0~1歳児の親で、金銭的な理由から「子どもをもっとほしいが難しい」と考える人は、年収400万円未満だと約91%、同800万円以上でも約68%いることが、ベネッセグループと東京大学の調査でわかった。
秋田・東大教授は「育児にお金がかかるだけでなく、将来が具体的に見えない不安も現れているのではないか」と話す。
ベネッセ教育総合研究所と東大・発達保育実践政策学センターが6月20日、「乳幼児の生活と育ちに関する調査2017」として報告した。
全国の0~1歳児を持つ家庭約3千世帯が回答し、母親の約74%は「子どもをもっとほしい」と考えていた。
現在子ども1人の母は約90%が、2人の母は約64%が、それぞれ次の子を望んでいた。
一方で、「子どもをもっとほしいが難しい」と考える母親に理由(複数回答)を尋ねると、「子育てや教育にお金がかかる」が約81%で最も多かった。
次いで、「子育ての身体的な負担が大きい」約50%、「子育てと仕事の両立が難しい」約37%と続いた。
「お金がかかる」を選んだ人を世帯年収別にみると、「400万円未満」約91%、「400~600万円未満」約85%、「600~800万円未満」約78%と、年収が増えるにつれて比率は下がった。
一方で、「800万円以上」でも約68%が金銭的な理由を挙げた。
秋田教授は結果について、こう話す。
「公教育だけでなく習い事費用なども含め、お金がかかると考えているのだろう。 少ない子に大きく投資した方が子どもの将来に有効だと、親が考えている表れかもしれない。 経済的な負担を軽減する政策だけでなく、親が将来の子育て費用の展望を具体的に持てるような情報提供のあり方も大切になる。 また、お金をかければ子どもがよく育つわけではないことも、今後明確に科学的に示す必要があるのではないか」
今回の調査では、子育てや家事を助け合う「チーム育児」をする夫婦は、そうでない夫婦と比べ、子どもをあと一人以上もつ予定と考える人が多かった。
「あと1人以上持つ予定」と答えた比率は、チーム育児中の母が約49%、そうでない母は約41%だった。
また、乳幼児を持つ母と父の意識のずれも浮き彫りに。「あなたは配偶者の仕事、家事をよくねぎらっている」との設問に、「とてもあてはまる」「まああてはまる」と答えたのは、父・母ともに計約71%。一方で、「配偶者はあなたの仕事、家事をよくねぎらってくれる」との設問は、父計約80%で、母は計約67%にとどまった。
「配偶者といると本当に愛していると実感する」は、父計94%に対し、母親計約77%と、約17ポイントも差が開いた。
秋田教授は「妻と夫の意識の差が正直に現れた。 一方で、妻は夫を子育てで頼りになる存在とも考えている。父親に対し、こうした実情を情報発信する必要があるのでは」と話す。