財務省は6月14日、相続人がいないと見込まれる土地の持ち主が、国へ贈与する契約を生前に結べるようにする仕組みを整備する方針を発表した。
登記が長年放置された所有者不明の土地が増えていることに対応し、国有化を進めて問題の拡大を防ぐ狙い。
年内に詳細を詰めて2020年度にも制度の運用を始める。
有識者でつくる財政制度等審議会・国有財産分科会が答申に盛り込んだ。
相続人となる身寄りがなかったり、子供や配偶者らが相続を放棄したりした不動産は国庫に帰属する決まりは今もあるが、親族が裁判所に申し立てなければならない。
大量相続時代に手続きが滞って所有者不明の土地が増える可能性があった。
そこで、極端に荒れて管理費がかかる物件でない限り、引き取り手がない不動産を死後に国へ渡す契約をあらかじめ交わせるようにする。
高齢者の自宅敷地を主に想定している。
手放しやすい遊休地などは生前、相続段階にかかわらず、一定の価値があって売却容易なものを対象として国への寄付を受け入れる。
運用が始まれば行政目的としては不要な国有地が増えると予想され、不動産情報サイトと連携した情報発信などで積極的に買い手を探し、効率的な売却に取り組む。
増田元総務相らの有識者研究会は、全国の所有者不明地が16年時点で九州の面積を上回る約410万ヘクタールに上ると試算しており、関係省庁が対策を急いでいた。
一方、未利用国有地の貸し出しは原則として保育・介護施設に限ってきたが、各地の中心部の土地は商業施設などにも定期借地権付きで賃貸する。
東京都23区などは千平方メートル以上、政令指定都市をはじめとする地方都市は2千平方メートル以上が候補。
防災、街づくりで将来必要になる可能性に備え、国が保有しながら賃料収入を得る道を広げる。