共同通信社の全国電話世論調査で、オバマ米大統領の広島訪問を「よかった」と評価した回答が98.0%に達した。
ただ、広島、長崎の被爆者の間には前向きに捉える声もある一方で「きれい事で終わらせてはいけない」などと慎重な見方が少なくない。
米退役軍人団体からも「ほろ苦い」との感想が漏れ、複雑な心境をうかがわせた。
広島県被団協の清水さんは、オバマ氏の原爆資料館見学がわずか10分程度だったことに憤る。
「一番聞きたかったのは、被害の実態を見て何を感じたのか。 用意してきた演説では本当の思いは分からない。 きれい事で終わらせてはいけない」と話す。
父が被爆者で反核運動を続けてきた森滝さんは「訪問は百害あって一利なし。 日本中が喜ぷのを見て、海外の人は奇妙に思うのではないか」と指摘した。
一方、広島市の被爆者池田さんは「米国内で反対意見もあったのに来てくれた。勇気が要ったことだろう」と好意的に受け止めた。
「長崎県被爆者手帳友の会」の井原東会長は「訪問は歴史的だったが(2009年の)プラハ演説に比べ力強さが足りない」。
オバマ氏が今回の演説で、核兵器廃絶に向けた具体的な道筋を示さなかったことに物足りなさを覚えた。
被爆2世の平野さんは、オバマ氏が長崎入りしなかったことで「広島に世界の注目が集まり、長崎は忘れ去られていくだろう」と危機感を募らせた。
「今後みんなで、訪問の意義を冷静に振り返ることが必要だ」と訴えた。
一方、米国では、これまで原爆展開催などに猛反発してきた米退役軍人団体が「紛争のない世界は全員が共有すべき展望だ」などと指摘するにとどまり、訪問や演説への強い批判は出ていない。
米国では5月30日が今年の戦没将兵記念日(メモリアルデー)。
USAトゥデー紙によると、ある団体幹部は「記念日を前に、多くの人にとってほろ苦い(訪問だった)」と話した。
原爆資料館見学10分程度では、悲惨さを本当に理解したとは思えない。
大統領退任後も、ゆっくり広島、長崎を訪問し、核兵器廃止に努力するべきである。