中国の人工島沖を米軍艦が航行し、米国が南シナ海問題でついに行動を起こした。
ASEANの中でも、南沙(英語名スプラトリー)諸島の領有権を激しく中国と争うフィリピンは歓迎したが、多くの国が事実上の沈黙を保つ。
年内のASEAN共同体発足を控え、多額の経済協力や投資を背景に影響力を年々強める中国を刺激したくないとの本音が透けて見える。
「何も知らない。 米軍はどこに展開するかを教えてなどくれない」。
米軍艦航行の報道が流れた後も、フイリピン軍で南シナ海を担当するロペス西部方面司令官は報道陣に、米側からの事前通報を否定した。
前面に立っくれた米軍の陰に隠れ、中国との決定的対立を避けようとする意図が垣間見える。
フィリピンは昨年、米国と防衛協力強化協定を締結。
フィリピン軍施設を米に開放することで事実上の米軍再駐留を可能とする内容となっており、今年中にも最高裁が合憲か違憲かの判断を下す。
フィリピンとしては最高裁のお墨付きを得た上で米軍に後方支援機能を提供することで、中国の南シナ海での覇権拡大抑止を狙っている。
中国は、毎年開かれている一連のASEANの会議は経済分野の協力を話し合うのが目的として、安全保障問題の議題化を嫌う。
南シナ海問題で中国を非難するような合意が形成されそうになると、ASEAN加盟10力国中、最も中国寄りとされるカンボジアなどが阻止。
中国はインフラ整備などでカンボジアに多額の支援を続けており、フン・セン首相とも親密な関係を築いている。
同国のパイ・シパン閣僚評議会報進官は10月28日、共同通信に対し「南シナ海における米海軍の存在は解決にならない」と述べ、米国に反対する立場を鮮明にした。
タイも、昨年5月のクーデター以降統治する軍事政権が、米国のように民主化を迫らない中国への親近感を強めている。
プラユット首相は「平和的解決が重要」と述べ、米軍艦航行は問題解決に結び付かないとの認識を示した。
今年のASEAN議長国マレーシアも南シナ海で中国と領有権を争うが、中国を過度に刺激するのは得策得ではないとの立場だ。
この立場はASEAN諸国の多くに共通しており、米軍艦航行についても沈黙を保つか、当たり障りのないコメントを発表する国が多い。
在タイのASEAN外交筋は「向こう数十年間、アジアの事実上の盟主が中国であることは明らかだ」。
米国や日本の存在感低下が背景にあると指摘した。
米国、日本の外交の低落が、このような状況にしてしまったのだ。
中国は、南米、アフリカのほか、最近はEUに覇権拡大を狙う。