今月はじめ、しばらくぶりにルーアンを訪れた。モネが描いた連作で有名な大聖堂。 以前からその向かってすぐ左に現代風のモダンな建物があって気になっていたのだが、ついにそれが取り壊されている様子であった。
以前ガイドさんきいたところによると、この建物は1970年代ごろ建設されたそうである。そうか、この時代にあってもルーアン旧市街の景観を昔のままの美しさに保とうなどという考えはなかったということなのか。
同時代1979年にマルシェ広場に建てられたジャンヌ・ダルク教会の奇抜なスタイルをみてもそれははっきり分かる。美しい木組みの家並みを抜けると、突然風変わりな尖った屋根が姿をあらわす。あきらかに異質な建物である。
このマルシェ広場にもともとあった市場の建物を壊し、そこにこの教会を建設するという行為は「ヨーロッパの人は古い建物を大事にする」という我々の思い込み概念を真っ向から否定している。そう、ヨーロッパ人だってつい最近までは古いものをそのまま遺そうなんてそれほど思ってはいなかったようだ。
ただ、この教会の内部には、こんな16世紀のステンドグラスがはめ込まれている。
セーヌ川沿いにあった聖ヴァンサン教会のステンドグラスだったのだが、第二次大戦でステンドグラスだけ取り外して避難させてあったあいだに、本体は爆撃で壊されてしまった。
行き場をなくしたステンドグラスをこのようにはめ込み、再生を果たしていたのだ。