とさしあたりの文献表を準備するように指示する。具体的な指導計画はそれを見てからにしようと本人に伝える。
来年度の日仏合同ゼミのテーマを考えるのは、毎年恒例の悩ましいお楽しみ。机の上に積み上げられた数十冊の仏語参考文献を漁りながら、あれもいい、これもいいと選択に苦しむ。でも、きりがないから、一応、三つに絞る。第一候補は「ケアの倫理」。第二候補は「妊娠中絶」。第三候補は「死刑」。第二と第三は、かねてより取り上げたいと思っていたテーマではあるのだが、学生たちが拒否反応を示す恐れもある。その点、第一候補はまあ「無難」であり、まさに「旬」でもあり、日英仏語での参考文献にも事欠かない。
最終決定は私の一存ではできないので、まだどうなるかわからないけれど、「ケアの倫理」についての共通課題図書はすでに候補を二冊選定済(でも、まだヒミツ)。
上記の話題とは関係ないが、ストラスブール大学と縁の深い歴史家マルク・ブロックの歴史学の方法も来年度の思想史の授業のどこかで取り上げたい。Apologie pour l’histoire ou métier d’historien (松村剛訳『新版 歴史のための弁明―歴史家の仕事』岩波書店、二〇〇四年)のポケット版の新装版(DUNOD Poche)が今年になって刊行されたのがそう思った一つのきっかけ。二宮宏之氏の『マルク・ブロックを読む』(岩波現代文庫、2016年)もその折に紹介したい。そう思うのは、二宮氏がフランス語で書かれた日本近世史 Le Japon pré-moderne 1573-1867, CNRS, 2017 は日本学科の学生たちにとって必読文献だということがある(今年になって同書のポッシュ版が刊行された)。