日本テレビ系の主要系列局4局の経営統合発表は、当該放送局の社員からも「寝耳に水」と声が上がるほど衝撃をもって受け止められた。
ただ、インターネットの普及でテレビを取り巻く環境が厳しさを増す中、変革は待ったなしの状況。
業界再編の号砲となるのか。
2024年11月の発表によると、札幌テレビ放送、中京テレビ放送、読売テレビ放送、福岡放送は2025年4月、持ち株会社「読売中京FSホールディングス(FYCS)」を設立し、完全子会社としてその傘下に入る。
番組の共同制作や設備の相互利用などでコスト削減を図る。
FYCSの株式の20%以上を日本テレビホールディングスが保有して筆頭株主となり、同社の石沢社長がFYCS社長に就く。
読売新聞グループは約15%の株式を持ち、第2位株主となる見通し。
1年以上、水面下で議論が行われ、当該4局の社員も「大半は発表まで知らず、寝耳に水だった」という統合劇。
他のキー局社員は「そこまで進んでいたのかと、局内もざわついた」と話す。
ただ、4局のある関係者は「系列のネットワークを維持するため、とにかく箱を作るのが目的だった。 何も決まっていない」と明かす。
日テレ関係者も「実質的に何かするというより、日テレと読売新聞の支配力を強くする資本政策」と解説する。
大都市圏を放送エリアとする4局は、地方局の中で経営体力がある「勝ち組」同士だ。
日テレ幹部は「力のあるところで何とかしようということ」と語るが、4局以外のある系列局幹部は危機感をあらわに。
「船に乗せてもらえず、切り捨てられた感じがある」
総務省関係者は「業界の自主的な取り組みを見守っている」とするが、政府は制度面から経営統合を後押ししてきた。放送法は多様性確保を目的に同一企業の複数局支配を防ぐ「マスメディア集中排除原則」を定める一方、2008年の改正法施行で認定放送持ち株会社制度ができ、複数の局を傘下に置けるようになった。
2022年にはテレビ朝日ホールディングスが、関東広域圏などを除き県ごとの放送エリアを超え、東北や九州といったブロックや隣接県で同一の放送を可能にする仕組みを要望。
こうしたテレビ局側の意向を反映した形で規制緩和が行われてきた。
系列での「縦」の統合を指向するキー局に対し、放送エリア内での系列を超えた。
「横」の再編を模索する地方局もある。
地方ジャーナリズムを研究する京都産業大の脇浜教授は、系列という中央集権的なシステム自体、見直しの時期に来ていると指摘。
「上からの再編を待つのではなく、地域にどんなメディアが必要なのか、住民の立場に立って議論していく必要がある」と強調した。