●自己推薦書などが苦手な生徒さんが多いので大学提出用の例を載せてみようと思う。中学生の方も少しは参考になるやもしれないと断言できなくはないとは言い切れない。
【課題】
自慢できることなど自己アピールしてください。たとえば、自分の性格について、学校生活で学んだり、体験したこと、現在の自分自身にとって関心の高い分野等について記述しながら、自己を推薦する文章にまとめてください。
(注)
●自慢するほどのことはないと考える高校生は多いのだろうなと推察できるほどのヒントの多い文章である。性格や学校生活を抽象化して自分の関心の高い分野にまとめると解釈できるね。アドミッションポリシー(入学者受け入れ方針)との対応にも注意しよう。
【解答例(でいいのか)】
私の自慢できることをあげていくと、イベントをキーワードにして生きているということ(①)です。私は将来、イベントや観光について学び、それに関係する職業に就こうと考えているので、イベントは生涯のキーワードになるはずです。そのように、一つのキーワードを持って生きるというのは自慢できると思うのです。
まず(②)、傷つくようなこと(③)があっても、そこから学び、成長してきました。ボランティアとして参加したイベントの子ども祭で子どもたちと触れ合ったことがあります。そのとき、「面白くねーよ」と言われたのです。練習をしたのに、さらに善意でしたのに言われてしまい、ショックでした。しかし、「ありがとう」を当然と思わずに、あったら、最高のご褒美で、なくてもボランティアはいろいろな経験ができる機会と思うようにしました。批判は成長の可能性のある証拠だとも考えました。なぜそう考えたかというと、同じように落ち込んだ後輩を励まそうと話したことがあったからです。それによって自分も気がつけました。人は人に話すことで、逆に自分で気がつくことがあると知りました。イベントのおかげで、私は前向きな人間になり、人に親身になり、後輩のために行動する人間になりました。
次に、自分の経験の意味を自分の関心から捉えなおすことができます。学校の文化祭(⑤)で「千本桜」という曲をみんなが歌ったり、踊ったりしていることに気がつきました。ネット上で流行している曲で、ファミリーマートでもキャンペーンに用いられるほど、メジャーな存在だったようです。しかし、ネットの流行に疎い私には、クラスの半分が知っている曲であることに驚き、また、流行っているのに半分は知らないことにも驚きました。そこで、私はイベントの機能に気がつきました。参加するみんなが同じ経験をすることで知識を共有できるのです。さらに体育祭のクラスパフォーマンスの練習をしているときに、ダンスの練習をしたのですが、イベントは技能の向上になるとわかったのです。出雲などの遷宮というイベントにも、知識の共有、技術の向上などにつながっていることでしょう。
さらに、イベントは仲間を増やす面があると知っています。私はあるアイドルのファン(⑥)なのですが、できるかぎりのコンサートに参加しました。すると、列車などの中で同じファンと目線を合わせただけで他人でなくなります。イベントは多種多様な人を集めるものもありますが、特定の人々を集めるものもあります。そのような特定の人々を集めるイベントも、他の地方から参加する人を友人にさせるような力があるのです。私はイベントのおかげで違う地方の友人がたくさんいます。
そして、非日常であるイベントの背景には、日常も重要だと知っています。英語だけで過ごすイベント(⑦)に参加する際に、自分の日常の英語力が重要だとわかり、普段の英語の勉強に力を入れました。イベントを実行するために人は、日常の力がスタートになるのです。その意味でイベントは日常を向上させる原因になるのです。
私はイベントに多くの可能性や力があることを知っています。その上で、その可能性や力で、過疎の〇〇の活性化のために、さらに他の地域の活性化のためになる方法(⑧)を探していこうと考えています。
自分の実感で学んできたことを社会に活かそうとする。これが一番の自慢です(⑨)。
【注釈】
①出だしが実は志望理由書と内容が似ている。これは諸刃の剣で意外性がないという悪い面もあるし、一貫性があるという良い面もある。「生きているということ」は高校生としては強い文体であるところに個性があるかも。
②一つのキーワードだけで文章を書くのは大変であろう。しかし、多面的な見方を示す機会でもある。以下で「まず、次に。最後に」などの接続表現を活用して多面的にものが見られることを伝えることに成功している。
③マイナスのことを自己推薦で書く人は少ない。しかし、完璧な高校生を大学が求めていない以上、マイナスのこととのお付き合いをどうしたか(課題解決力のアピール)を書くのも相手は興味を持ってくれるはず。
④「ボランティア」にしても「後輩を励まそうとした」にしても、そこから自分が成長しているのが面白い。自己推薦のときに私、こんないいことができる人なんですアピールに後輩やボランティアを使う人がいるが、それによってどういう自分に気づけたか、どうなったかを書くと、問題発見力をアピールできる。
⑤学校の文化祭の話を聞くのが嫌だと告白している大学教授がいた。ほとんどは「はじめはまとまっていなかったクラスが最後は一つになれました♪」的な内容だそうな。以下の文を読んでどう君は感じたか。問題意識を持つきっかけに使われているのだ。しかも、ファミリーマートから出雲の遷宮にまで関連させる力の持ち主であることを示唆している。多くのことを関連させる力は偏差値がいい人間である以上に頭がいい人間である。ということは偏差値によらない入試=AO,推薦入試にふさわしいということだ。そのためには「知識の共有」などという抽象的な言葉を挟むといい。どんな抽象的な言葉を大学の人が好きかは、現代文や大学のHP(複数)の大学を見てみるといい。ちなみにいつ頃書かれた文章かわかってしまうな、これ。
⑥この文章を書いた人は全国大会出場などの目だった経歴のない生徒である。しかし、アイドルのファンであること自体を自分のアピールすべきことにもっていける生徒なのである。AO,推薦入試に向いている頭のよさをそろそろ理解できただろうか。これを読む君たちは、どう頭を使い、情報処理をすればいいのかを今回の記事から学ぶのである。自分に関係がない文章だと思った瞬間に才能はない。なぜって? 情報を結びつける力がないからである。
⑦実は国際的な人材を要求している大学なのである。その割には英語の話がないよねと指導中に言ってしまったのである。そこで足してきた情報がこれである。資格がなくても、何か書くといい。特にアドミッションポリシーに対応させるためには、何かネタを探すこと。
⑧キーワードは「イベント」だけだが、目の前だけでなく、「他の地域の活性化」までを考える幅広さを持っている。
⑨「一番の自慢」と書く勇気は君にはあるか。なければ、それを持つしかない。
※多少、日本語の乱れはあるが、一番大事なのは中身である。大学の先生(読者だ)に知的関心をもってもらう内容にすること。国語の先生に添削を頼むと日本語の乱れだけ気にする人がいる。むろん、少ないにこしたことはないのだけれど。
※これの志望理由書版も読みたい人っているんだろうか。
※この推薦書は某国公立大学(調べないでね)の合格者のものです。念のため。
↑上↑の記事に関連したものとしては
●注釈式志望理由書の書き方
●志望理由書などが苦手な生徒さんが多いので大学提出用の例を載せてみようと思う。中学生の方も少しは参考になるやもしれないと断言できなくはないとは言い切れない。
●過去の生徒の志望理由書を基に架空大学の志望理由書にしたものなので、どこかつじつまがあっていなかったら、申し訳ない。
●多少、日本語として不自由なところもあるが、意外と大学の先生は見逃してくれることが多い。大事なのは中身なのだろう。
【テーマ】
地域デザイン学科の本コースを志望する理由を書いてください。たとえば、××大学でどのようなことを学びたいのか。なぜ、AO入試で受験するか等について、自分自身の言葉で文章にまとめてください。
(注)
●コースや学科だけにこだわらず、××大学についても考えること。
●一般入試でない理由を考えること。
●パンフ丸写しはもちろんだめ。注意すべきは面接で何を聞かれても書いた内容について答えられるようにする覚悟が重要。
【解答例(でいいのか?)】
①私は将来、地域を活性化するため、あるいは維持するために、イベントや観光について学びたいと考え、××大学地域総合学部地域デザイン学科地域政策コースを志望しました。そして、将来は地域のために観光やイベントについて関係する仕事に就きたいと考えています。
今、日本の多くの地域(②)が問題を抱えています。私が住んでいる〇〇では特に、少子高齢社会が進み、企業も減り、若者は〇〇の外へ向かう傾向があります。この傾向を止めるために、観光やイベントを活用し、若者が住み着く地域に〇〇をしたい(③)のです。
観光について、ル・モンドの電子版(④)に世界観光機関の次のような言葉が紹介されていました。観光は「文化的矜持、他国人への親睦と理解、自然・文化遺産の所有意識および管理に対する責任感」(⑤)を作り出すという言葉でした。過疎が進む〇〇に私は住んでいるのですが、これらの感覚や感情を作り出すことは重要だと私は考えるのです。そのこと学ぶときに重要だと考えた(⑥)のが、総合的に地域を学ぶことでした。私は確かに経済的な効果を気にしています。人の定住に経済は影響を与えるでしょう。しかし、経済だけではありません。お金だけで人は慣れ親しんだ土地を離れるわけではないと思います。しかし、プライドを持てなかったり、その土地への責任感がなくなったりすれば、そこを離れることは増えるでしょう。(⑦)そして、先ほどの「文化的矜持」「自然・文化遺産」「親睦と理解」「責任感」という言葉が地域総合学部地域デザイン学科を構成する地域文化、地域環境、地域教育の各コースと密接に関係していると思うのです(⑧)。××大学地域総合学部地域デザイン学科で学ぶことで、私は地域政策を中心にした地域の専門家になれ、地域で観光とイベントについて考える上で重要な友達や先生方とも出会えると思い、志望したのです。
観光以上に、イベントに注目しているのは(⑨)、ボランティア部に所属していて、イベントの重要性に気付いたからです。海づくり大会に参加したときは、多くのことに気付きました。手づくり感をあえて出し、もてなしの気持ちを表現すること、前もって存在したコンセプト「〇〇県の◆◆◆」との連携、総括として経済波及効果が7億3千3百万円だったこと、精神的な総括としての御製に「(略)集ふ人々(略)」とまとめられ、「集ふ人々」に自分が入っていることの不思議な感情、カーボン・オフセットを学ぶ機会であったことなど、多くのこと(⑩)に気付けたのです。イベントは、このような気付きを与えるものなのです。私は、もっと地域の内外に有効なイベントに参加し、将来、企画したいと思っています。
また、観光とは、迎え入れる方にとっては、日常になることはあっても、来られる方には非日常であり、イベントという非日常のできごとと共通点は多い(⑪)ので、両方を意識して学んでいくと、地域について多くの発見ができ、地域に有効なことが考えられると思います。
そのためには、××大学で学びたいことがたくさんあります(⑫)。
地域総合学入門、統計学基礎、地域産業論、フィールドワーク基礎などの基礎科目で地域についての基本を学び、その上で地域組織論、総合観光論、地域産業連関分析演習などの専門科目を理解することで、NPOや企業、地方公共団体などの活動について深く学び、自分で調査する方法を学び、自分なりの地域での「観光・イベント」について考えをまとめ、私の住んでいる〇〇東部での「観光・イベント」について、現地での調査も含めた卒業研究をしたいと考えています(⑬)。
今回、AO入試を選んだ(⑭)のは、このような考え方をしている私らしさを直接、試験してもらえる機会だと捉えたからです。この入試を通して私はより成長し、自分の将来への考えを発展させたいのです。「地域再生を担う実践力を持つ人材の育成及び地域再生活動の推進」を行っている××大学地域総合学部地域デザイン学科なら、私も成長し、また協力(⑮)できることもあると思います。
以上のような理由で私は××大学地域総合学部地域デザイン学科地域政策コースを志望しました。
【注釈】
①冒頭に主張をまとめておくとよい。まとめるときにはキーワード(「観光」など)を意識しよう。
②「××大学」とは、地域名なんだが、××というローカルな存在と捉えていないことをアピールしている大学である(パンフレットを読めばわかる)。全国区を目指している大学なのだ。
③第一段落より限定的になっていて、若者の定住という問題意識を表現できている。
④フランスの新聞。日本語の電子版はhttp://www.diplo.jp/。アメリカでも日本でもない視点の持ち主に思える。国際感覚は英語ができなくてもアピールできるのだ。
⑤引用と自分の言葉を明確にわけよう。長すぎる引用は自分の意見が減るのでいけないが、引用は知性を感じさせることもできるので重要である。
⑥「重要だと考える」が二度続いて下手な日本語(他にもあるけれど)だが、逆に言うと大学の先生は内容を重視しているせいか、この文章でこの生徒は合格している。きれいな日本語に越したことはないのだけれど。
⑦先の引用文を生かしていることに注目してほしい。また、経済面、プライド、責任感など多面的に物事を考えていることをアピールできている。1、2年生はこのように多面的に考えることがAO入試では重要なので、単純に思考するくせを止めるようにしよう。
⑧地域政策、総合政策、観光などを学べる大学は多い。しかし、××大学だけを志望していることを説明するために、××大学ならではの魅力を説明しなくてはいけない。ここではコース編成の特徴を利用している。なぜ、他の大学ではだめなのかを面接でも説明できるようにしておこう。そのためには大学の特性をつかむことだ。
⑨観光の一点突破には問題がある。極端な話、観光学部に行けと言われかねない。観光と関連するキーワードであるイベントで話題を展開し、それを避けている。
⑩自分の経験を活用していることに注目してほしい。それも全国大会に出たというレベルではなく、普通の高校生でもできそうなことばかりである。普通の高校生と違うとすれば「多くのこと」に気づけたことである。数字や御製の引用をみて、自分にできるか不安に思った生徒もいるかもしれないが、自分のやったことをネットで検索すれば、これくらいの情報は出てくる。
⑪首尾一貫性がないと注意されたことがある生徒は、あげた事項が関連しているかを確認し、それを表現する。
⑫論理性を持った文章にするためには、接続表現が重要であるが、接続詞にとらわれてはならない。文や段落で接続表現をすることもある。前の内容をまとめたり、後の展開を予告したりするのが、接続表現なのである。うまく活用しよう。
⑬大学で学びたいことを書くときに一番参考になるのは、科目名である。その際、その科目の内容をHPのシラバスなどで確認するのは言うまでもない。その科目が自分の主張と一致していることが極めて重要になる。
⑭仮に書かなくてもよい場合でも、なぜ一般入試でなく、AO・推薦入試を選んだかを説明できるようにしておこう。「一般入試では合格できないからです」なんて、もってのほか。
⑮学ぶというのは、受身になりがちである。受身の大学生なぞ偏差値=一般入試で選んだほうがいいに決まっている。君が大学に何ができるかを考え、アピールしよう。
志望理由書関連では
●志望理由書ー経験の作り方ー(もしくはでっち上げ方)
↑上↑の両記事も参照のこと。