厚生労働省は9月25日、社会保障審議会の介護保険部会を開き、一律1割となっているサービス利用時の自己負担割合を、一定の年収がある人は2割に引き上げる案を提示した。
65歳以上の高齢者の5人に1人、540万~590万人程度が該当する。
ただ介護サービスを利用しない人も多いため、影響は40万~50万人程度とみられる。
特別養護老人ホームなど介護施設に入所する低所得者に、食費や居住費を補助する「補足給付」の縮小も提案。
介護総費用の急増に歯止めをかける狙いがある。
一方で、住民税非課税世帯の低所得高齢者の保険料減額幅を広げる方針を示した。
厚労省は、介護保険法の改正案を2014年通常国会に提出し、2015年度からの実施を目指す。
自己負担が引き上げられれば2000年4月の介護保険制度創設以来、初めて。
2割負担とする年収基準は、収入が年金だけの単身者の場合(1)280万円(公的年金等控除を差し引いた所得で160万円)以上、(2)290万円(同170万円)以上の2案。
基礎年金のみを受給する妻がいる夫婦では、それぞれ「359万円以上」「369万円以上」とした。
厚労省は単身高齢者の平均消費支出(年間170万円)などと比較し、負担は可能だと判断した。
自己負担の平均月額は、要介護1なら7700円から1万5400円に、要介護2なら1万円から2万円に増える。
ただ、自己負担は個人単位で決まるため、夫が2割負担でも、収入が基準以下の妻は1割負担のままになる。
補足給付は、預貯金や保有する有価証券が単身で1千万円以上、夫婦で2千万円以上あれば給付対象から外す。
固定資産評価額が2千万円以上の不動産を所有している場合も対象外とすし、希望があれば不動産を担保の補足給付相当額を貸し付け、死後に回収する仕組みもつくる。
一方、低所得者向けの介護保険の軽減策を、社会保障審議会介護保険部会に提示した。
世帯全員が住民税非課税である人を対象に、現行は最大で50%の軽減割合を、70%に引き上げる。
保険料は、所得に応じて段階別に設定されている。
現在、全国平均は月約5000円(基準額)で、軽減割合が50%になっている人の保険料は月約2500円。
見直し案では、(1)年金収入で年80万円以下の人などは現行50%の軽減割合を70%に、(2)同80万円を超え120万円以下の人は現行25%を50%に、(3)同120万円を超え155万円以下の人は現行25%を30%に、それぞれ引き上げる。
低所得者への配慮が必要と判断した。
減額分は国や自治体の公費で穴埋めする方針で、2015年時点で最大1300億円程度を想定。
消費税増税が実現すれば増収分を回す考えだ。