法制審議会(法相の諮問機関)は2月下旬から、民法の相続分野の見直しに着手する。
家庭内の介護の貢献を認め、遺産相続を増やすことも取り上げる。
法務省は1月29日、見直しの論点をまとめた有識者の「相続法制検討ワーキングチーム」の報告書を公表した。
法律婚尊重の観点から、配偶者の優遇が課題に挙げられた。
配偶者の相続を拡大する法改正は、1980年に配偶者分が3分の1から2分の1に引き上げられて以来、行われていない。
法制審は少なくとも1年以上かけて、法改正に向けた議論を進める。
報告書は、(1)配偶者の貢献に応じた遺産分割、(2)加算される「寄与分」への介護負担の反映、(3)最低限保障される相続割合に当たる遺留分制度の見直し、(4)配偶者の居住権保護と論点を分類した。
現行相続法は、死去した人に「特別の寄与」があった場合に相続分が加算されるが、介護の負担は通常の貢献とみなされることが多く、相続に反映されるとは限らない。
有識者チームは、介護に大きく貢献した相続人に「寄与分」を加算する方向で論議。
すべての相続人について貢献の程度を考慮しなければならず紛争が複雑で困難になるとの課題も指摘された。
最高裁が2013年、結婚していない男女間の子(婚外子)の遺産相続分を定めた民法規定を違憲とした決定に対し、自民党内に「家族制度が壊れる」との懸念が出たことを受け、チームが設置された。
大学教授や弁護士、法務省幹部らで構成され、配偶者らに配慮した相続法制の在り方を検討してきた。
(相続法改正のポイント)
●遺産のうち夫婦が協力してつくった分の取り分を増やし、婚姻前の財産の取り分を減らす
●介護に大きく貢献した相続人の寄与分を認める
●夫婦で協力してつくった財産か婚姻前に持っていた財産かで、遺留分の割合を変える
●配偶者は、遺産分割の終了まで、自宅に無償で住み続けられるようにする
●相続分の全部か一部に代え、生涯または一定期間、自宅に住み続ける権利を取得できる