健康な女性が将来の妊娠・出産に備えて行う卵子凍結への助成事業を、東京都が始めた。
都道府県では初とみられ、説明会には想定を上回る5千人以上が応募。
女性の社会進出や晩婚化が進む中、関心の高さがうかがえる。
都はリスクも含めた説明や検証にも取り組む。
専門家は、出生につなげるためには安心して出産や育児ができる環境整備も必要だとする。
「プラス面もマイナス面も知った上での対応ができのるよう努めていく」。
小池知事は、11月24日の定例記者会見で、都が9月から始めたオンライン説明会への申し込みが5千人を超えたことを受け、そう述べた。
都によると、説明会には11月21日時点で約2800人が出席し、うち約900人が卵子凍結を決めた。
都は説明会の枠を拡大、年明け以降も開催する予定だ。
卵子凍結は、採取した卵子を未受精の状態で、妊娠・出産できる状況が整うまで冷凍保存するもの。
元々は抗がん剤治療などで卵巣機能の低下が予測されるがん患者らに実施されており、国や都は2021年度から助成事業を実施している。
都はさらに本年度から、健康な女性が加齢による卵子の質や量の低下に備えて行うケースヘの助成を開始。
都内在住の18~39歳に最大20万円を補助する。
説明会参加やアンケートヘの回答が要件で、都指定の医療機関で採卵する。
その後も追跡調査に応じることを条件に、年2万円を最長5年間支払う。
不妊治療などの場合を除き、卵子凍結は保険適用外で、費用は全額自己負担となる。
都の調査では、必要な費用は約30万~50万円というケースが多い。
健康な女性の卵子凍結を福利厚生で支援する企業は増えているが、自治体による助成は、千葉県浦安市が2015~2017年度に大学病院との共同研究で実施して以来とみられる。
都の担当者は「さまざまな事情を抱える人にとって選択肢の一つになればいい」と話す。
ただ採卵には肉体的負担が伴う上、妊娠・出産を保証するものではない。
高齢出産にはリスクもある。
日本産科婦人科学会は、健康な女性の卵子凍結について「推奨も否定もしない」との立場だ。
都の説明会では、専門医らがメリットとデメリットを解説し、実施するかどうか判断してもらう。
また凍結した卵子の使用状況や、どれだけ出生につながったかを把握するため、助成対象者に対し継続的な調査も実施していく。