新型コロナウイルスの流行により巣ごもりを続ける消費者が娯楽を求める中で、SonyとMicrosoftが相次いで発売する第9世代ゲーム機、「プレイステーション5(PS5)」と「Xbox Series X」は、販売台数で大きな成功を収めるとみられる。
ただ、ゲームの遊び方は変化しつつあり、両機は最後のゲーム機となる可能性もある。
背景にあるのは、大型・高額なゲーム機ではなく、インターネットでのストリーミング配信を通じてゲームを遊ぶ「クラウドゲーム」サービスへの移行だ。
独立系ゲーム開発企業ゲーム・ベーカーズの共同創業者、オドレイ・ルプランス氏は「この世代が最後の実機となる可能性がある」と述べている。
ルプランス氏は、ゲームのインターフェースやゲーム自体に大きな革新が起きていないと指摘。
一方で業界に変化を起こしているのは定額サービスモデルへの移行であり、ゲーム機メーカー各社は「ビデオゲーム界のネットフリックス」になりつつあるとした。
ルプランス氏いわく、マイクロソフトの「Xbox Game Pass」やSonyの「PlayStation Plus」といった定額サービスは今後、「映画・音楽業界が経験したような大革命をゲーム業界にもたらす」という。
Game Passはすでにネットフリックス型サービスを展開しており、加入者は多数のゲームを利用可能だ。
一方のPlayStation Plusは、オンラインマルチプレーなど、ゲーマーにとって魅力のある各種サービスを提供している。
プラナード氏はゲーム機メーカーの課題として、自社の定額サービス加入者をいかに囲い込み、IT大手GoogleやAmazon.comなどに参入の機会を与えないようにするかが重要だと指摘した。
グーグルとアマゾンはいずれも、クラウドゲーム事業に乗り出している。
クラウドゲームは、スマートフォンやタブレットなどさまざまなデバイスでゲームが遊べるサービスで、大きな負荷がかかるプログラム処理はクラウド上のサーバーで行われるため、高性能で高価なゲーム機は不要となる。
だがマイクロソフトとソニーの両社は次世代ゲーム機でドライブのない廉価版モデルも発表し、クラウドゲーミングの方向にも前進した。
これらのモデルではゲームをダウンロードまたはストリーミングして遊ぶ形となり、ストリーム配信サービスとしてはそれぞれ「xCloud」と「PlayStation Now」が用意されている。
ただ、ゲーム業界専門のアナリスト、ローラン・ミショー氏は「今は過渡期にある」とし、ゲーム機とクラウドゲームは今後しばらく共存すると説明。
「これが最終世代のゲーム機になることはない」とみている。
ゲーマーの多くは大画面かつ高解像度でのプレーを好むことから、ゲーム開発企業は今後、より優れたゲーム体験を実現できる8Kテレビに合わせたソフトを開発する見通しだ。
ミショー氏は、インターネット通信が8K映像を送信できるほど高速化するのには少なくとも数年かかるとの見解を示した。