内容は、国産材が売れないのは外材が安価でたくさん輸入されたからという説を真っ向から否定して、国産材が売れなかったのは粗悪品が多かったからだと断じているのです。本当は外材の方が高かったのに安い国産材が品質の面で売れなかったのが現実なのであると・・・。
産地銘柄材ではない銘柄材「東濃檜」は良心的な役物の製材品で地位を確立した。そして、並材にも品質を確立したのが美作産地だった。でも、これらの産地は少数派で国産材の地位は低下して行く一方だった。並材は外材に取って代わられ、役物(銘木)は国産材に需要が集中し、役物を出せる地域は価格が跳ね上がって大儲けしてきたのだと続きます。
そして、現在は、集成材が品質的でも価格形成でも標準となり、常に無垢材に同等の品質が求められ、価格も抑えられ、建物の構造上で役物の需要も減って「国産材の値段は、もう上がらない」と断言しています。住宅建築戸数は経済不況と相まって四十数年ぶりに100万戸割れとなって在来工法の木造住宅も40万戸を越えることはないという予想で木材需要はさらに減って、価格も低く抑えられる見通しなのです。
材価が低迷すれば所有者は木を伐らない、伐らないから素材生産が衰退するし、材も出回らない。かといって外材も入りにくくなっているということから、素材生産への参入や柱から板材への転換、乾燥の徹底、モルダー加工など、やりかたによっては中小の製材業者でもチャンスが見いだせるかも知れないとも予測しています。
さらに、造林・育林コストの低減の必要性も説いていて、戦前期までの焼畑林業と戦後の高コスト林業を比べ、焼畑林業の見直しや鳥獣害対策まで言及しています。
戦後の林業行政に携わってきた私、そして現在の状況を見ると・・・考えさせられる本です。
「国産材はなぜ売れなかったのか」
著者:荻 大陸、発行所:日本林業調査会、定価:2000円(税込)
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