新型コロナウイルスワクチンを巡り、大規模な臨床試験(治験)に代わり有効性や安全性を評価する手法の検討を、日本など各国でつくる「薬事規制当局国際連携組織(ICMRA)」が4月29日までに始めた。
欧米製などの接種が進み、後発メーカーが治験参加者を確保するのが難しくなっているためだ。
代替手法ができれば、開発競争で出遅れた日本企業にも実用化への道が開ける。
ワクチンを実用化する前には通常、数万人の参加者を接種の有無でグループを分けて比較し、有効性や安全性を検証する大規模治験を行う。
ただ、各国で接種が始まったことで、ワクチンの性能評価に必要なウイルスに対する免疫を持たない被験者を集めにくくなっており、代替手法の検討を求める声が各国で強まっている。
日本でも塩野義製薬など複数の企業が開発を進めているが、大規模治験は実施しておらず、実用化の大きな壁となっている。
日本政府は安全性の確認をおろそかにせず、有効性も確かめられる新たな手法の確立を急ぐ。
ICMRAは、米ファイザー製など既に実用化されたワクチンのデータを参考に代替手法を検討。
例えば、接種後にできる抗体の量と発症を防ぐ効果の関連が分かれば、後発メーカーは少人数の治験で抗体量を確認するだけで、有効性を判断できる可能性がある。
開発中のワクチンを接種した人と、実用化された欧米企業製の接種者を比べ、効果を見極める案もある。
接種しないクループを集めなくて済むのが利点だ。
他にアジアの複数の国が連携して参加者を集める治験も模索している。
迅速に評価する方法ができれば、変異株向けに改良したワクチンの開発にも応用できる。
ICMRAは月に複数回のペースで議論し、検討を急ぐ。
厚生労働省の担当者は「まだ具体的な方法を示せる段階にない。 有効性だけでなく、安全性のデータもきちんと集められることが重要だ」と話している。