北欧のフィンランドとスウェーデンが4月13日、北大西洋条約機構(NATO)加盟に意欲を示した。
ロシアのウクライナ侵攻を受け、伝統の軍事的中立政策の転換に踏み切る可能性が高まっている。
侵攻はNATO拡大の阻止が狙いの一つだったが、欧州では逆に拡大の勢いが加速。
「自業自得」との見方が出るが、ロシアは反発を強めている。
「ウクライナ侵攻で全てが変わった」「ロシアのあらゆる行動に備えなければならない」。
フィンランドのマリン首相は4月13日、スウェーデンのアンデション首相と共に記者会見し、警戒感をあらわにした。
数週間内に加盟申請に関する方針を決める考えだ。
アンデション氏も「歴史的に重要な時期だ」と強調。
5月末までに安全保障政策を見直し、フィンランドと足並みをそろえ申請するとの観測もある。
ロシアと約1300キロの国境を接するフィンランドは19世紀は帝政ロシアの領土の一部だったが、1917年のロシア革命を機に独立した。
第2次大戦でソ連に敗れ国土の12%を奪われた。
その教訓から戦後は非同盟政策を貫いてきた。
スウェーデンは19世紀のナポレオン戦争以来、中立を堅持し約200年にわたり戦争をしてこなかった。
ウクライナ侵攻で「ロシアの化けの皮が剥がれた」として、両国の世論は一変し、過半数が加盟支持となった。
NATO条約5条は、加盟国への攻撃を全加盟国への攻撃と見なし、武力行使を含む必要な措置を取ると規定。
北欧2国がNATO入りを検討するのは、この集団防衛義務があるからだ。
NATOは両国を「最も近いパートナー国」と見ており、申請があれば早期に承認するとみられる。
両国では加盟申請から正式批准までの間に、ロシアの攻撃を受けるとの懸念もある。
集団防衛義務は正式加盟国だけに適用され、批准前にロシアが攻撃した場合はNATOの介入が困難だからだ。
NATOは批准までの時間をできるだけ短縮する手法を検討しているもようだ。
北欧2国の動きはロシア安保戦略に重大な影響を与える。
ロシア上院のクリモフ国際問題副委員長はNATOを「反ロシアの犯罪組織に指定すべきだ」と主張。
ペスコフ大統領報道官は「NATOは対立を先鋭化させる道具だ。 これ以上の拡大は欧州の平和と安全に貢献しない」と反発した。
北欧2国の中立政策で、ロシアは東欧方面に力を注ぐことができた。
その間には旧ソ連圏のベラルーシ、ウクライナがあり、祠衝地尹として機能してきた。
フィンランドは隣国で、ロシア第2の都市サンクトペテルブルクは目と鼻の先だ。背後に位置するスウェーデンは帝政ロシア時代に戦った「北方の強国」。両国がNATOに加盟すればロシアは北方の守りに大きな戦力を割かれる。
英紙は4月12日、ロシア北西部からミサイルシステム2基がフィンランド国境に向かう映像が出回ったと報じた。
同国をけん制した可能性がある。
ロシアはNATO拡大阻止を目的の一つに戦争を仕掛けた。
しかし、これが北欧の不安をかき立て、加盟申請への機運を後押しした。
米国務省報進官は皮肉った。
「NATO加盟への関心が高まった原因があるとすれば、それはプーチン(大統領)だ」
ロシアは4月14日、もしフィンランドやスウェーデンがNATOに加盟すれば、ロシアはバルト3国やスカンディナビア半島方面の国境付近に核兵器を配備することになると早速脅かしにかかった。