STAP細胞を書いた論文について、その信憑性が疑われ、細胞そのものの存在の有無まで問題になっている。研究所は会見を開き、「未熟な技術者」と断罪してしまった。
1か月ほど前まで「リケジョの象徴」などとしてちやほやされていたのが一転、過去のデータの転載をはじめ、博士論文では他者の論文を「引き写した」とまで言われてしまっている。
これで一斉に攻撃に転じたメディアの変わり身の早さは相変わらずとはいいつつも、研究員本人は「悪いこととは思っていなかった」という。この研究者の倫理感もどうかと思う一面はあるが、それだけで研究や細胞そのものまで否定をされてはたまらないだろう。
論文の取り下げは研究者たちも了承したそうだ。論文そのものはまたやり直したり、第三者に調査を預けて真偽を判断してもらえばよいことだが、研究者に「再教育」が必要というのはあまりにはずかしいことと思わないか。人を教育で変える(交代させる、という意味ではない)ことだけで事態が改善できるとはとても思えない。自分たちの責任を棚に上げ、研究者個人を責め、結果如何では処分もありうると、どうにも切り捨てたい気持ちが見え見えで、人を守っていこうという姿勢を感じない。渦中の女性研究員、早く誰か助けてあげなくちゃいけないと思うのだが。
そしてもう一つ、電機メーカーの持つ重要な技術情報を技術者が不正に持ち出し、転職先の外国メーカーに提供したとして逮捕される事件が起きてしまった。転職先では、一生遊んで暮らせるほどの高い報酬を得られ、秘書もついたという。
研究者や技術者のおかれる状況は、自分もかつて、設計に携わるいち技術者だったこともあり、今かれらが置かれている状況は相当に厳しいと思う。長期的な研究や開発が、予算の関係などでなかなかできず、そのうえ、一定期間に何かしらの成果を発表しなくてはならない。功をあせる気持ちがどうしても働いてしまう。
またいくら研究の成果を出しても、それを応用した製品が売れなかったり、技術競争で他社に追い付き追い越されると、会社に貢献しなかったとして、努力と苦労と費用を重ねたのにもかかわらず、どんどんリストラされてしまう。そうでなくても、生活できなくなったら、逃げ出してしまう。
そんなときに、高い技術を欲しがる他のメーカーからスカウトされたり、あるいは自分で売り込むなどにより、他へ転職していくことがあるが、このときに会社で得た情報を持ち出し、相手先の会社に提供し利益を上げさせたことが、「技術の不正流出」として今回事件になってしまった。こちらははじめから罪の意識はあったというが、こうまでしないと彼らの生活や人生が保障されないのかと思うと、技術大国と言いながらも、技術者を全然守ってくれない今の国の姿勢も、ちょっとばかり疑いたくもなる。
本当に「技術」を大事にするならば、技術者、研究者の教育だけでなく、彼らを守っていく体制をこそ作らないといけなのでは。ふとしたことで不正に走ったり、またそうせざるを得ないほど苦しい状況から彼らを救うためにも。
そうは言いながら、かくいうぼくも、会社の技術者に対して「早く研究を進めろ」「いつ終わるんだ」などとハッパをかける立場にいる(しかも管理職ではない)ため、相当うらまれてるのを肌で感じてます・・・。
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