固定電話しかなかった時代、一家に1冊はあった黄色い表紙の電話帳「タウンページ」の廃止が決まった。
インターネットに接続して何でも検索できるスマートフォンの全盛にあらがえなかった。
定型文の電報サービスはデジタル化の波にのみ込まれてなくなり、AMラジオも存亡の瀬戸際に立っている。
欲しい商品やサービスを扱う近所のお店が分からないとき、職業名などから電話番号を探せるタウンページのお世話になった人は多いだろう。
しかし、スマホの便利さはタウンページの比ではない。
米アップルのIPhone(アイフォーン)が搭載する「Sirl」のように、ほとんどの機種に音声アシスタントが備わっている。
「呼びかけて尋ねれば、近所のお店が全部出てくる時代。 タウンページに限界がくるのは仕方がない。」
メディア史を専門とする茨城大の高野教授はこう指摘する。
NTT東日本と西日本も手をこまねいていたわけではない。
地域情報を充実させ、生活シーン別の目次を設けるなど、夕ウンページを単なる電話帳から「地域と暮らしのメディア」に変貌させようとしたが、発行部数の減少は止まらなかった。
スマホ普及で終了したサービスは他にもある。
NTT東西は定型文の電報を2023年1月に廃止した。
緊急時に「至急連絡されたし」「急用あり」「無事」といった定型文を、通常の電報よりも割安な価格で送れることから重宝され、2000年には2万6千通の利用があったが、2020年には110通まで落ち込んでいた。
ラジオのAM放送もなくなる可能性がある。
全国に47ある民放AMラジオ事業者のうち13社が2024年2月から順次、AM放送を休止して影響を調べる実証実験を始めている。
より低コストのFM放送への転換を視野に入れるが、そのFMラジオの番組も、ネットでラジオが聴ける「radiko」で楽しむ人が増えている。
「ポケベル」の愛称で親しまれ、1990年代にブームとなった無線呼び出しサービスは2019年に姿を消した。
「古いメディアが淘汰されるのは昔から繰り返されてきたこと」と高野氏。
一方でアナログレコードなど価値が再評価され残るものもある。
高野氏は「事者は時代に合わせてサービスを変えていかないといけない」と話す。
公衆電話は災害時の通信手段として重要性が改めて注目されており、総務省がNTT東西に設置義務を課しているため今後も維持される。