緑内障は、さまざまな原因で視神経が障害を受け視野が狭くなる病気で、失明に至ることもある。
基本的な事を知らない人は、意外に多いようだ。
名古屋市立大学病院長で同大大学院医学研究科視覚科学教授の小椋氏は「恐ろしいのは、自覚症状が出た時には視神経の半分以上が死んでいることだ」と警鐘を鳴らす。
20人に1人の病気
緑内障は、わが国の視覚障害の原因の第1位を占める。
日本緑内障学会と岐阜県多治見市が2000年から2001年にかけて同市で行った疫学調査によると、40歳以上の緑内障有病率は男女ともに5.0%だった。
20人に1人という割合はかなり高いと言える。
目の病気では白内障と緑内障がよく知られているが、二つの病気は決定的に異なる。
白内障は手術をすれば視力が元に戻るが、緑内障は手術をしても欠損した視野は戻らない。
しかも、緑内障は非常に慢性的に進む病気であるため、自覚症状がなかなか出ないことが問題だと指摘する。
ちょっと目の調子がおかしい、と思って眼科を受診する。
しかし、その時には視神経の半分以上が駄目になっている。
2~3割の視神経が死んでも、代償機能があるので気付かない。
さらにやっかいなのは、眼圧が正常範囲にありながら緑内障になる人がいることだ。
多治見市における疫学調査の結果、緑内障の約70%がこの正常眼圧緑内障であることが分かったという。
小椋氏は「それまでは、私たち専門医も『緑内障は眼圧が高い』と考えていたので、この調査のインパクトは大きかった」と振り返る。
完治が期待できない緑内障の対策は、一にも二にも早期発見と早期治療によって病気の進行を止めるしかない。
「眼圧と眼底を対象にした二つの検査で十分だ。 これを1年に1回、定期的に受けてほしい。 ただ、検査結果が全く正常であれば2年に1回でもよいだろう」と、小椋氏はアドバイスする。
治療はまず薬物療法で、点眼薬から始める。
内服薬を併用するケースもあるが、副作用を招く恐れがある。
小椋氏は「1種類の点眼薬から開始し、効き目がなければ、2種類、3種類と増やしていく。 ここ数年で良い薬が登場し、選択肢も増えた」とした上で、「患者の立場を考えれば、3種類が限度だろう。 1日数回の点眼を、一生続けなければならないのだから。 誤った考えで治ると思っている場合は、特につらいだろう」と語る。