金融庁が銀行窓口での外貨建て保険の販売に対する監視を強化している。
銀行は外貨建て保険を売ることで円建て保険よりも多くの販売手数料を稼げるが、買った人にとっては円高になると元本割れする可能性がある高リスク商品だ。
一部の銀行が手数料収入のために無理な販売をするケースもあり、金融庁は銀行に適切に販売するよう求めている。
現在は円相場が歴史的な円安局面にあるため、外貨建て保険が元本割れするケースは少ないとみられる。
ただ円高基調に転じれば、顧客から「元本割れのリスクに関する十分な説明がなかった」などと苦情が相次ぐ恐れがある。
投資を避ける人が増えれば、「貯蓄から投資」を訴える岸田政権にも痛手となりそうだ。
金融庁によると、保険料を一括で支払う一時払い型の外貨建て保険の販売額は、大手銀行と地方銀行の合計で2022年度上半期に計約1兆2千億円となり、2021年度下半期から約7割増えた。
外貨建て保険は保険料を米ドルなどで運用し、保険金を外貨で支払う。
米欧の金利上昇で運用が有利になり、販売が増えた。
ただ一部の銀行では売り方に問題があった。
行員が外貨建て保険と他の金融商品との違いを説明しなかったり、顧客の意に沿わない販売をしたりしていた。
この背景には、行員に外貨建て保険の販売を促す業績評価体系がある。
外貨建て保険の販売実績を円建て保険の4倍高く評価していた銀行もあった。
こうした銀行は保険販売のほとんどが外貨建て保険だったが、経営陣は実態を十分に把握していなかったという。
金融庁は、銀行が顧客の資産形成に役立てない場合は「(個人向け金融商品の販売からの)撤退も選択肢の一つだ」と、厳しい目を向けている。