有機フッ素化合物(PFAS)に対する全国水道調査の結果を政府が公表した。
2024年度に国の暫定目標値を超えた事例はなかったとし、水道の安全性に太鼓判を押した形だ。
だが複数の水道事業で暫定値に近い数値が検出。
過去の調査で目標値の28倍もの数値が検出された岡山県吉備中央町は、公費で住民の血液検査に乗り出すなど地域の不安は根強い。
「最新の結果は全て暫定目標値を下回った」「全国の水道の給水人ロに対し、目標値以下の水質が確認されたのは98・2%」。
環境省の担当者は水質の安全性を強調した。
浅尾環境相も11月29日の閣議後記者会見で「対策が着実に浸透している」とアピールした。
環境省によると、2020~2023年度に全国の14水道事業で暫定目標値の超過が確認されたが、2024年度はゼロに。
汚染が確認された水道水源を別の水源に切り替えるなどした対策が奏功した形だ。
環境省はPFASについて、目標値を超えても水質改善などの対応が努力義務にとどまる現行の暫定目標値から、対応が法的義務となる水道法上の「水質基準」の対象に引き上げる方向で検討している。
水質基準に位置付けられていないことを理由に検査を実施していない水道事業が一定数いるためだ。
ただ数値が超過した場合、確立された汚染除去技術などはないのが現状。
基準に格上げして対応を求めれば困惑する水道事業者も出てくることが想定される。
ある政府関係者は、2024年度に目標値を超えた事例がなかったことは基準格上げを後押しする結果だと強調する。
飲み水の安全性を強調し、汚染が確認された地域住民の理解を得たい環境省だが、今回の調査結果が不安払拭につながるかどうかは不透明だ。吉備中央町は11月25日、公費による全国初の住民の血液検査に乗り出した。
高い濃度で水道水源から検出されて住民に懸念が広がるなか、少しでも不安払拭につなげようという考えだ。
ただ環境省は血中濃度の測定について消極姿勢。血中濃度と健康影響の因果関係がはっきりしないとし、検査の実施が「かえって不安が増す可能性がある」との否定的な表現を、自治体向けの対応手引に盛り込む方針で検討していた。
だが省内からも疑問の声が上がり、最終的には「科学的に評価可能な方法で実施する必要がある」との表現に修正した。
手引を見たある自治体の担当者は「具体的な手法にっいては言及がなく、丸投げだ」と困惑した様子で話した。